vol.157 健康を気にする人の油の選び方

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今の時代、スーパーの油売り場には、なたね油、大豆油、米油、コーン油、ごま油、亜麻仁油、えごま油など、数多くの油製品がずらっと並んでいます。「健康のために油に気をつけたいけれど、どれを選んでいいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。それぞれの油の種類、摂るべき油、控える油を知って、健康のため体にいい油を効果的に摂っていきましょう。

脂質は「悪者」ではない

油に対して、「摂ると太る」「体に悪い」など、ネガティブなイメージを持っていませんか?もちろん、油(栄養学では「脂質」と呼ばれます)を多く摂り過ぎれば中性脂肪として体内に蓄積されて肥満となり、生活習慣病の原因となってしまいますが、単に控えればよいというわけではありません。なぜなら脂質は、炭水化物やたんぱく質と並ぶ三大栄養素のひとつであり、私たちが生きる上で欠かせない大切な栄養素だからです。脂質は主要なエネルギー源であるほか、細胞膜をつくるために必要不可欠な成分であり、食品に含まれている脂溶性ビタミン(A、D、E、K)やカロテノイドなど栄養成分の吸収をサポートする役目も持っています1)

vol.157 健康を気にする人の油の選び方

脂質は多すぎても少なすぎても健康に悪影響

食事で脂質を摂る時に気をつけたいのが、その割合です。「日本人の食事摂取基準」では、1日に必要なエネルギーに占める脂質の割合は20~30%(成人の場合)が目標であるとされています2)3)。例えば、30〜49歳の男性の1日の推定エネルギー必要量は2,700kcal、女性の場合は2,050kcalですので(身体活動レベルが「ふつう※」の場合) 2)、男性は540〜810 kcal、女性は410〜615 kcalを脂質から摂ることが目標となります。つまり、食事から摂る脂質は多すぎても少なすぎてもダメで、適量を摂取する必要があるということなのです。

※ 身体活動レベル「ふつう」とは、日常生活の内容が、座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合

脂質の中には摂らなくてよいものと積極的に摂るべきものがある

また、脂質の種類にも気をつけなければいけません。脂質は、構成要素である脂肪酸によっていくつかの種類に分けられますが、大きくは「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」との2つに分けられます。

【表】脂肪酸の種類と構成

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より作成

●飽和脂肪酸ってどんなもの?

飽和脂肪酸を多く含む食品の代表は、肉の脂やバターです。生活習慣病に深く関係しているため、飽和脂肪酸を多く摂りすぎると肥満になりやすいほか、高 LDL コレステロール血症などの脂質異常症や心筋梗塞などの循環器疾患を発症しやすくなります2)。総エネルギーの中で、飽和脂肪酸の目標量は7%以下とされています2)。食事から摂る脂質は総エネルギーの20~30%とされていますので、脂質のなかでも飽和脂肪酸は4分の1~3分の1以下にとどめるのがよいということになります。

〈こぼれ話:ココナッツオイルは健康にいいって本当?〉

実はココナッツオイルには、飽和脂肪酸が多く含まれています。それにもかかわらず、さまざまな健康効果が期待されています。その大きな理由は、ココナッツオイルには中鎖脂肪酸(MCT)が豊富に含まれているからです4)
飽和脂肪酸は、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸の3種類に分けられます。一般的に飽和脂肪酸を摂取しすぎると生活習慣病の原因になるとされていますが、中鎖脂肪酸は消化・吸収が速く、エネルギーとして燃焼されやすいため、体脂肪として蓄積されにくいという性質があります6)。そのため、健康を気づかう人の間でココナッツオイルが注目されているのです。
ちなみに、ココナッツオイルの効果として、「アルツハイマー病の人にココナッツオイルを投与すると認知機能が改善した」という研究報告もあり、一時期メディアで話題になりました5)。ただ、ココナッツオイルなどのMCTオイルについて、現時点では効果を期待しすぎてもいけません。まだ健康な人が摂取した場合の効果や影響までは明らかになってないため、食用油の代わりとして摂取するような食習慣は勧められないとされています6)

●不飽和脂肪酸ってどんなもの?

