2018.03.09

vol.177 難聴で認知症に? 加齢性難聴は早期に対策を

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Vol.177 難聴で認知症に? 加齢性難聴は早期に対策を

加齢性難聴は高齢になってから発症するものだと思っていませんか?「聞こえ」の老化は、実は20代から始まっているともいわれ、40歳を過ぎると聴力は徐々に低下するといわれています。加齢性難聴は個人差が大きく、早く始まる人もいれば、70~80歳になってもよく聞こえる人もいます。一般的には、50代になると小さい音や高い音が聞こえにくくなるようです。60代後半では、男女とも半数近くが加齢性難聴であるという調査結果も出ています(※1)。
最近では、難聴は認知症のリスクの1つだという論文が権威ある雑誌の委員会から発表され注目されました。加齢性難聴を治すことはできませんが、補聴器を正しく使用して「聞こえ」の機能を失わないことが生活の質を保ち、認知症の予防にもつながります。

加齢性難聴は少しずつ進行し、気がつきにくい

加齢性難聴は感音難聴に分類され、音の伝わる経路全体の働きが悪くなることで起こります。音を感じるセンサーは、中耳にあるカタツムリのような形をした「蝸牛細胞」の中にある「有毛細胞」です。この有毛細胞が、年齢を重ねるにつれて折れたり曲がったりすることが、加齢性難聴の原因の1つとして考えられています(※2)。
有毛細胞は高い音を感じる順に蝸牛の入り口から並んでいるため、加齢性難聴は高い音から聞き取りにくくなります。音の高さは、周波数で示しHz(ヘルツ)という単位を使い、数字が大きければ大きいほど高い音になります。子どもが聞くことができる周波数は20Hzから20,000 Hzまで、成人になると16,000 Hzまで、高齢者では5,000 Hzまで低下します(※3)。
若い人しか聞こえない「モスキート音」という言葉をご存じですか? 英語で蚊のことを「モスキート(mosquito)」と言いますが、ブーンと蚊が飛んでいるような高い音のことを「モスキート音」といいます。成人のほとんどが、18,000 Hzのモスキート音は聞こえないといわれています。
加齢性難聴は、老化に伴い少しずつ進行するため気がつきにくいのが特徴です。分かりやすいチェック方法は、テレビのボリューム。以前よりも音量を上げるようになったり、家族からテレビの音がうるさいと言われたりしたら、加齢性難聴の可能性があります。
また、細かいチェックポイントとしては、高い音や小さい音が聞こえるかどうかです。ピピッという電子音、携帯電話の着信音が聞こえない、女性や子どもの声が聞き取りにくい、さ行、か行、は行の聞き分けが難しい、このような症状があれば耳鼻科を受診して聴覚検査を行うといいでしょう(※2)。

うつや認知症の原因になることも

加齢性難聴は生活の質を落とす原因になるだけではなく、うつや認知症の原因にもなることが分かっています。米国の数百人規模の調査によると,語音聴力の低下と脳機能低下アルツハイマー病発症率の上昇とが関係することが明らかになっています。日本においては、65 歳以上の 580 人に 3 年間の追跡調査を行い,加齢性難聴がうつの発症率増加につながることが分かっています(※1)。
また、2017年にランセット国際委員会は、「難聴が認知症のもっとも大きな危険因子」と発表しました。ランセット国際委員会とは、世界5大医学雑誌といわれる「ランセット」に掲載された論文を分析・評価する専門家組織です(※4)。
加齢性難聴によりコミュニケーションが減ると、会話によって脳に入ってくる情報が少なくなります。それが脳の機能の低下につながり、うつや認知症につながるのではないかと考えられており、早めの対策が必要です。

補聴器を利用して、「聞こえ」の機能の回復を

声や音が聞き取りにくくなったら、耳鼻咽喉科で加齢性難聴かどうか診断を受けることが大切です。加齢性難聴は治すことはできませんが、補聴器を利用して聞こえを改善することができます。そのまま難聴を放置していると、コミュニケーションが減り、脳機能や生活の質の低下につながります。また。補聴器にはいろいろな種類があるので、医師や専門家に相談して使いやすいものを選ぶといいでしょう。
難聴が軽度なうちに補聴器を使い始めることで、コミュニケーションに支障をきたすことなく生活ができ、うつや認知症の予防にもつながります。日本は欧米と比較して、難聴者の補聴器の利用率が低いというデータがあります(※5)。日本では補聴器に抵抗を感じる方も多いのかもしれませんが、聞こえを改善することがこれから先の健康、そして人生に影響します。
補聴器は、めがねのようにかけたらすぐに見えるものではなく、慣れるまで2~3ヶ月かかります。あきらめずに使い続けることも大切です。

【参考図書】

※1 増田 正次:日本老年医学会雑誌 51巻 1 号(2014:1)高齢者の難聴 増田 正次

※2 「NHKきょうの健康 不調スッキリ解消法」主婦と生活社 NHKきょうの健康制作班 主婦と生活社ライフ・プラス編集部[編]

※3 山内昭雄・鮎川武二/共著:「感覚の地図帳」講談社

※4 Dementia prevention, intervention, and care
www.thelancet.com Published online July 20, 2017

※5 日本における難聴や補聴器装用の実情調査「JapanTrak(ジャパントラック)」

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