vol.180 寝たきりリスクが高くなる「フレイル」って何?

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超高齢化社会に突入した日本。内閣府が発表した「平成29年版高齢社会白書」(※1)によると、65歳以上の高齢者人口は3,459万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は27.3%に達しました。我が国の65歳以上の高齢者人口は1950年には総人口のわずか5%に満たなかったのですが、1970年に7%を超え、さらに、1994年には14%を超えました。2016年には27.3%となり、国民の約3.6人に1人が65歳以上の高齢者となりました。
要介護状態を予防するため、ロコモティブシンドローム、サルコペニア対策が広く知られてきましたが、2018年から国が対策に取り組んでいるのが「フレイル」です。

vol.180 寝たきりリスクが高くなる「フレイル」って何?

フレイルとは「虚弱」という意味

フレイルとは「加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態」のことをいいます。(※2)日本には「年をとって心身が衰えること」、いわゆる「老衰」という言葉がありますが、これはフレイルの概念に近いものがあります。
老衰ならば仕方ないのでは? と受け取ってしまいますが、実は健康から要介護の間に位置するフレイルに適切な介入や支援をすることで、生活機能の維持・向上が可能であると考えられています。(※2)内閣府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2016」にも高齢者のフレイル対策の推進があがっており、国をあげての対策が進行中です。
また、フレイルは病気との合併も注目されています。以下の4つの病気は、それぞれの病気を患っている場合、その病気のない人に比べて、どれだけフレイル状態を合併しやすいかを示しています。

呼吸器病 1.78倍
心血管疾 2.21倍
抑うつ症状 4.73倍
貧血 2.47倍

この中で2つの疾患が重なると飛躍的にフレイルを合併するパターンが報告されており、特に注意が必要です。(※3)

サルコペニア、ロコモティブシンドローム、閉じこもりはフレイルを招く状態

実は1990年代には研究者の中では概念がまとまっており、2000年にはすでに、アメリカの研究グループによりフレイルが定義づけられていました。以下の5項目の中の3項目が該当すればフレイル、2項目が該当すればフレイルの前段階と定義しています。(※4、5)

①体重減少:意図しない半年間で2~3kg以上の減少
②疲労感:(この2週間に)わけもなく疲れた感じがある
③活動量の低下:散歩などの運動を週1回以上していない
④歩行速度の遅延:以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思う
⑤筋力の低下:握力測定(男<26kg、女<18kg)

近年、要介護を防ぐために、サルコペニアやロコモティブシンドロームという言葉が知られるようになりました。サルコペニアとは加齢に伴う筋肉量と筋力、身体機能(とくに移動などの運動障害)が低下すること、ロコモティブシンドロームとは、移動に関わる運動器(骨、関節、筋肉)にさまざまな原因のため障害が起こり、日常生活に影響がでている(または出つつある)状態のことです。(※3)これらを放っておくと、フレイルを招き健康寿命を縮める可能性が高くなります。サルコペニアやロコモにより歩行機能が低下すると外出する機会が減り、寝たきりに移行し、死亡率があがるという研究結果もあります。(※3)
また、高齢者の閉じこもりもフレイルを引き起こす危険性が高いと推測されています。

栄養、運動、社会参加がフレイルの予防に

フレイルの予防は、栄養と運動と社会参加です。まずは栄養について進めていきましょう。タンパク質とビタミン類の摂取が少ないと約2倍もフレイルの危険性が高まるといわれています。ビタミン類ではD、E、C、葉酸が必要とされています。(※3)
タンパク質は高齢者に特に不足しやすい栄養素なので十分に摂ることが必要です。肉か魚を1日2品、卵か豆腐を1日1品、偏りがないように摂るのがポイントです(※4)。
また、運動を行うことでフレイルを予防することができます。ウォーキング、水泳や水中歩行、筋肉トレーニング、ストレッチなど運動には様々なものがあり、それぞれの身体症状に合った運動を選択することが大切です。筋力トレーニングなどは「きつい、ややきつい」と感じる運動を週2~3回実施すると効果があるといわれています。(※3)
そして、閉じこもりを予防するためには楽しみを持ち、外出する機会を作りましょう。フレイルの予防に関しては、地域のサービスや情報、医療機関サービス、医薬品・医療機器メーカーのWEBサイトなども利用してみましょう。

※1 総務省 情報通信白書

※2 厚生労働省保健局高齢者医療課「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進について」

※3 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「健康長寿教室テキスト」

※4 33) Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al. Cardiovascular Health Study Collaborative Research Group. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146─56.

※5 葛谷雅文「日内会誌 104:2602~2607、2015」

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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