vol.177 大人の難治性中耳炎「好酸球性中耳炎」

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Vol.177 大人の難治性中耳炎「好酸球性中耳炎」

音や言葉は、外耳道からその奥にある鼓膜に伝えられ、耳小骨から内耳へと伝わる仕組みになっています。中耳炎は、鼓膜の奥の耳小骨がある中耳腔に炎症が起きる病気です。急性炎症では、抗菌薬を1~2週間飲むとよくなりますが、大人の場合は、「治療してもなかなか治らない」「再発を繰り返す」「診断がつかない」といった難治性が存在します。 人生100年の時代といわれるようになり、耳の健康に関する意識が高くなっています。難治性中耳炎の中には、早期診断・治療でよくなる例があり、治療も進んでいます。耳の健康を守るために難治性中耳炎のことを知っておきましょう。

好酸球性中耳炎とは

好酸球性中耳炎は、40~50歳代に起こることの多い難治性中耳炎の代表的な病気です。細菌などの侵入やアレルゲンによる刺激などで、血液中の白血球の一つである好酸球が活性化し、発症すると考えられています。この病気の診断基準の策定に尽力した東京北医療センター耳鼻咽喉科科長の飯野ゆき子さんは、「好酸球性中耳炎は、ほとんどの人が気管支喘息を合併し、好酸球性の副鼻腔炎や鼻腔ポリープを起こしています。時には好酸球の肺炎や食道炎を起こすこともあります。鼓膜の奥に水がたまる滲出性中耳炎型と、粘膜に穴(穿孔(せんこう))がある慢性中耳炎型があり、後者では粘膜が盛り上がって、鼓膜からはみ出るくらいの肉芽(にくげ)を作るタイプもあります。感染していないときは、グミのような膠(にかわ)状の貯留液が中耳にたまり、これが一番の特徴です」と話します。

好酸球性中耳炎の治療

治療は、重症度にもよりますが、ステロイド薬を中耳に入れて炎症を抑えます。治療薬は、主にトリアムシノロンアセトニド(商品名ケナコルト)が用いられます。感染を起こしている場合は、これに抗菌薬を併用します。また、肉芽によって薬の投与が難しい場合は、手術で肉芽を切除してから薬を入れます。
また、最近は、分子標的薬による新しい治療も行われています。気管支喘息に効果のある抗IL-5抗体薬(メポリズマブ)という薬などを使います。「この薬は、好酸球を活性化させるIL-5という生理活性物質を中和する働きがあります。治療に使うと血液中の好酸球の数が1%以下になり、中耳炎にも効果が期待できます」。好酸球性中耳炎は気管支喘息を合併している人が多く、効果も長期間続くため、今後の治療で有望視されています。

その他の難治性中耳炎の特徴とは

難治性中耳炎のおもな症状は、耳だれ(粘りのある液性や膿性)や難聴です。耳がつまった感じ(耳閉感)、耳鳴りがすることもあります。好酸球性中耳炎以外の病気ということもあり、疑って調べないと診断がつかない場合があるので、その他の難治性中耳炎も知っておきましょう。

◇悪性外耳道炎(頭蓋底骨髄炎)
外耳道から細菌などが侵入し、慢性の外耳道炎が奥に進行して発症する中耳炎。頭蓋底まで感染が進み、亡くなることもあります。高齢者や糖尿病の人などに多く発症し、脳神経まひなども現れます。過度な耳掃除による感染も注意が必要です。

◇結核性中耳炎
結核に合併して発症する中耳炎。抗菌薬では治らず、組織が壊死すると白い膿が出ます。治療は抗結核薬が有効ですが、疑って詳しく検査しないと見つかりにくい病気です。

◇コレステリン肉芽腫
高度の耳管機能障害が原因となります。中耳の出血によって、血漿(けっしょう)から滲出したコレステリンの異物反応から肉芽腫が作られます。症状は、どろどろとした褐色の耳だれや強い耳閉感が特徴です。

◇ANCA(アンカ)関連血管炎性中耳炎
全身性の壊死性血管炎に伴う中耳炎。ANCAとは、この病気で陽性を示す好中球細胞質抗体の略語。50代以降に多く発症し、肺や腎臓に血管炎を合併していることがあります。中耳炎が初発臓器の場合もあるので注意が必要です。

再建手術でよくなり、聴力が回復することも

中耳炎は、慢性になって鼓膜に穴が開いた場合は手術で治ります。しかし、慢性中耳炎を長く放置したり、再発を繰り返すたびに抗菌薬を飲んでいたりすると耐性菌が出現して治療が困難になるため、早めの治療が大切です。また、中耳の手術では、再建手術も行われています。「子どもの頃や40~50年前に手術した人では、術式が古く、病変部がすっぽりと取られたままになり、そこに耳あかがたまり、感染を起こして耳だれが出ていることがあります。このような場合は、全中耳再建術で治ります。中耳が治ると『さっぱりした』と患者さんに喜ばれ、聴力が回復する人もいます。手術後の耳だれも諦めないでほしいと思います」(飯野科長)。
難聴は、認知症のリスクの一つと言われています。中耳が機能しなくなると聴力が低下し、耳だれが続くと補聴器の使用も困難になり、生活の質に大きく影響します。治りにくい耳だれや聞こえの低下、気管支喘息などの持病があってこれらの症状が気になるときは、早めに耳の病気に詳しい医師に相談するようにしましょう。

監修 自治医科大学 名誉教授・客員教授
東京北医療センター耳鼻咽喉科科長 難聴・中耳手術センター長 飯野 ゆき子先生

取材・文 阿部 あつか

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