vol.132 アウトドアでは「虫刺され」にご用心!

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アウトドアでは虫の被害が多い

夏は、山や川、海辺などに出かける機会の多い季節です。ハイキングやキャンプ、バーベキューなど、豊かな自然のなかで家族や友人たちとの交歓を楽しみにしている方も多いでしょう。
そんなアウトドアでの活動のおり、気をつけたいのが虫による被害です。

都会で暮らしていると、蚊やノミ、イエダニなどに接することはありますが、自然のなかには多種類の虫がいて、人に害を及ぼすものも少なくありません。その代表的な虫が、マダニやスズメバチ、ケムシ、ブヨなどです。名前は知っていても、実際に刺されたときの症状や対処法については、知らない方が多いのではないでしょうか。
こうした虫に刺されたり、噛まれたり、血を吸われたりすると、多くの場合、かゆみや痛み、湿疹、発熱などの症状が出ます。当初は軽い虫刺されと思っていると、半日あるいは1日後に激しい痛みにおそわれるケースや、皮膚に噛みついたまま血を吸い続ける虫もいます。スズメバチをのぞくと、どの虫も小さいので刺されたことに気づかず、無意識にかきむしったりして、症状を悪化させるケースも少なくありません。
また、虫の毒液に対するアレルギー反応から意識障害を起こしたり、ウイルス感染によって重篤な病気を発症したりすることもあります。

とくに最近は、アウトドアでのバーベキューがブームとなり、車で現地まで行くことができるキャンプ場やバーベキュー施設も多いため、Tシャツや短パンなどの軽装の人を多くみかけます。アウトドアでの肌の露出は、虫の被害を招く一番の原因です。
これからの季節、アウトドア・レジャーを安全に楽しむために、虫による被害と予防法についてきちんと知っておきましょう。

vol.132 アウトドアでは「虫刺され」にご用心!

マダニについて知っておこう

どの虫にも注意が必要ですが、中高年の方がとくに気をつけたいのがマダニです。マダニは、森林やハイキングコース、畑、公園など、アウトドアのいたるところに生息しています。とくに、シカやイノシシなどの野生動物が多い場所ではマダニの数も多く、植物などに潜んでいて、人が近づくと服のなかに入り込んで、皮膚に噛みついて血を吸います。体長が1ミリ~3ミリ程度なので、気がつかないまま数日間(ときには1週間以上)も血を吸われてしまうケースもみられます。
マダニが怖いのは、日本紅斑熱やライム病など多くの病気を媒介することです。とくに最近、注視されているのは、2013年に日本で初めて発症患者が確認されたSFTS(重症熱性血小板減少症候群)です(※1)。SFTSを発症すると、発熱や嘔吐、腹痛、下痢などの症状がみられますが、悪化すると白血球や血小板が減少し、意識障害から死亡にいたる可能性もあります。
国立感染症研究所の資料によると、2013年に確認された患者はすべて40歳以上の中高年で、高齢になるほど発症数が増えています。それだけに中高年の方がマダニに噛まれた場合は、その後の症状には注意が必要です。また、患者は西日本に集中していますが、最近の調査などから、危険なマダニは東日本(関東甲信越、東北、北海道)にも生息していることが確認され、どの地域であっても油断はできません。
SFTSのウイルスを保有するマダニは、現時点では数%程度とされていますが、マダニは日本に47種類もいて、ほかの病気の細菌やウイルスを保有している可能性もあるので、注意が必要です。

皮膚に噛みついているマダニをみつけた場合、引きはがそうとすると頭の部分だけが残り、炎症や化膿を生じることがあります。あわてずに、皮膚科などで処置をしてもらうほうが安心です。
予防には、長袖・長ズボンの着用はもちろんですが、ズボンの裾を靴下の中に入れるようにし、首もタオルなどで覆います。また、マダニは腹部や足、陰部などに噛みつくことが多いので、バスルームで全身をチェックしてみることも大切です。
マダニに噛まれた後に発熱や炎症などがみられたら、早めに受診して感染症の予防に努めましょう。

(※1)日本では2013年に初めて認知されましたが、その後の調査で2012年以前にも発症患者がいたことが確認されています。SFTSは、マダニが保有するフレボウイルス属の新規ウイルスによる感染症であることが判明しています。

スズメバチやケムシにも注意を

スズメバチは攻撃性が強く、人が巣に近づいただけで襲ってくることもある危険な存在です。スズメバチに刺されると、痛みをともなう腫れや、発熱、じんましんなどさまざまな症状が起こります。
とくに注意したいのは、アナフィラキシーショック(アレルギー反応)で、呼吸困難や血圧低下を起こし、命にかかわることも少なくありません。過去にスズメバチに刺されたことがある人は、アナフィラキシーショックを起こす確率が普通の人より高いので気をつけましょう。

