2015.12.10

vol.150 恐ろしい感染症に注意!

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Vol.150 恐ろしい感染症に注意!

「人食いバクテリア」なるものが流行しているといわれています。なんとも恐ろしい呼び名ですが、正式な病名は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」といい、インフルエンザやノロウイルス感染症などと同じ“うつる病気”、つまり感染症の一種です。では感染症に対応するには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。この時期、一番気をつけたいインフルエンザに関する情報などとあわせてお伝えします。

なぜ「人食いバクテリア」と呼ばれるのか

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、なぜ「人食いバクテリア」などという恐ろしい呼び名をつけられているのでしょうか。
感染した当初は手や足が痛みますが、外見上は特に変化のないことがほとんどです。しかし、徐々に赤くなったり水ぶくれができたりして高熱に見舞われることもあり、さらに進行すると手や足の筋肉が壊死するなど腐っていってしまいます。そんな状態を引き起こすから、人食いバクテリアと呼ばれているのです。そして3日以内にショック状態になり、多臓器不全から死に至るケースがあります。その致死率は30%近くになっていることも、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が恐ろしいものだと受け止められている理由の一つです。

日本における2012年の患者数は241人、2013年は201人、2014年は270人。患者は全国47都道府県で発生しています。合計712人のうち死亡者数は207人となっており、なんと致死率は29%。しかも2015年においては、11月1日までの患者数がすでに355人となり、大幅に増えてしまっているのです※1。

そもそも溶血性レンサ(連鎖)球菌(溶連菌)は、子どもにとって珍しいものではありません。主にのどの病気を引き起こし、急性咽頭炎などを発症するのですが、全国の小児科から毎週患者数が報告されているほどです。小児では20%前後、成人でも2~3%程度は、のどに溶連菌を持っているといわれています。
しかし、溶連菌がのどの粘膜や傷口から体内に入ると重症化することがあります。残念ながら現時点では、なぜ“劇症型”になるのかという理由はわかっていません。血液中や通常ならば菌の存在しない臓器から検出された場合、劇症型となってしまう危険性が高まるといわれています。
現在ワクチンはなく、抗生物質による治療以外に対処法はありません。また、溶連菌が手足などに侵入して壊死が始まってしまった場合には、切断してそれ以上の転移を防がなければならない点なども、不安を増幅させる要因となっています。

では、劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対応するには?

劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対応するために行うべきなのは、まず手洗い、うがいなどです。そして、家族に感染が疑われる場合などには、タオルやコップなどの共有を避け、洗濯や殺菌を徹底しましょう。
また、劇症型を引き起こしている多くのケースが手足の傷口からの感染ですので、傷口がある場合は清潔に保つ努力が必要です。虫に刺された部位を掻きむしったりして、傷口を増やしたりすることはやめておきましょう。さらに、水虫の部位からの感染例もあるといわれていますので、水虫の治療を適切に行うことも、危険性を減らす要因と考えられます。

重要なのは、免疫力を落とさないことです。30歳以上が感染しやすいといわれていますが、なかでも高齢者や糖尿病患者など、免疫力の落ちている人が劇症型になる場合が多いとのことです。さらに、妊婦の方で劇症型となった例の報告もありますので、妊娠中の方は特に注意が必要です。
免疫力を落とさないようにするには、腸内環境を悪化させないように気をつけることが一番です。人の免疫の60~70%が腸にあるといわれています。腸内環境を良好に保つことが、免疫力を維持する基本中の基本です。
また、バランスのとれた食事、質のいい睡眠、適度な運動は、免疫力を保つために重要です。後で述べるように、免疫力が逆に作用することがないわけではありません。しかし、それはあくまで例外です。劇症型溶血性レンサ球菌感染症に限らず、ほとんどの病気の重症化を防ぐには、免疫力を落とさないことが基本です。

ちなみに「人食いバクテリア」と呼ばれているのは溶血性レンサ球菌だけではなく、ほかにもいくつか存在します。なかでもビブリオ・バルニフィカスは、傷口から感染した場合に皮膚を破壊し潰瘍を作ったり、免疫の弱まった人の場合は敗血症を起こしやすいといわれています。壊死性筋膜炎などを起こし、人体を破壊する様子から、人食いバクテリアの一つに数えられているのです※2。健康な人でもビブリオ・バルニフィカスで汚染された海産物を生で食べた場合に嘔吐や腹痛、下痢を起こすことがあるので、注意が必要です。

※1 国立感染症研究所 「IDWR速報データ2015年第44週」より

※2 横浜市衛生研究所 「横浜市感染症情報センター」より

インフルエンザをきっかけに死亡する人は毎年1万人以上

人食いバクテリアより私たちの間で身近な感染症が、インフルエンザです。なかでも日本では11月ごろから翌年4月ごろにかけて流行する季節性インフルエンザは、毎年私たちを悩ませます。ちなみに症状が少し似ているために、風邪とインフルエンザの区別がつきにくいことがありますが、全く別のものです。
風邪は、アデノウイルスやコロナウイルスなどさまざまなウイルスによって起こります。多くの場合、これらのウイルスがのどや鼻の粘膜に感染し、くしゃみや鼻水、鼻づまりを引き起こします。発熱しても微熱の場合が多く、合併症を引き起こすことはほとんどありません。
一方、インフルエンザは風邪と異なり、主な症状は頭痛や全身痛のほか、高熱が3~4日間続きます。熱は38~40度になることが多く、肺炎やインフルエンザ脳症といった合併症の危険性もあります。

