vol.193 「レーザー治療」ができる皮膚の病気

健康・医療トピックス

インスタ映えを意識して、見た目を気にする人が増えているようです。皮膚の悩みは、相談しないで諦めがちですが、いわゆる赤いあざや青黒いあざは、健康保険のレーザー治療で良くなることがあります。しみやしわなど大人の美容目的が目立つレーザー治療ですが、あざの場合は、子どもの方が効果は高く、治療は早期のタイミングが大切です。

vol.193 「レーザー治療」ができる皮膚の病気

レーザー治療とは

レーザーは固有の波長を発振します。レーザー治療は、固有の波長の光を病変に照射して、選択的に破壊するものです。レーザー機器はそれぞれに特性があり、色素レーザー、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーが健康保険に適用されている機器です。レーザー専門医で、形成外科の診療に詳しい東海大学医学部外科学系形成外科学の河野太郎准教授は、「血管系とメラニンの病気が私の患者さんの半数を占めます。健康保険の適用はその大きさによりますが、毛細血管奇形などでは年齢とともに大きくなり、色も濃くなります。レーザー治療は小さいうちに受けた方が効果はあります」と話します。

健康保険が適用される皮膚の病気

では、レーザー治療はどんな皮膚の病気に効果があるのか。健康保険が適用されている主な病気を取り上げてみましょう。

  • 毛細血管奇形(単純性血管腫)
    最近は、毛細血管奇形と呼ばれている病気です。皮膚の真皮内の毛細血管が拡張し、赤いあざになるもので、色素レーザーで赤みを抑えて目立たなくします。レーザー治療は年齢が若いほど効果はあります。しかし、再発しやすく、年齢を重ねると赤みが濃くなり、厚みが増したりします。そのため、年齢や経過などを考慮して治療します。
  • 乳児血管腫(苺状血管腫)
    苺状血管腫と呼ばれていた病気で、生後にいちごのような赤色のあざが表れて盛り上がってきます。レーザー治療は色素レーザーを用いて、その熱によって病変の血管を破壊し、色を消失させて見た目や機能を回復させます。
    乳児血管腫の治療は、2016年7月にプロプラノール塩酸塩のシロップ薬が承認されています。薬によって予防的な治療が行われていますが、全身に薬の副作用が起きるリスクをなくしたいときや早期に改善したい場合は、レーザーで治療します。「乳児血管腫は皮膚のどこにでもできますが、頭皮にできると脱毛の原因になります。レーザー治療は、それを予防することが分かっています。両方に健康保険が適用されるため、よく相談して治療を決めます」(河野准教授)。
  • 太田母斑
    顔の片側に青黒いあざが広がります。メラニンを作る色素細胞の異常と考えられています。太田母斑のレーザー治療は、Qスイッチルビーレーザー、またはQスイッチアレキサンドライトレーザーを用い、レーザー光を照射することでメラニンを破壊します。早期に治療すると治療効果が高く、完治が期待できることから小さいうちに治療した方が有効です。
  • 外傷性刺青
    交通事故などでできた外傷性刺青もレーザー治療が可能です。Qスイッチルビーレーザー、またはQスイッチアレキサンドライトレーザーを用いて色を薄くします。また、きず(はんこん)が残り、その治療を希望する場合は、自費のレーザー機器を用いることがあります。

にきび痕や脱毛は自費で治療できる

美容目的のレーザー治療には、健康保険は適用されませんが、にきびの痕や脱毛などにレーザーが使用されています。気になるにきび痕では、でこぼこした顔の皮膚を平らにしてテカリもなくなります。脱毛にはロングパルスレーザーが使われます。毛を作り出す毛母細胞に熱を伝えて、毛が生えないように焼き切ります。

レーザー専門医に相談しよう

皮膚のレーザー治療は、すべてが完治するわけではなく、妊娠中やレーザー専門医が診察して適応しないときは、受けられないことがあります。見た目に関わる治療は、治療法をよく聞いて納得して選ぶことが大切です。
日本レーザー医学会では、皮膚にレーザー治療ができるのは、皮膚科または形成外科の専門医で、さらにレーザー専門医に合格した専門性の高い医師に限られています。レーザー治療できる疾患は意外と広いため、受診を希望するときは、皮膚科と形成外科の違いなども知っておきましょう。「形成外科は外科的治療にも優れ、見た目も考慮して治療します。レーザー治療は、費用や回数、合併症などを聞き、自費の場合は最初に総額を聞くことが大切です。一つの医療機関で無理と言われても、形成外科にはいろいろな治療法があるので、諦めないで受診してください」。

監修  東海大学医学部外科学系 形成外科学 准教授 河野太郎先生
取材・文 阿部 あつか

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