vol.31 脳梗塞治療で認可されたt-PAの実力

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Vol.31 脳梗塞治療で認可されたt-PAの実力 「やっと認可されたか」と思った人は多いのではないでしょうか?待望されていたその薬とは、今年(2005年)10月に脳梗塞の治療薬として認可された血栓溶解薬の『t-PA(プラスミノーゲン・アクチベータ)』。一般名を「アルテプラーゼ」といいます。この薬はすでに心筋梗塞の発症直後の治療薬としては 1991年に保険適用になっていました。

ところが、脳梗塞の治療薬としては米国で1996年に認可されていて、「早期の適切な診断と治療で脳梗塞は治せる!」とまでいわれていました。それから遅れること10年・・・この薬が遂に保険適用になり、日本の脳梗塞の医療現場では新たな段階を迎えたのです。
現在、日本の脳卒中死亡者数は年間約13万人で、介護医療の30%が脳卒中患者という現状です。脳卒中患者は年間に140万人も入院しており、毎年50万人以上の新しい患者が誕生しています。2020年に患者数は300万人以上になると予測されています。その現状がt-PAでかなり変化すると思われます。

t-PAに対する日本の臨床試験は2002年から03年にかけて22施設で行われました。治療から3カ月後に行った調査では、脳梗塞を発症して3時間以内にt-PAを投与できた患者のうち、37%がほとんど後遺症のない状態で見事に社会復帰できていたのです。ちなみに、後遺症はあるが日常生活に戻れた患者は20%、介助が必要は33%、死亡が10%でした。2000年前後には「ほぼ完全に良くなる」のが20%程度だったので、その効果がはっきりわかります。
t-PAの投与は3時間以内に限られます。それを超えるとt-PAの副作用によって脳出血が起こりやすくなり死亡者も多くなるのです。t-PA投与が3時間以内ということは、脳梗塞を発症してから2時間くらいまでにt-PAを扱う医療機関に運び込まなければなりません。

医療機関では正確な診断と治療のためにまずCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴断層撮影)の画像診断が行われます。そして、脳梗塞であればt-PAが点滴で静脈投与されます。

ただし、3時間以内であっても脳出血を引き起こすケースもあります。臨床試験では103人の脳梗塞患者に、3時間以内にt-PA投与し、36時間以内の頭蓋内出血を調べました。それによると、症状のある頭蓋内出血は6人で、そのうちの1人が亡くなっています。さらに、症状を伴わない頭蓋内出血が26人にあり、頭蓋内出血はトータルで32人にのぼりました。

有効性と安全性は高いものの、脳出血を起こしやすい副作用もあるので、学会としてはt-PAを使う施設に条件を付けています。「CT、MRIが24時間稼働」「集中治療を行うための十分な人員と設備」「脳外科的処置がすぐに行える体制と設備」「急性期脳梗塞入院例が年間100例以上」などです。
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