2014.03.10

vol.129 中高年のアルコールとの付き合い方

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中高年とアルコール

Vol.129 中高年のアルコールとの付き合い方

お花見や入社・転勤など、アルコールに接する機会の多い季節です。
一般に、アルコールをよく飲むのは若い世代と思われています。一気飲みなどで急性アルコール中毒になり、救急車で運ばれるのは若者が半数以上を占めているので、そういう印象が強いのでしょう。
ところが、日常的な飲酒に関しては事情が異なります。さまざまな実態調査では、常習飲酒者(毎日のように飲む)や多量飲酒者(毎日3合以上飲む)は、若い世代には少なく、40歳代~60歳代の中高年世代(とくに男性)がピークという結果が多くみられるのです。なかには、毎日のように飲む人が20歳代は10%以下なのに対して、50歳代、60歳代では半数近くを占め、70歳以上でも30%以上という調査結果もみられます。女性の場合も、男性ほど数は多くありませんが、毎日のように飲むという人は40歳代と50歳代がピークです。

中高年になると、個人差はありますが、同じ量のアルコールを飲んでも、若い人よりも血中アルコール濃度が高くなる傾向がみられます。その理由の1つは、体内の水分量が減少し、アルコールが体内に溶け込みにくくなり、血中に残るためです。また、胃粘膜の老化などによって、アルコールを分解・吸収する機能が低下することも、血中濃度が上がる原因となります。
その結果、中高年になるにつれ、アルコールの影響を受けやすくなってきます。ところが長年の習慣などもあって、若い頃ほど酔いを感じなくなり、飲みすぎが慢性化しても自覚しにくいのです。こうした中高年世代の「アルコールの飲みすぎ」が、高血圧や脂質異常症など多くの病気のリスクを高めていることが、近年の研究から分かってきています。
アルコールには、ストレスを解消したり、人間関係を円滑にしたりするメリットもありますが、中高年の場合にはデメリットも多くなることを知っておき、上手な付き合い方を心がけることが大切です。

アルコールに対する誤解

かつて海外の調査で、「アルコールをまったく飲まない人より、適量を飲む人のほうが、死亡率が低い」という報告が紹介され、日本でも話題になったことがありました(※1)。それ以来、「適量のアルコールは健康に良い」といわれるようになり、そう信じている方も多いでしょう。しかし、実際にはいくつか注意すべき点があることが指摘されています。その代表的なものは、次の2点です。

  1. (1)日本人と欧米人では、アルコールがつくる有害物質(アセトアルデヒド)の分解能力に違いがあり、海外の調査結果をそのまま当てはめることはできない。
  2. (2)心筋梗塞など一部の病気のリスクは下げるが、高血圧をはじめとしたほかの多くの病気のリスクは反対に高くなる。

このうち(1)については、日本人の約半数は、アセトアルデヒドを分解するアルデヒド脱水酵素の活性が低い(お酒に弱い)か、不活性(お酒が飲めない)であることが分かっています。このタイプの人は、アルコールを飲むとすぐに顔が赤くなる、頭痛がする、気持ちが悪くなるなどの症状がみられます。飲み続けていると、からだが慣れてきて、少しずつ飲めるようになることもありますが、もともとアセトアルデヒドの影響を受けやすいため、食道がんなどのリスクが高くなるので注意が必要です。
次の(2)については、日本人を対象とした調査でも、心筋梗塞や認知症などでは、少量のアルコールが発症リスクを低下させる効果が認められています。しかし、認知症の場合は、アルコールを1日2g~12g(350mlのビールで1本未満)ならリスク低下の効果がありますが、30g(同2.5本)を超えるとリスクが高くなることが指摘されています。

一方、高血圧、脂質異常症、脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)、がんなどでは、アルコールの摂取量が増えるにつれ、発症リスクが高くなることが判明しています(※2)。たとえば、血圧とアルコールとの関係でいうと、アルコールの摂取量が増えるにつれ、収縮期血圧(最高血圧)も拡張期血圧(最低血圧)も上昇する傾向があり、やがて高血圧になる可能性も高くなります。これらの病気の場合、少量とか適量がリスクを下げることはありません。
それだけに、血圧やコレステロール値、中性脂肪値が高めの方などは、「適量のアルコールは健康に良い」という思い込みを捨て、自分とアルコールとの関係をリセットして、考え直してみることが大切です。