スズメバチは攻撃する前に偵察にきて、「カチカチ」という警戒音を出すことが知られています。少数のスズメバチが周りを飛び交ったり、警戒音が聞こえたりした場合は、すぐにその場を離れることが大切です。偵察にきたスズメバチを手で払ったり、大声で騒いだりすると、興奮した多数のスズメバチが攻撃してくるので、姿勢を低くして静かに去るようにしましょう。
もし刺された場合は、刺さっている針を抜き、指先で毒液を絞り出します(口で吸わないこと)。腹痛やじんましん、息苦しいなどの症状がみられたら、救急車を呼ぶなどして、早急に病院へ行く必要があります(アナフィラキシーショックは治療が遅れると死に至ることがあります)。
予防のためには、スズメバチを刺激する黒い色の帽子や服を避けること、ヘアスプレーや香水をつけないこと、巣には近づかないことなどが大切です。

一方、アウトドアでは、ケムシやブヨの被害も多くみられます。
ケムシには毒性の毛(針やとげ)をもつものがあり、そうしたケムシに触れたり、近づいたりすると、激しいかゆみや痛み、赤い湿疹などが生じます。首や腕に症状が出ることが多いのですが、患部をかくと、かえって症状が悪化しやすいので、かかないように注意し、石鹸と水で洗い流すようにしましょう。市販のかゆみ止め薬で治まってしまえばいいのですが、かゆみなどを繰り返す場合は皮膚科などを受診して下さい。
予防には、肌を露出しない服装をすることはもちろんですが、ケムシは葉裏などにいて気づきにくいので、樹木の茂った場所にむやみに入らないことも大切です。
もう一つのブヨは、吸血性のある小さなハエのような虫です(体長3~5ミリ前後)。川沿いなどに多く生息しているので、河原でのキャンプやバーベキューのときに、ブヨに刺されるケースがよくみられます。
ブヨが厄介なのは、刺されたときにはチクッとする程度で、症状もあまりみられませんが、翌日あたりに患部が腫れ上がり、強いかゆみや痛み、発熱などが生じることです。症状には個人差がありますが、1週間以上続いたり、さらには慢性化することもあるので、放置せずに早めに受診して適切な治療を受けることが大切です。
予防には、ブヨは足のすねなどに噛みつくことが多いので、かならず長ズボンをはき、裾を靴下の中に入れること。また、ブヨは朝夕の涼しい時間帯や曇りの日などに活動するので、小さなハエのような虫が飛び交っていたら注意しましょう。

虫の被害を予防するために

アウトドアでの虫による被害の多くは、軽装で出かけたり、虫を刺激したり、山野草を採りに草むらに入るなど、人の行動が原因となっていることが少なくありません。それだけに、事前に予防策をしっかりとっていれば、虫の被害の多くは予防することができます。
各章でも、虫ごとの予防策を少しずつ紹介しましたが、整理すると、次のようになります。

<服装の注意>

  • 白っぽい帽子をかぶる(スズメバチ対策のほか、樹上からのケムシなどの落下による被害を防ぎます)。
  • 長袖、長ズボンを身に着ける(黒色は避ける)。首にはタオルやネッカチーフを巻き、ズボンの裾は靴下の中に入れるか、長靴などの中に入れる(半袖、短パン、サンダルなどの軽装は絶対にしない)。
  • 手袋をする(素手で植物や土に触れない)。

<用意しておきたいもの>

  • 防虫スプレーや虫よけ剤を用意する(万全ではないが、一定の効果がある)。ただし、幼児への使用には制限があるので、かならず注意事項を守る。
  • 洋服などに付着した虫を除去するため、ガムテープなどの接着テープを持参する。
  • 応急処置用のかゆみ止め薬や絆創膏などを用意する。

<現地での注意>

  • 森林公園やキャンプ場などで指導員がいる場合は、虫が発生して危険な場所を聞いて確認しておく。
  • 樹木の茂った場所や草むらにはむやみに入らない。
  • スズメバチをみかけたら、姿勢を低くして静かに逃げる。
  • テントで宿泊する場合は、誘蛾ランプなどを少し離れた場所に置き、テント内への虫の侵入を少しでも防ぐようにする。
  • 洋服や靴、リュックなどをチェックし、虫が付着していないか確認する(とくに室内や車内に入るとき)。樹木の茂った場所や草むらで行動した場合は、上着やズボンを室内に持ち込まない。
  • 虫に刺された場合は、かかずに石鹸と水で洗い流し、かゆみ止め薬などで応急処置をし、症状が強かったり、悪化したりする場合は、放置せずに病院を受診する。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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