vol.101 目がかすむ症状は「ぶどう膜炎」の可能性も

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ぶどう膜炎って何?

目がかすむ、光がまぶしく感じられるといった症状があると、中高年の方はまず、老化や白内障、あるいは緑内障を連想されるでしょう。ところがそうした症状には、「ぶどう膜炎」の可能性もあることをご存じでしょうか。

ぶどう膜炎という病名は、あまり聞いたことがないかもしれません。ぶどう膜は、眼球をつつむ膜の1つで、外側の強膜・角膜と内側の網膜のあいだにあります。ぶどう膜には、入ってくる光の量を調節する虹彩(茶目の部分)、水晶体をコントロールしてピントを合わせる網様体、栄養分を運ぶ脈絡膜など、大切な機能をもつ部分がふくまれています。
そのため、ぶどう膜に炎症が起こると、目がかすむ、まぶしく感じられるといった典型的な症状のほか、人によっては目の痛み、視力の低下、充血などさまざまな症状が起こります。
また、進行のしかたも、少しずつ進む人、一時的に良くなって再発する人、ちょっとしたきっかけから悪化する人など、ばらつきがみられます。少数ですが、急速に悪化して視力低下から失明に至る場合もあります。
しかもぶどう膜炎は、症状は目に出ますが、もともとの原因は細菌感染や免疫疾患などの病気ということが多いのです。そのため検査に時間がかかることもありますが、反対にぶどう膜炎からほかの病気が発見されるケースもあって、「もっとも内科的診断を必要とする目の病気」といわれるほどです。
放置していると目の症状のみならず、原因となる病気の悪化にもつながるぶどう膜炎について、知っておきましょう。
vol.101 目がかすむ症状は「ぶどう膜炎」の可能性も

細菌感染とぶどう膜炎

ぶどう膜炎の原因のなかで、比較的わかりやすいのは細菌、ウイルス、カビなどによる感染です。全体の15%程度が感染によるものですが、検査を受けて細菌などの種類が判明すれば、それに応じた抗炎症薬などで治療することができます。
ただし、細菌などによる感染の場合、わずか数日で悪化することもあり、放置すると重症化しやすい面があります。
とくに注意したいのは、「急性網膜壊死(えし)」とも呼ばれるタイプのぶどう膜炎です。このぶどう膜炎の場合、とつぜんの目の痛みから、急速に視力低下が生じます。放置していると網膜の血管が障害を受け、やがて続発性網膜剥離へと進み、ケースによっては失明に至る可能性も出てきます(※1)。
原因としては、帯状疱疹を引き起こす水痘・帯状ヘルペスウイルスのほか、単純ヘルペスウイルスなどが考えられています。過去の感染によって多くの人(成人)が、これらのウイルスを体内にもっています。なんらかの理由で免疫力が低下したときに、ウイルスが活動を始めるので、だれにでも発症の可能性があります。
もし急な目の痛みを感じたときには、目をこすったりせず、できるだけ早く受診することが大切です。
また、症状が軽くなると、自己判断で薬をやめる人がいますが、細菌やウイルスはしっかり治療しないと再発し、以前よりも悪化することが少なくありません。医師の許可がおりるまでは、きちんと治療を受けましょう。

(※1)ぶどう膜炎の場合には網膜の血管が障害を受け、血液中から水分がしみ出て網膜下にたまり、網膜剥離に至るケースがみられます。

日本人に多いぶどう膜炎の原因

ぶどう膜炎の原因のなかで、日本人にもっとも多くみられるのは自己免疫疾患などの全身の病気です。全体の30~50%を占めると推定されていて、その代表的なものがベーチェット病、サルコイドーシス、原田病の3つです。
厚生労働省の特定疾患(いわゆる難病)に指定されているものもあり、早期発見のために症状などを知っておきましょう。

<ベーチェット病>
ベーチェット病は、全身にいろいろな症状(炎症など)がくりかえしあらわれますが、目立つのがぶどう膜炎、口腔内アフタ(口内炎)、皮ふ疾患(痛みをともなう湿疹など)、外陰部潰瘍(性器付近の潰瘍)があります。
ぶどう膜炎はとくに多く、目の痛みやまぶしさ、充血などの症状がみられます。
原因は特定されていませんが、なんらかの理由で起こる白血球の異常が誘因になるとされています。
<サルコイドーシス>
サルコイドーシスは、全身の臓器などに肉芽腫(小さな肉のかたまり)ができる病気です。ただし、悪性のものではなく、感染もしません。
目や肺に症状がよくみられますが、目の場合にはぶどう膜炎が代表的なものです。目がかすんだり、視力が低下するなどの症状が出やすく、放置していると緑内障を発症することもあるので注意が必要です。
<原田病>
原田病は、ぶどう膜炎が典型的な症状ですが、ほかに色素細胞の多い脳の髄膜に起こる炎症(髄膜炎)、皮ふ・髪などの白化などが特徴的です。そのほか風邪に似た症状(発熱・ノドの痛みなど)、耳の異常(難聴、耳鳴り)、めまい、頭痛、吐き気などもみられます。
ぶどう膜炎の場合、目のかすみのほか、目の奥が痛むこともあります。放置すると網膜剥離を起こしやすいので、早めの受診が大切です。
原因はまだ明確になっていませんが、色素細胞に起こる自己免疫反応によるものと考えられています。

知っておきたい注意点

ぶどう膜炎の診断では、患者さん自身からの情報がとても大切です。目の症状(かすみ、痛み、まぶしさなど)だけでなく、ほかになんらかの異常がある場合は、それらを医師に告げるようにしましょう。
たとえばベーチェット病の場合、皮ふが弱くなり、ヒゲ剃り時にかみそり負けをしたり、注射のあとが化膿したりすることが少なくありません。また、関節炎や関節リウマチなどの症状、消化器症状(下痢、腹痛など)が原因を知るサインになることもあります。
病気の特定には、通常の目の検査だけでなく、血液検査や胸部X線検査、眼底造影検査など、多くの検査が必要となります。ベーチェット病のように、さまざまな症状があらわれるため、定期的な観察が必要となる場合もあります。
治療では、ステロイド薬が有効なことが多く、症状によっては長期間、あるいは大量に使用することもあります。それだけに副作用管理もふくめ、医師とのコミュニケーションを大切にしながら、治療を続けることが大切です。不安な点などは医師に相談し、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。
また、ぶどう膜炎は、睡眠不足や疲労、ストレスが続くと再発しやすい病気です。症状が軽くなっても油断せずに、規則正しい日常生活を心がけることも忘れずに。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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