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vol.176 「アトピー性皮膚炎」の最新治療

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Vol.176 「アトピー性皮膚炎」の最新治療

皮膚が乾燥してかゆくなり、かいているうちに炎症を起こすアトピー性皮膚炎。もともとの遺伝的な素因に、さまざまな要因が関わった「多因子疾患」といわれています。原因不明ということで、重要な研究が報告されるたびに注目されてきました。これまでは、皮膚がアレルギー物質や刺激に対して過敏に反応する「アレルギー疾患」、皮膚の角質にあるセラミド(細胞間脂質)の減少による「皮膚バリア機能の異常」と考えられ、2006年には、角質のフィラグリンというたんぱく質の遺伝子変異が発症の因子と報告されました。その後、研究が進み新たな因子が明らかになっています。

皮膚の常在菌が発症の一因?

私たちの腸の中には、たくさんの腸内細菌がいることが知られています。皮膚にもさまざまな常在菌がいて、微妙なバランスで皮膚の健康を保っています。その皮膚の細菌叢とアトピー性皮膚炎には、どうやら関わりがありそうなのです。
アトピー性皮膚炎を研究している慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の海老原全(たもつ)准教授は、「皮膚の細菌叢には、いろいろな細菌がいて多様性が普通です。アトピー性皮膚炎が悪くなるときは、黄色ブドウ球菌だけが極端に増えて、良くなると減り、いろいろな細菌が増えることが分かってきました。多様性を失った状態が発症の引き金なのか、悪化のもう一つの要因と考えられます」と話します。

感染を伴うアトピーに「ブリーチバス療法」

発症の原因が黄色ブドウ球菌だとすると、細菌を抑える抗生物質を服用することで治療できそうです。しかし、ヒトに対する効果がはっきり分かっておらず、米国では「ブリーチバス療法」という治療法がすでに行われているということです。この治療法は、消毒に用いる次亜塩素酸ナトリウムを一定の濃度入れたお風呂に、週2回程度入浴するもの。「これは、黄色ブドウ球菌を増やさない効果があると思います。海外では治療実績が報告され、認められています。日本では、私たちが臨床試験を行っているところです。いずれどのような人に効果があるのか結果が出ると思います」(海老原准教授)。

今年、期待されている治療薬とは

アトピー性皮膚炎の治療薬については、2018年に新たな薬の登場が期待されています。今後、出てくると予想されるのは、他の病気ですでに使われている生物学的製剤や分子標的薬です。「アトピーに対する薬の承認はすでにされていますが、重症度などがはっきりしていません。効果が強く高額な薬ですし、副作用もよく見ていかなければならないと思います」。安全で有効な治療を受けるには、もう少し時間がかかりそうですが、アトピー性皮膚炎の研究は着実に進んでいます。

一般的な治療法と「プロアクティブ療法」

現状のアトピー性皮膚炎の治療は、炎症の程度によって副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)と免疫調整薬のタクロリムス(商品名プロトピック)の2つの外用薬を用いることが基本です。この他に、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などが用いられます。
また、今、診療の現場では、「プロアクティブ療法」という治療が主になっています。これは症状が治っても、定期的にステロイド薬やタクロリムスを塗ることで、皮膚を良好に保とうというものです。アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返しやすいため、ぶり返しを少なくしようと先手を打って発症を防ぐ治療が行われています。

発症を防ぐ効果的な保湿剤の使い方

日本では、アトピー性皮膚炎の25%にフィラグリンの遺伝子変異があります。ただし、発症率には地域差があり、生まれつき素因があっても発症するとは限りません。また、アトピー性皮膚炎になりやすい子どもに、生まれて間もなく保湿剤を使うと発症が減ることが分かっており、アトピー性皮膚炎の発症を防ぐにはスキンケアが重要です。
スキンケアの基本は、皮膚を清潔にして保湿することです。保湿剤の使い方にはポイントがある、と海老原准教授はアドバイスします。「一般的に保湿剤といわれているものは、2つあります。保湿のためのものとワセリンのような保護薬です。ワセリンは塗っただけではだめで、水があるところになじませてしっとりします。皮膚の角層の水分量は、入浴後約10分で急激に減少するので、どちらにしても皮膚に少し水分を残して塗るようにしましょう」。
先日、美容目的での使用が問題視され、話題になったヒルドイドは、医師の処方で用いられる保湿剤の代表のようなものです。保湿剤については、自分の皮膚に合う市販品でもよいそうです。乾燥が特に気になる季節は、保湿剤を塗ってからワセリンを塗り重ねるのも皮膚をしっとりさせる良い方法です。

監修 慶應義塾大学医学部 皮膚科学教室 准教授 海老原 全先生

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