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vol.159 「男性型脱毛症(AGA)」の最新治療薬が登場

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Vol.159 「男性型脱毛症(AGA)」の最新治療薬が登場

薄毛や脱毛の悩みは男女ともにあり、年齢が高くなるにつれて増えてきます。そうした気になる脱毛症の中で、日本人男性の30%に発症するといわれているのが男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)です。近年は、経口薬のフィナステリド(商品名プロペシア)によってAGAの進行が抑えられ、髪の毛が回復することが知られるようになってきましたが、2016年6月、新たな経口薬デュタステリド(商品名ザガーロ)が登場しています。従来の経口薬とは、どのような違いがあるのでしょうか。

AGAの原因と治療薬の効果とは

AGAは、成長期から休止期へと繰り返すヘアサイクル(毛周期)の過程で、成長期が短くなり、休止期の毛包が多くなることによって髪の毛が十分に育たなくなる病気です。額の生え際や頭頂部のどちらか、または両方が薄くなって脱毛が進行する特徴があります。このAGAの原因には、男性ホルモン(テストステロン)が大きく関わっています。髪の毛の製造工場といえる毛包の根元には毛乳頭細胞があり、男性ホルモンを受け取る受容体があります。ここにテストステロンが運ばれてくると、酵素の働きによってジヒドロテストステロン(DHT)という活性の高い男性ホルモンに変換されて、受容体に結合します。すると、髭では毛を成長させる方に働きますが、額の生え際や頭頂部の毛包に対しては成長を抑制します。そのため、髪の毛が育たなくなって軟毛化が起こり、進行していくのです。

脱毛症に詳しい北里大学医学部再生医療形成外科学特任教授で、東京メモリアルクリニック・平山の佐藤明男院長は、「DHTは、成人男性にとって悪玉といえる男性ホルモンです。プロペシアやザガーロは、このDHTに変換させる酵素を阻害する薬で、薬理作用はほぼ同じといえます。ただし、ザガーロの方が薬効や副作用、費用が少し高いです。重症のAGAに効く可能性は高いと思われますが、登場したばかりです。使い分けについてはまだ難しく、臨床医がこれから考えていくことになると思います」と話します。

AGAで深刻なのは20代の男性

AGAは思春期以降に発症し、徐々に進行していく脱毛症です。進行度は1~7型に分類され、初期は額の生え際の髪の毛が細くなり、このような状態から少しずつ進行していきます。佐藤院長が約5000人のAGA患者を対象にした調査によると、進行度は25歳頃から5年ごとに上がり、約30年かけて全体の脱毛に至るということです。「つまり、55~60歳ですべて失われるというのが平均的です。ただし、私たちの研究では、40歳未満で進行度4型以下の早い段階で治療すると髪の毛が回復することがわかっています。治療を希望する人の理由はさまざまですが、深刻なのは20代の男性です。パートナーが見つからないという悩みを聞きますが、治療で髪の毛が回復して結婚した方が何十人もいます。また、治療で進行を抑えると、10年後、AGAではない男性より髪の毛が維持されていることもわかっています。5~10年後の自分の姿を目指して治療してほしいと思います」(佐藤院長)。経口薬での治療は、進行してしまってからでは思ったような効果が得られない場合もあるため、治療のタイミングを逃さないことが重要です。

実用化を目指した再生医療が進行中

また、AGAがかなり進行した場合、治療法は後頭部から頭皮を採取して脱毛の部位に健康な毛包を移植する方法があります。しかし、移植しても毛包の数は増えないため、髪の毛の本数を増やすことも期待できません。さらに、髪の毛がない状態になってしまうと治療法はないのが現状ですが、明るいニュースも発信されています。マウスを用いた動物実験では発毛する毛包の再生が成功し、現在、毛髪の再生医療の研究が着々と進められています。佐藤院長は理化学研究所と共同でこの研究に取り組んでいます。「この技術は、髪の毛を作っている細胞を試験管で増やして、皮下に移植して毛包を再生させて発毛させるというものです。すでにiPS細胞で作ることが可能になっていて、自分の毛包がなくても作れる段階にきています。2000年から研究を始めて、いよいよ最後の5年になるのでは、といわれています。量産化できる技術を確立して、必要とされる人の手元に届けられるようにしたいというのが私たちの目標です」。

脱毛症の中で患者が最も多いのが男性型脱毛症です。しかし、それ以外の脱毛症や、やけど、病気などによって毛包が失われ、治療法がないという人も少なくありません。毛髪の再生医療の実用化が期待されます。

監修 北里大学医学部 再生医療形成外科学 特任教授
東京メモリアルクリニック・平山 院長 佐藤明男先生

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