高齢者がインフルエンザから肺炎になると危険を伴います。インフルエンザウイルスそのものが肺炎を起こすわけではありませんが、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などが感染することで起きる肺炎が、高齢者の死亡の大きな原因となっているのです。どうしてインフルエンザがきっかけになり、細菌性の肺炎につながってしまうのかという理由は、明らかになっていません。しかし、インフルエンザによって気管支が異物を排出する機能が阻害されてしまうことで細菌に感染しやすくなってしまったり、免疫力が低下してしまうことなどが理由として考えられています。
また、子どもの場合に気をつけなければならないのがインフルエンザ脳症です。インフルエンザウイルスに感染すると、体に過剰な反応が起こることで脳が浮腫になってしまうケースがあるのです。脳の浮腫によって体の麻痺や意識障害が起こり、死亡する危険性も出てしまいますので注意が必要です。

人に感染するインフルエンザウイルスは、大きく分けてA型、B型、C型の3種類があります。このうちA型インフルエンザウイルスにはH1型からH15型まであり、日本ではH1N1(2009)とH3N2(香港型)という2種類と、B型の3種類が流行を繰り返しているといわれています。
2009年にメキシコではやり始めたインフルエンザH1N1は、すぐにアメリカでも流行し、日本を含めて世界中に広がってしまいました。複数の国や地域にまたがって多くの患者が発生する大規模な流行のことをパンデミックといいますが、このときも2009年6月にWHOがパンデミックを宣言しています。
また、日本では2013~14年にインフルエンザH1N1(2009)が、そして翌シーズンの2014~15年にインフルエンザH3N2(香港型)が主に流行しました。

インフルエンザの発症や重症化を防ぐためには、ワクチンの接種が有効といわれています。人間の体には、一度ウイルスに感染すると、のちに同じウイルスに感染したときに排除する働きを持つ「抗体」が作られます。これが免疫システムの一つです。しかし型の異なるウイルスに感染した場合には抗体が働いてくれません。だからワクチンの接種を受けたからインフルエンザに絶対かからない、というわけにはいかないのです。
インフルエンザのワクチンは、WHOが発表する内容をもとに日本の専門家たちが分析し、毎年どの種類のウイルスに対応するかを決めています。流行すると予想されるウイルスをワクチンに採用することで、大きな流行になるのを防ごうというわけです。
2015年はA型2種類、B型2種類の計4種類のウイルスに対応したワクチンが採用されています。2014年までは、A型2種類、B型1種類の3種類に対応していたのですが、2015年からは対応できるウイルスの種類を増やし、予防効果を高める狙いが行われています。

インフルエンザウイルスが体内に入ると細胞内で増殖し、次々にほかの細胞へと感染していきます。これに対抗して、体内の免疫細胞がインフルエンザウイルスを攻撃します。このときに炎症が起こります。炎症が広がっていくと発熱を起こしたり、体がだるくなったりしてきます。つまり熱が出るのは、体の免疫細胞がウイルスの増殖を抑えようと闘っている証拠です。
このように、インフルエンザウイルスの増殖を止め、殺してしまうことが治療のポイントなのですが、これまでの治療薬はウイルスを細胞内に閉じ込めることなどによって増殖を止めるだけで、ウイルス自体を殺すことはできませんでした。しかし、現在開発されている治療薬は、ウイルスを細胞の中で死滅させることができ、1日で治療できるようになると期待されています。早ければ2018年には実用化されるといわれています。

ワクチン以外ではうがいや手洗い、マスクの着用が重要です。多くのマスクは、サイズが小さくウイルスの侵入を防ぐことができないといわれています。しかし、ウイルスは単独で浮遊するのではなく、多くの場合、くしゃみや咳の飛沫に含まれて空中に広がります。マスクは、くしゃみや咳の飛沫からは一定程度防御できるため、電車に乗るときや人ごみに入る場合に着用することをお勧めします。
また、くしゃみや咳の飛沫は前方へ2m程度飛ぶといわれています。例えば映画館などで咳をしている人がいた場合、その人の前の席を選ぶことはやめておきましょう。もちろん2m以上離れた席を選ぶことも忘れずに。

変異を続けるインフルエンザウイルスの脅威

パンデミックとして一番有名なのが、1918~19年に世界中で流行したスペイン風邪です。世界の人口の25~30%が感染し、4000万人以上もの人が亡くなっています。原因となったのはインフルエンザウイルスで、型はH1N1でした。
このときには、体力が十分にある若い人の多くも命を落としています。もちろん感染者数が多かったことも、その大きな理由の一つでしょう。しかしそのほかに、体内で過剰な炎症反応が起こってしまったことも理由として挙げられています。こういったことは珍しいのですが、免疫力があるがゆえに、過剰な炎症が自分の体を傷つけてしまったと考えられているのです。

