vol.78 新型インフルエンザで心配されるCOPD患者

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Vol.78 新型インフルエンザで心配されるCOPD患者 新型インフルエンザのワクチン接種が、日本では2009年10月から始まりました。ワクチン接種は、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすことやそのために必要な医療を確保することを目的としています。そのため接種には優先順位が決められています。
優先順位は、(1)医療従事者、(2)妊婦、基礎疾患のある人、(3)1歳から小学3年生に相当する年齢の小児、(4)1歳未満の小児の保護者。
この中で、重篤化する可能性のあるハイリスク群は、(2)、(3)です。
(2)の「基礎疾患のある人」の基礎疾患とは、以下のようになっています。「慢性呼吸器疾患」「慢性腎疾患」「慢性心疾患」「慢性肝疾患」「神経疾患・神経筋疾患」「血液疾患」「糖尿病」「疾患や治療に伴う免疫抑制状態」「小児科領域の慢性疾患」――。
新型インフルエンザの場合、感染力は季節性インフルエンザに比べてはるかに強いものの、重症化については季節性のものと大きな違いはないようです。
ただし、世界の報告例をみてみると、ある特徴がみえてきます。それは、新型インフルエンザウイルスは、肺での増殖がきわめて顕著だということです。 たとえば、オーストラリアとニュージーランドの研究論文では、新型インフルエンザに感染した患者722人の中に、慢性肺疾患(ぜんそく、COPD患者など)患者が32.7%も含まれていました。
また、カナダの研究論文では、新型インフルエンザの入院患者168人のうち、約10%がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者でした。
この傾向は日本の新型インフルエンザでの死亡者にも表れています。
10月20日までの日本の状況では、「新型インフルエンザに罹患しやすいのは若年層(20歳未満)だが、高齢者(60歳以上)で死亡率が高くなる」と指摘されています。60歳以上の死亡者11人のうち、3人がCOPDを基礎疾患に持つ人でした。
これらの状況をより詳しく分析し、日本呼吸器学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が合同で以下のように発表しました。

・ 重症者に慢性呼吸器疾患の人が多い。
・ 若年者ではぜんそく、高齢者ではCOPD。
・ 日ごろの治療が不十分な人が悪化しやすい。
・ COPDと診断されていない人はワクチンの優先接種者にならない。

この発表でも指摘されているように、新型インフルエンザではCOPDを基礎疾患に持つ人は、ハイリスク者の中でも、さらにハイリスク者なのです。
ところが、日本のCOPD患者の場合、40歳以上の大規模疫学調査での推計患者は530万人いるのにもかかわらず、厚労省発表の患者統計では、治療を受けているのはわずか22万人。多くの人は自分で「年のせい」と思い込んだり、医師からもそういわれたりして納得している人が多いようです。
本当はCOPDなのに診断を受けていないとワクチン接種を優先的に受けられず、罹患してしまうと、重症化のリスクが高いのです。最悪のシナリオを回避するためにも、COPDの症状である「階段の上り下りで息切れする」「咳や痰がでる」「風邪が治りにくく、咳や痰がでる」「呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒュー(喘鳴)がある」といった症状に気付いた人はすぐにも呼吸器内科を受診し、正しい診断・治療を受けるべきです。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

慢性気管支炎、肺気腫と呼ばれていた疾患を合わせてWHO(世界保健機関)がCOPDに統一しました。
肺に慢性的に炎症が起きて気道が狭くなったり、肺の末端でガス交換をしている肺胞の壁が破壊されたりすることで、気流制限が起こる病気です。代表的な症状は「息切れ」「咳」「痰」。風邪をひいたりすると急性増悪を起こし、呼吸不全や心不全で生死にかかわる状態に陥ることもあります。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
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