(※1)ACSH(米国保健科学協議会)による1993年の報告など、いくつかの海外の調査報告が日本に紹介された。

(※2)がんでは、食道がん、頭頚部がん(口腔、咽頭、喉頭)、肝臓がん、大腸がんのほか、女性の乳がんも、アルコールにより発症リスクが高くなることが分かっています。

自分の「適量」を見直そう

あなたは、自分の「適量」をどのくらいだと思っていますか。中高年の方には、自分の適量を多く見積もっていて、その結果が飲みすぎにつながっていることが少なくありません。
東京都による飲酒に関する調査によると、自分の適量を、日本酒で2合以上(ビール、発泡酒で中瓶2本以上、ワイン4杯以上)と思っている方は、40歳代で約40%もいて、これは20歳代、30歳代よりも多いのです。50歳代になると少し減りますが、60歳代でも約30%にのぼります(※3)。つまり、若い頃と同じか、むしろそれ以上を適量と思っている人が少なくないのです。冒頭の「中高年とアルコール」でも紹介しましたが、中高年になるにつれ、同じ量のアルコールを飲んでも、若い頃より血中濃度が高くなりやすい傾向があります。

本来、血中濃度が高くなると、酔いがまわり、爽快な気分になったり、陽気になったりと、満足感が得られます。ところが長年飲み続けている中高年の場合は、からだがアルコールに慣れて耐性が生じ、なかなか満足感が得られません。若い頃と同じ量では、いい気分になれないため、つい「もう少し」と思う気持ちが、適量を増やしてしまうのです。
また、中高年になるにつれ、体内でのアルコールの代謝機能が低下します。アルコールを分解、吸収し、排泄するまでの時間が長くかかるようになるため、普通はお酒に弱くなり、飲む量も減ってきます。ところが、代謝機能の低下を自覚できないまま、若い頃と同じように飲む人が少なくありません。そうすると、血中濃度が高い状態で、かつ飲む量が増え、しかも代謝機能が低下しているため、からだへのダメージが大きくなってしまうのです。
それだけに、中高年の方は、自分の適量を見直してみる必要があります。

(※3)東京都「健康に関する世論調査」平成24年5月。

アルコールと上手に付き合う

中高年の方がアルコールと上手に付き合うには、飲酒量と飲酒回数という2つの面から考えることが大切です。
飲酒量については、厚生労働省の「健康日本21」では、節度ある適度な飲酒量として、1日平均でアルコール20g程度としています。これは、ビール中瓶1本、日本酒1合、チュウハイ(7%)350ml缶1本、ウイスキーダブル1杯に相当します。ただし、この量は、健康でアルコール代謝機能も正常な人を対象としています。また、アルコール20gが健康に良いという意味ではなく、20g程度までという上限を示しています。
したがって、中高年になるにつれ、アルコール代謝機能が低下することを前提にすると、厚生労働省の基準よりも少ない量を自分の適量とすることが大切です。高血圧や脂質異常症、あるいはその予備軍といえる方は、アルコールの影響に個人差があるので、医師に相談した上で節酒をするようにしましょう。とくに治療薬を服用している場合は、アルコールの影響を受けやすいので注意が必要です。

一方、飲酒回数については、一般に週に2日は休肝日(肝臓を休める日)をつくることがいいとされています。アルコールの多くは肝臓で分解されるので、肝臓を休めることは必要ですが、中高年の場合、もっと重要なことは毎日続けて飲まないことです。その理由の1つは、アルコールの代謝に時間がかかり、自分では気がつかなくても、からだへの影響が残りやすいためです。
また、アルコールにはニコチンなどと同じように、強い依存性があります。毎日のように飲んでいると、少しずつ飲酒量が増加し、アルコールへの依存度が高くなる傾向がみられます。そうなると、飲んでいる時間も長くなります。毎日でも飲みたくなったり、飲んでいる時間がだらだらと長くなったりしたら要注意。気づかないうちに、アルコール依存状態になっている可能性があるからです。

そのほか、飲酒のときには、食事にも気を配ることが大切です。空腹状態でアルコールを飲むと、胃を素通りして小腸で吸収されるため、吸収が早まり、血中濃度も急速に高くなります。飲むときにはかならず食事も一緒に摂ることで、からだへの影響を和らげることができます。

<中高年のアルコールとの上手な付き合い方>
・“適量”を少なめにする。
・毎日続けて飲まない。
・飲む時間を短くする。
・血圧やコレステロール値が高い場合は、飲酒について医師に相談する。
・飲むときは食事もきちんと摂る。

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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