vol.186 忘年会シーズンはお酒の飲み過ぎにご注意を
ヘルシーライフ
忘年会や新年会など、年末年始は飲酒の機会が増えてきます。お酒の飲み過ぎは体に悪いとわかっていても、飲酒の回数が増え、深酒に陥りやすい季節です。しかし、飲酒は精神疾患、心血管疾患、肝硬変、がんなどの主要な危険因子であることがわかっています(※1)。また、WHOの報告によると、本人の健康だけでなく交通事故や暴力、自殺なども含め、飲酒に関連した死亡はすべての死の3.8%を占めると報告されています(※1)
年末年始は飲酒の影響を再確認し、お酒の飲み過ぎに注意しましょう。

お酒の飲み過ぎは寿命を縮め、重大な病気の引き金に
忘年会や新年会など、年末年始は飲酒の機会が増えてきます。お酒の飲み過ぎは体に悪いとわかっていても、飲酒の回数が増え、深酒に陥りやすい季節です。しかし、飲酒は精神疾患、心血管疾患、肝硬変、がんなどの主要な危険因子であることがわかっています(※1)。また、WHOの報告によると、本人の健康だけでなく交通事故や暴力など、自殺なども含め、飲酒に関連した死亡はすべての死の3.8%を占めると報告されています。2010年には「アルコールの有害な使用を提言するための世界戦略」がWHO総会において採決され、世界的にも飲酒の低減が呼びかけられています(※1)。年末年始は飲酒の影響を再確認し、お酒の飲み過ぎに注意しましょう。
わが国では生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日の純アルコール摂取量で男性40g、女性20g以上としています。純アルコール量はワイン1杯(120ml)で12g、ビール中瓶1本(500ml)で20g、清酒1合(180ml)で22g、焼酎1合(25度 180ml)で36gとしています。女性は男性に比べてアルコールによる肝臓障害を起こしやすく、アルコール依存症になる期間も短いと報告されています(※2)。
また、世界19カ国からおよそ60万人の飲酒者の飲酒習慣と健康を比較検討した研究によると、週に純アルコール量200g以上の習慣的な飲酒は、寿命を1~2年縮め、週当たり360gを超えると寿命を4~5年の縮めることがわかっています(※3)。
アルコールは習慣性のある飲み物です。飲酒の低減化に成功している人でも、度重なる飲み会がきっかけで再び習慣化するある恐れもあり注意が必要です。
飲酒は副次的な健康被害や社会的な影響も
飲酒そのものが健康被害を引き起こすだけでなく副次的な健康被害もあると報告されています。米国の研究によると、飲酒をすると眠る前に何かを食べる可能性が高いことが明らかになりました。特に塩味のスナックやピザなどジャンクフードを選ぶ可能性が高いと報告しました。緑黄色野菜など健康的な食品は少なかったとしています(※4)。
日本でもお酒を飲んだ後に、ラーメンを食べるなど「シメ」の習慣があります。飲酒により塩分過多、カロリーオーバーといった生活習慣病のリスクが高くなる食品を選ぶ傾向が、米国の研究と同じようにあるようです。アルコールだけでなく、このような副次的な健康被害も再認識しておきましょう。
また、飲酒は交通事故や暴力など社会的な悪影響の危険因子でもあります。酒に酔ってふらついたり、路上に寝そべって車と接触する、いわゆる路上寝こみによる交通事故が各地で報告されています。
暴力も問題です。飲酒をすると、脳が攻撃的になることも研究で明らかにされています。低用量のアルコールでも、脳の攻撃性を調節して抑えている部分の働きが変化すると報告されています(※5)。
理性があるうちに、自分への約束事を決めておく
血中アルコールの濃度が高くなると、「お酒に酔う」という状態になり、顔が赤くなる、おしゃべりになり声が大きくなるなどの変化が現れます。このとき脳の中では、理性や判断をつかさどる大脳皮質の活動をコントロールしている部分がまひしています。さらに視力が低下し知覚や運動能力に影響します。
飲酒は少量でも理性をなくす可能性があり、お酒を飲み始めると少量にとどめることが難しくなります。お酒を飲み過ぎないためには、飲酒をしていない状態、つまり理性がしっかり働いているときに自分への約束事を決めておきましょう。
忘年会に出席する回数を少なくする、二次会には出席しない、帰る時間を決めて家族に迎えに来てもらう、帰りの電車を決めて有料の座席をとっておく、早く閉店する店で飲むなど回数や時間的な制限を自分に合った方法で考えておきましょう。所持する現金を一次会の分だけにするなど物理的な方法も有効かもしれません。
また、体内へ入れるアルコールの量を減らすためには、以下を実践するといいでしょう。
- 1.ゆっくり飲む
- 2.食べながら飲む
- 3.合間に水を飲む
- 4.濃いお酒は薄めて飲む
- 5.ちゃんぽんはしない
- 6.できるだけ小さいグラスで飲む
(※6)
気の合った仲間たちとお酒を飲む時間は、大変楽しいものです。しかし、それは健康があってのこと。お酒で健康を害してしまっては、仲間との楽しい時間も過ごせなくなります。飲酒の健康被害を認識した上で、自分に合った健康的な飲み方のスタイルを考えてみましょう。
(※1)WHO: EB115/37, Public health problems caused by alcohol, reported by the secretariat, 2004
(※2)厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会、次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」
(※3)VOLUME 391, ISSUE 10129, P1513-1523, APRIL 14, 2018
Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies
(※4)Kruger, J., Glassman, J., Knippen, K., Glassman, T., Kruger, D.J./ Californian Journal of Health Promotion 2018,Volume 16, Issue1, Pages 79-90.
The Drunchies Hangover: Heavy Episodic Drinking and Dietary Choices while Drinking and on the Following Day
(※5)Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience April 2018, Volume 18, Issue 2, pp 203–215
The neural correlates of alcohol-related aggression
(※6)公益社団法人アルコール健康医学協会「NEWS & REPORTS」vol18
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