vol.187 「食道異物」の原因と知っておきたい対処法

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Vol.187 「食道異物」の原因と知っておきたい対処法

「食道異物」をご存じでしょうか。食道は食べ物の通り道。ここに飲み込んだものが停滞した状態です。食べ物は口から食道を通り、胃、小腸、大腸に運ばれて消化吸収されますが、食道異物は胃に到達せず、食道の中につかえています。食道に異物があっても、小児や高齢者ではうまく症状を伝えられないことも多く、特に注意が必要です。

食道の構造と異物になりやすいもの

食道は口の奥から胃の間にあり、長さは25~30cm、厚みは4mmほどの管状の臓器です。飲み込んだものは、通常、食道を通過して胃に到達しますが、食道は入口、中央部、出口が細くなっていて、そこを生理的狭窄部(きょうさくぶ)といいます。食道異物は、この部位で起きやすいことが知られています。
異物になりやすいのは、成人では魚の骨、小児ではコインやボタン電池、おはじきなどのおもちゃ。高齢者では、部分入れ歯などが原因になります。食道異物の診療に詳しい東海大学医学部外科学系消化器外科学の島田英雄教授は、「魚の骨ではタイやブリが多く、角や先端がとがったものでは、義歯など。薬を角のとがったアルミの包装ごとうっかり飲み込んで受診する人もいます。消化器の手術をした人では、食道と胃や腸のつなぎ目の細くなったところに引っかかることがあります」と話します。

食道異物が危険な理由

食道は、喉の奥の食道入口から頸部、胸部、腹部の3つに区分され、胸部の食道では、肺や気管と大動脈が交差する隙間に食道が通っています。ここには肺や心臓などもあり、異物が食道壁を破り、これらの重要な臓器に傷がつくと大変です。「ボタン電池では中身が漏れ出し、化学性の刺激で粘膜が傷つく問題があります。食道が圧迫されると異物が気管や大動脈に刺さって大出血になり、食道が損傷して胸に膿がたまると膿瘍(のうよう)や縦隔炎など重篤な合併症を引き起こします。異物によって命に関わることがあるのです」(島田教授)。

疑われるときの診察、検査、治療

食道異物の診察は、飲み込んだ人が小児や認知症の高齢者では、医師に伝えられないため、家族や周囲の人から状況を聞きます。金属性の異物が疑われるときには、エックス線検査で調べますが、プラスチックやガラスなどは見えません。金属以外は、CT検査が確実な診断につながります。「食道のどの位置にあって、どうなっているか。CT検査では、異物と周囲の臓器との関係も立体的に分かります。魚の骨は中で折れて取り出しても残っていることがありますが、CT検査では入り込んだ骨も診察できます」(島田教授)。
異物が見つかったら、その形状などに応じて器具を選び、口から内視鏡を入れて取り出します。とがったものが食道を貫通しているときは、内視鏡では食道や周囲の臓器を傷つけます。損傷を避けるために手術をして異物を取り出します。

食道異物の受診先と注意点

喉に魚の骨が刺さると痛みなどを感じますが、食道異物は症状がほとんどありません。小児や認知症の高齢者では、「あったものがない」「探しても見当たらない」「飲み込んだかもしれない」と家族や周囲の人が気づいて、受診することが少なくありません。また、健康な人がうっかり飲み込むなど誰にとっても危険があります。異物は放置してはいけないものなので、もしものときの受診先は、異物が喉に刺さったときは「耳鼻咽喉科」へ、飲み込んでしまったと思われる際には、「消化器内科」や「食道外科」を受診しましょう。さらに、ふだんから注意点を知っておきましょう。

  • コインやボタン電池などは、子どもの手の届かないところに置く
  • タイやブリなどアラを使った魚料理は、骨に気をつける
  • 個装された錠剤(PTP包装薬)は、一錠ずつ切り分けない
  • うっかり、あわてて、急いで飲み込まない

検査は特殊光の内視鏡で受けよう

「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」。このたとえのように食道に異物があっても気づきにくいものです。ところが、食べ物が飲み込みにくい、つかえた感じがするという食道の違和感は、食道がんでよくみられる症状です。がんで食道が狭くなると症状が出てくるのです。食道の病気の中で食道がんは見つけにくく、治療の難しい病気といわれています。しかし、早期発見では口からの内視鏡治療で治せることが多く、定期的な内視鏡検査が大事と島田教授は話します。
近年、食道の内視鏡検査は、特殊な波長の光で病変を観察する検査法が広まっています。「特殊光の内視鏡は、病変が正常部とは異なった色調となり、色の違いで早期発見することができます。早期の食道がんなら内視鏡で切除することもできます。食道の検査は、特殊光観察による内視鏡検査をお勧めします」。
食べたり、飲んだりすることは、人生の楽しみの一つ。しかし、食べ物が通る食道の異変は、意外と気づきにくいものです。食道がんは多量飲酒が危険因子で、男性に多く発症します。定期的な食道の健康チェックを忘れないようにしましょう。

監修 東海大学医学部付属大磯病院 病院長
   東海大学医学部外科学系消化器外科学 教授 島田英雄先生
取材・文 阿部 あつか

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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