vol.123 こまめにからだを動かそう - 毎日がエクササイズ

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ヘルシーライフ

1分~5分のこまめな運動を

健康維持のためには、たまにまとまった運動をするよりも、毎日こまめにからだを動かすことが大切です。それは何故でしょうか。
だれでも加齢にともない、関節が硬くなり、筋力も低下します。と同時に、血液やリンパ液の流れも悪くなり、老廃物が体内に蓄積しやすくなります。こうした状態を改善するには、毎日からだに軽い負荷をかけるほうが効果的だからです(たまに強い負荷をかけると、逆に骨や筋肉、血管がダメージを受けやすい)。
仕事や家事に追われて、「毎日なんて無理」という方も多いでしょう。たしかに、まとめて30分の運動をする時間をとるのは大変かもしれません。でも1分~5分程度の時間なら、だれでも可能なはずです。

まずは、自分の生活の中で、1分~5分の時間を見直してみましょう。レンジで「チン」を待つ、歯磨きをする、シェーバーでヒゲをそる、お湯が沸くのを待つ、テレビのCMタイム、ドライヤーで髪を乾かす、トイレに行く、メールや電話をする … けっこう多くの「1分~5分」があることに気づくはず。
そんな短い時間で何ができるのか、と思われるかもしれません。でも、ためしに軽い腕振り運動(足を肩幅程度に開いて立ち、膝を少し曲げ、走るときのように腕を前後にゆっくり振る。腕振りのリズムに合わせて、かかとを一緒に少し上げ下げするとやりやすい)を3分間続けてみてください。運動不足気味の方なら、息が荒くなり、かなりの運動になると感じるのではないでしょうか。この程度の運動でも、消費カロリーは30~40キロカロリーになり、腕の筋肉維持や肩こり予防効果にもなります(※1)。ただし、血圧の高い方や高齢の方は無理をせず、最初は1分間程度にしてください。

こまめにからだを動かす運動は、筋肉痛や関節痛などの運動障害を起こしにくいので、中高年の方に向いています。また室内運動が中心なので、天候に関係なくできるのもメリットです。いろいろな運動があるので、自分に合ったもの、できそうなものから始めてみましょう(※2)。

(※1) 消費カロリーは、年齢や体重、運動の仕方などで異なるので、これは1つの目安です。一般に、小柄な女性、高齢の方ほど少なく、大柄の男性、若い人ほど多くなります(以下、本文中の消費カロリーはすべて目安です)。
(※2) 家事もこまめにからだを動かす要素の1つです。ただし、床の拭き掃除や手洗いの洗濯をしていた昔と比較すると、現代では家事の運動量は半分以下になっています。そのため家事以外に、積極的にからだを動かすことが大切になっています。

vol.123 こまめにからだを動かそう - 毎日がエクササイズ

基本は「歩き方」の工夫から

こまめにからだを動かす場合、短時間で運動効果をアップするのがコツ。その基本となるのが「歩き方」です。
自宅での1日の歩数は、人によってさまざまですが、ずっとデスクワークという方を別にすれば、家事などをふくめて1日1000歩~2000歩程度にはなります。歩数だけを見ると、とても運動になるとは思えませんが、歩き方を工夫することで運動量をアップすることができます。

運動効果の高い歩き方とは、「つま先立ち歩きと膝曲げ歩き」です。
つま先立ちをすると、ふくらはぎなどに力がかかり、普通に歩くよりも足の筋肉への負荷が大きくなります。姿勢も良くなり、太ももやお尻も引き締まります。かかとを高く上げるとバランスをくずし、また足首を痛めやすいので、かかとをほんの少し上げる程度にして歩きます。
いきなり自宅での歩行すべてをつま先立ちにすると、筋肉疲労を起こしやすいので、まずトイレや玄関への行き帰りなど、1日数百歩を目標に試してみましょう。数日間続けると、ふくらはぎが張ったりして、けっこういい運動になっていることに気づくはずです(ただし、ハイヒールを履くことが多い方、足先の関節障害のある方、高齢の方は無理をせず、次の膝曲げ歩きにしましょう)。

