vol.160 仕事の効率に大きく影響する「ドライアイ」

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Vol.160 仕事の効率に大きく影響する「ドライアイ」

パソコンの画面が見えにくい。目が重く感じる。目がゴロゴロする…。仕事中にこのような目の不調を感じたことは、ありませんか。たいしたことはないと思われがちなドライアイですが、オフィスワークに大きく影響することがわかってきています。ドライアイを仕事の生産効率という視点から見ると、片頭痛に匹敵するほどの損失と指摘するのは、慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師の内野美樹さんです。ハーバード公衆衛生大学院を卒業し、眼科医として予防医学の研究にも取り組んでおり、英文誌に発表された『VDT作業者のドライアイは、労働生産性を低下させる』(Am J Ophthalmol.157(2):294-300,2014)という研究では、ドライアイによる影響を報告しています。「私たちが調べたところ、ドライアイの人では、出勤しているにもかかわらず、年間に3日間欠勤しているのと同じくらい、仕事の生産効率が下がることがわかりました。ドライアイによってミスが多くなり、集中力もなくなるためです。片頭痛と比べるとドライアイは軽く考えられていますが、体への影響は同じように大きく、仕事の効率にも関わってくるのです」。

ドライアイとは

ドライアイは、涙の量の不足や質(成分)のバランスが崩れることによって、目の表面に涙が行き渡らなくなり、角膜(黒目)や結膜(白目)に傷ができる病気です。涙は外側から「油層」「水とムチン層」という二層構造になっていて、正常な涙は層のバランスがとれて安定しています。ドライアイになると涙の水分量が少なくなったり、質に問題が生じたりします。それによって、涙が蒸発しやすくなってさまざまな症状となって現れます。内野講師らの研究では、パソコンの画面を見て仕事をするVDT作業の時間が長い人ほど、ムチンの量が減ることも明らかにしています。ムチンは水の層と目の表面の間を調整して、水分が留まるように働いている成分です。「目の表面が乾くと、まばたきの回数を増やして改善しようとしますが、ドライアイになるとそれでも抑えることができません。ものが見えにくくなり、実用視力も下がってきます」(内野講師)。

点眼薬は種類が多く、治療開始後は必ず診察を受けよう

ドライアイの診断は、「目の自覚症状」「涙液の異常」「結膜上皮の症状」のうち、3つが当てはまると「確定」となり、2つでは「疑い」があり、治療の対象になります。 治療は、一般的には点眼薬が用いられます。これまでは、涙の水分を補給し、角膜を修復する点眼薬が使用されていましたが、最近では、涙の層別に働きかける点眼薬が開発され、涙のタイプや原因に応じた治療が可能になっています。
重症では、「涙点プラグ」という治療法が行われます。鼻側に近いまぶたの上下には、涙点という小さな穴があります。ここに0.4mm~1.3mmの太さのシリコン製のプラグを差し込み、涙の出口を塞ぐのです。「涙点は、涙の下水管のようなものです。閉じると涙の蒸発を防いで涙の量も多くなるため、自覚症状がよくなり、目の表面の傷も治ります。プラグは着脱式で外すことができます。治療費は1個3000円程度です。保険診療で受けることができます」。
内野講師によると、ドライアイの点眼薬はいろいろな種類があり、同じ治療を続けるとは限らないということです。途中で通院しなくなる人がいるため、「薬が合っているか、症状は改善しているかは自己判断しないで、点眼を開始したら約2週間後に必ず診察を受けてください」とアドバイスします。

目が乾きやすい現代は、積極的な予防が大切

オフィスワーカーを対象にドライアイの有病率を調べた『VDT作業者におけるドライアイの有病率と危険因子』(Am J Ophthalmol.156(4):759-766,2013)の研究では、VDT作業の時間が長い人ほど有病率が高いことがわかっています。「VDT作業をしている人のうち、65%の人は治療が必要な状態であり、有病率は女性の方が2倍高いこともわかりました。女性は年齢が上がるほど涙の分泌が減ってきます。涙が出にくくなると目の表面が守られなくなるので、ドライアイになりやすいといえます」(内野講師)。
職場以外でも、スマートフォン、テレビ、ゲーム機など、私たちの身の回りにはさまざまなIT機器があり、活用するライフスタイルになってきました。ディスプレイを見て過ごす時間が長くなるほど、目にとってはドライアイのリスクが増えます。そのため、これからは予防することが非常に大事、と内野講師は強調します。「たとえば、市販の目を温めるアイマスクは、目の周りの血行をよくし、目の縁にあるマイボーム腺からの油層の分泌を上げ、涙の質をよくします。サプリメントも研究されていて、摂取するとドライアイを悪化させないことに役立つと思います。また、近年は、目元を洗うアイシャンプー(洗浄料)が登場しています。これは、脂質を分泌するマイボーム腺の穴をきれいに洗うためのものです。涙の油層の質がよくなり、自覚症状がよくなります」。

目に気になる症状があったら、眼科で相談してみましょう。また、日頃から目をケアして、安定した涙で潤う健康な目を維持していくことが大切です。

監修 慶應義塾大学医学部眼科学教室 特任講師 内野 美樹先生

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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