不飽和脂肪酸は、植物油や魚介類に含まれている油です。植物油の中で、パーム油(アブラヤシの果実から採れる油)やココナッツオイルには飽和脂肪酸が多く含まれていますが、それ以外の植物油の多くには、不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
飽和脂肪酸やオメガ9(n-9)系脂肪酸は体内で作れますが、オメガ6(n-6)系脂肪酸(以下オメガ6)やオメガ3(n-3)系脂肪酸(以下オメガ3)は体内で作り出すことができないため、「必須脂肪酸」といわれ、食事で摂る必要があります2)

必須脂肪酸「オメガ3」「オメガ6」を効率的に摂るには

食事で摂る必要のある「必須脂肪酸」は効果的に摂っていきたいところです。理想的なオメガ3とオメガ6の比率は、1:2だとされていますが、日本人の現状としては1:5と、オメガ6の摂取割合が大きくなっています2)。大規模な疫学調査(久山町研究)によると、血液中のオメガ3:オメガ6の比率が1:2程度までは心疾患の死亡リスクが低く抑えられていますが、それを超えてオメガ6の方が多くなると死亡リスクが高まると報告されているため7)、健康のためには必須脂肪酸のバランスが大切だといえます。
理想的な比率に近づけていくためには、不足しがちなオメガ3を食事の中で積極的に摂り入れていく必要があります。オメガ3のEPAやDHAは、魚介類(魚および甲殻類)に多く含まれています。また、オメガ3の異なる種類であるα-リノレン酸は、亜麻仁油やえごま油、チアシードや黒クルミなどの食物にも含まれています8)
魚の中でも、いわゆる「青背の魚」と呼ばれるマグロ、ブリ、サンマには、DHAとEPAがたくさん含まれているためオススメですが9)、魚が苦手な方やなかなか魚を食べる機会がないという人は、亜麻仁油やえごま油などを食事にとり入れてみるのも良いでしょう。

〈知っておこう:亜麻仁油やえごま油を取り入れる際の注意点〉

オメガ3の油は光と熱に弱く酸化しやすいという特徴があります。そのため、揚げ物や炒め物などの加熱調理には向いていません。また、開封してから時間が経った場合や、遮光せず高温になるところに保存した場合にも劣化してしまう可能性があります10)。商品に記載されている保存方法や注意事項をよく確認し、開封後はなるべく早めに使い切るようにしましょう。

【表】オメガ3とオメガ6摂取の目安量

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より

健康のためには脂質もバランスよく

健康のために体によい油を摂ろうとするあまり、オメガ3の油などをいつもの食事に加えてしまうと、脂質全体の過剰摂取になる可能性があります。健康の維持・増進のためには、さまざまな種類の脂肪酸を魚介類、肉類、植物油などからバランスよく摂るようにしましょう10)
まずは、「脂質は適量」を心がけることです。そして、肉や乳製品など動物性の飽和脂肪酸に偏ることなく、青魚を食べる機会を増やす、料理に使う油を植物油にするなど、食生活で摂取する脂肪酸の種類にも気をつけながら、少しずつ見直していけるとよいでしょう。

<参考資料>

  1. 農林水産省「トランス脂肪酸に関する情報」
    https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/index.html
  2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
  3. 農林水産省「脂質による健康影響」
    https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_eikyou.html
  4. Hewlings S, et al.; J Cardiovasc Dev Dis. 2020 Dec; 7(4): 59.
  5. Doty L. Clinical Practice 2012; 1(2): 12-17.
  6. Liu MY, et al. Neurol Res. 2017 Jun; 39(6): 573-80.
  7. 都築 和香子; 日本食品科学工学会誌. 2019 66 (11) : 440-1.
  8. 厚生労働省「eJIM」オメガ3系脂肪酸
    https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/10.html
  9. 日本脂質栄養学会「オメガ3-食と健康に関する委員会」
    http://jsln.umin.jp/committee/omega2.html
  10. 独立行政法人 国民生活センター 報道発表資料「見た目だけでは分からない、えごま油の品質」
    https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20160128_1.pdf

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