もう1つの歩き方は、膝を少し曲げた歩き方です。ロボットのアシモ君の歩き方を連想すると、わかりやすいでしょう。
膝曲げ歩きは、膝周辺や太ももの筋肉などが鍛えられ、膝痛の予防にもなります。また、つま先立ち歩きよりも姿勢が安定し、歩行速度もゆっくりになるので、高齢の方にも向いています。歩くときは、すり足にならないように足をきちんと上げ(すり足はつまずきやすいので注意が必要です)、背筋を伸ばし、視線をまっすぐにします。この歩き方もけっこう筋肉への負荷が大きいので、最初はトイレや玄関への行き帰り程度(数百歩)から始めましょう。

家の中を歩く場合、普通の歩き方だと消費カロリーは1分間2キロカロリー以下ですが、つま先立ち歩きや膝曲げ歩きでは1.5倍程度になり、効率良く運動量を増やすことができます。ただし、すでに腰痛や膝痛のある方は、様子をみながら少しずつ運動をしてください。

日常のシーンに運動を取り入れる(1)

こまめにからだを動かすもう1つのコツは、日常生活のさまざまなシーンに上手に運動を取り入れること。「トイレの行き帰りにつま先立ちや膝曲げで歩く」のもその1つですが、ほかにもたくさんあります。ここでは、典型的なシーンと効果的な運動の種類をいくつか紹介します。

《歯磨きタイム》
歯磨きのとき、ほとんどの方はなんとなく鏡を眺めているのでは…。歯磨きに要する時間を5分間とすると、この時間を使ってちょっとした運動ができます。
たとえば、足を広めに開いて立ち、両膝を外向けに開くようにしながら腰をゆっくり落とす運動なら、頭が揺れないので歯磨きにも影響がありません。腰を膝と同じ高さまでおろしたら、その姿勢を少し(3~5秒)キープしてから、ゆっくり元の姿勢に戻します(からだが前傾しないように、背筋を伸ばし、顔は正面を見ます)。
この運動は、股関節周辺のストレッチ(伸縮)とスクワット(屈伸)を兼ねたもので、個人差はありますが5分間続けるとかなりの運動量(40~50キロカロリー)になります。運動不足の方や高齢者の場合は、最初は1分間程度から始めましょう。大切なことは、歯磨きのときはこの運動、というように自分で決めておき、それを毎日くり返すことです。

《テレビのCMタイム》
ソファや椅子に腰掛けて、同じ姿勢でテレビを見続けるのは、腰や首、肩などに負担がかかり、血液の循環も悪くなります。CMの時間になったら、一度ソファや椅子から離れ、からだを動かす習慣をつけましょう(食後は1時間程度休んでから、運動を始めてください)。
CMタイムにはいろいろな運動ができますが、ここではリラックス、ストレッチ、腹筋の運動を紹介します。

●リラックス運動 … 足を肩幅程度に開いて立ち、膝を軽く曲げます。その姿勢から、1、2、3、4と数えながら膝を伸ばしつつ、両手を真上へ高く上げます。両手の先を見ながら、首も後ろへそらします。5、6、7、8と数えながら、両手をゆっくり横に回しながら下へおろし、膝も少しずつ曲げていきます。水泳の平泳ぎを連想すると、わかりやすいでしょう。
ゆっくりやることでからだ全体をリラックスさせ、首から肩の筋肉や関節をほぐすことができます。もう少し負荷がほしい方は、両手に1キロ程度のダンベルを持つという方法もありますが、目的はからだをリラックスさせ、血液やリンパの流れを改善することなので、無理をせず、3分間(20回程度)を目標にして続けましょう(消費カロリーの目安は20~30キロカロリー)。