毎年冬に流行する「季節性インフルエンザ」、渡り鳥によって運ばれニワトリなどが感染し、それが人に伝染してしまう「鳥インフルエンザ」は、ともにA型の亜型です。
鳥インフルエンザは1997年に初めて人への感染例が報告されました。それが「高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1」です。また、2013年に中国で人への感染が報告された鳥インフルエンザはH7N9という型で、致死率が30%を超えるといわれています。
鳥インフルエンザウイルスは、アラスカやシベリアの湖にいるカモなどの渡り鳥によって南へ運ばれるといわれています。このときにカモは感染していても発症せず、糞便を介してほかの水鳥などに感染させます。そのウイルスが、集団で飼育されているニワトリに感染したときに重大な被害が起きてしまいます。ニワトリの間で増殖しやすいように、ウイルス自体が変異してしまうからです。

インフルエンザウイルスの遺伝子はRNAといい、人の遺伝子のDNAよりはるかに変異しやすいのが特徴です。しかも、ウイルスが細胞内で増殖するときに遺伝子のコピーミスを起こしやすく、そのため突然変異を起こしてしまいます。すると、通常鳥にしか感染しないウイルスが、人に感染しやすい性質を持ってしまうことがあるのです。
2009年に世界で流行したときのH1N1ウイルスは、北米地区の鳥のウイルスと人のウイルスが交雑したものに北米の豚のウイルスが混ざり、さらにユーラシア大陸の豚のウイルスが混ざることで出現した「豚由来インフルエンザ」であると、遺伝子の解析から判断されています。
このように新しいインフルエンザウイルスの場合、人は免疫を持っていません。そのため感染した人が発症し、さらに感染を広げる危険性が非常に高く、パンデミックとなってしまうと考えられています。

インフルエンザ以外で注意したい感染症

インフルエンザ以外にも、冬場に注意しなければならない感染症があります。

2015年秋口から感染者が増えているのが、「RSウイルス感染症」です。呼吸器系の感染症で、乳幼児に肺炎を引き起こしたりします。RSウイルスは世界中に分布しており、以前は冬に感染者が増えるのが特徴でした。しかし2011年以降は、夏ごろから感染者の増加がみられて流行の時期が長くなっています。現在ワクチンなどはありません。くしゃみなどの飛沫や接触で感染するため、子どもにはうがいや手洗いを徹底させるほか、子どもが触れる場所をアルコールで消毒したりする必要があります。

2015年の秋以降、「エンテロウイルス」の感染症に対する注意喚起がなされています。エンテロウイルスは、子どもに多い手足口病の原因となるエンテロウイルス71型と同じ類のウイルスです。
なかでもエンテロウイルスD68という型に感染した場合、軽度な場合は発熱や鼻汁、重度の場合は喘息のような発作から肺炎など呼吸器疾患を引き起こします。アメリカでは2014年に1000人以上が感染し、14人が死亡したとされています。また、日本でも体の麻痺を起こした患者からD68が検出された例があり、弛緩性麻痺との関連も疑われています。飛沫感染が多いといわれていますので、RSウイルスなどに対応するのと同様、うがいや手洗い、マスクなどを徹底することが重要です。

2015~16年の冬に大流行する危険性があるといわれているのが、「ノロウイルス」による感染性胃腸炎です。その理由は、遺伝子配列の異なる新型のウイルスが発見されたからといわれています。インフルエンザなどと同じく、新型のウイルスに対しては、誰も免疫を持っていません。そのため感染しやすく、重症化する心配もあるのです。
ノロウイルスに感染した食品を摂取することで感染する以外に、空気感染、感染者の嘔吐物や排泄物に触れることでも感染します。また、ノロウイルスに対しては、熱湯消毒やアルコール消毒も効果が低いとされています。そのため、水で洗い流すように十分な手洗いをするのが一番の対処法だと考えられます。
また、感染者の嘔吐物が付着した場合などに対しては、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で消毒した後、洗剤を使って掃除することが勧められています※3。なお、次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させますので、金属部分に使用したら5分~10分後には水洗いが必要です。また、酸が添加されpHが7以下になるなどの使用状況では塩素ガスを発生するため※4、「使用上の注意」を確認するなど気をつけましょう。

いずれにせよ、これらの感染症に対応するには、マスクや手洗い、うがいなどの防御を行うことや免疫力を落とさないようにすること。そして感染が疑われる場合には、周囲にうつさないようにすると同時に、医療機関を受診することです。特に劇症型溶血性レンサ球菌感染症の場合は、時間との闘いとなります。少しでも早い対処が必要なのです。

※3 厚生労働省 「ノロウイルスに関するQ&A」より

※4 日本ソーダ工業会 「安全な次亜塩素酸ソーダの取扱い」より

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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