●ストレッチ+軽い腹筋運動 … 床に座り、両足を前に伸ばします。両手をゆっくり伸ばして、足先をつかみます(運動不足などでからだが硬くなっていると、指が足先に届かないことも。その場合は、無理のない程度に伸ばしてください)。足先をつかむ(あるいは両手を伸ばす)ポーズを5秒ほどキープしたら、元の姿勢に戻します。次に、両手をお尻の少し後ろあたりの床につき、両足を伸ばした状態でお尻をゆっくり上へ持ち上げます。からだがまっすぐになったら、その姿勢を5秒キープして、元の姿勢に戻します。これは上体のストレッチと軽い腹筋運動に加え、日頃あまりできない腕の筋力アップ運動にもなります。ただし、高齢の方で腕の筋力が低下していると、からだを支えられないこともあるので、その場合は無理をしないでください。
この運動(ストレッチ+軽い腹筋のセット)は、5分間あれば10回~15回はできます(消費カロリーの目安は30~50キロカロリー)。運動効果を高めるには、ゆっくりすること。また、息を止めると血圧に影響しやすいので、姿勢をキープするときもかならず呼吸を続けましょう。

日常のシーンに運動を取り入れる(2)

《レンジでチンタイム》
キッチンでは、火やお湯を使っていることもあるので、からだを大きく動かす運動は危険です。でも、レンジでチンを待つ間なら大丈夫。片足での屈伸運動をやってみましょう。
両手を壁や冷蔵庫に添えて、からだがぐらつかないようにします。片足で立ち、1、2、3、4と数えながら、ゆっくり膝を曲げていきます。ある程度まで膝を曲げたら、5、6、7、8と数えて元の姿勢に戻ります。膝を深く曲げるほど強い負荷がかかるので、最初のうちは膝の上や太ももの筋肉に少し負荷がかかる程度にします。左右交互に5回~10回が最初の目標ですが、3分間だと20回程度はできます(消費カロリーの目安は30~40キロカロリー)。
片足だとぐらつく方や膝痛のある方は、両足での浅い屈伸でもいいので、レンジでチンタイムを有効に使いましょう。

《腰掛けタイム》
椅子に座って何かをしているときは、からだをほとんど動かしていません。血液やリンパ液の流れが悪くなり、足のむくみや肩こりの原因にもなります。
腰掛けた状態が続くときは、ときどきつま先とかかとの上げ下げ運動をしましょう。両足を床につけた状態から、まずつま先をぐいとあげて3秒ほどキープします。つま先をおろしたら、今度はかかとをぐいと上げ、同様に3秒ほどキープします。このくり返し運動を10回程度します(なんとなく足先が暖かくなってきたら、血液循環が改善されている証拠です)。
上体の運動もしましょう。椅子に深く腰掛け、からだを左右にひねる(回転させる)運動です。左にひねるときは、首を左へ回転させながら手とからだも一緒に左へ回していき、右手で椅子の背の左側をつかむくらいまでひねります。その姿勢を5秒ほどキープしてから、元の姿勢に戻ります。急にからだをひねると、首や胸、手の筋肉などを痛めることがあるので、少しずつゆっくりやりましょう。姿勢のキープ時にも、息をとめないこと。左右のひねりを、各5回程度することで、首や肩などの筋肉をほぐします。
どちらも消費カロリーは多くありませんが、日頃使わない筋肉を動かすことができ、また血液やリンパ液の循環を改善する効果があります。

《おやすみタイム》
眠る前に、ベッドやフトンの上で軽い運動をしてみましょう。
仰向けに寝て、右足(または左足)を曲げながら、ゆっくり胸の前へと引き付けます。両手で膝のあたりをかかえると、上手に引き付けることができます。呼吸をしながら、その状態を3秒キープしたら、足をゆっくり伸ばします。股関節などのストレッチが目的なので、足の力を抜き、左右5回~10回します(消費カロリーの目安は20~30キロカロリー)。
もう少し簡単な運動なら、仰向けに寝て、足先をまっすぐ伸ばし(甲の部分を伸ばす感じ)、元に戻すだけの運動もあります。足の力を抜いて、ゆっくり30回やってみましょう。次第に足先がポカポカとしてきて、血流が良くなることがわかるはずです(足に力を入れると、つることがあるので注意。予防のためには、運動のあと足をブルブルとふるわせてリラックスさせます)。

このように日常生活には、こまめにからだを動かすシーンが数多くあります。大切なのは続けることですが、もし軽い筋肉痛や関節の違和感などをおぼえた場合は、運動を1日休んで、様子をみるようにしましょう。

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