血圧の正しい測り方を知ろう
わが国において高血圧症は4300万人いると推定され、その中でも血圧をコントロールしている人はわずか1200万人です。その他は自分が高血圧であるか知らない人が1400万人、知っていながら治療していない人が450万人、治療しても降圧目標に達しない人が1250万人います。現在、世界の7割が生活習慣病がきっかけとなった病気で死亡しており、その中心は高血圧です。※1) まずは自分の血圧を正しく知ることが重要です。今回は家庭血圧の正しい測り方をご紹介します。

家庭血圧測定の重要性
血圧は1日の中で変動し、睡眠、起床、食事、入浴、運動など行動や環境によって変化しています。そのため、診察室で測定する血圧だけでなく、家庭で測定する家庭血圧が重要視されています。
家庭血圧は、医師の指示の下で正しく測定すれば診察室血圧と同等か、それ以上の臨床的価値があると評価されています。何よりも、自分が高血圧かどうか知ることができます。すでに高血圧と診断され血圧をコントロールしている場合は、降圧薬治療による過剰な降圧や不十分な降圧を知ることができます。日本高血圧学会の基準では、診察室血圧では収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、家庭血圧では収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上を高血圧としています。一般的に家庭血圧の方が低くなる傾向があるため、このような基準となっています。
また、医療機関で測った診察室血圧だけでは、わからない以下のような高血圧もあります。
- 1)白衣高血圧
診察室血圧が高血圧であっても、診察室外血圧が高血圧ではない状態のこと。必要に応じて家庭血圧や自由行動下血圧を測定して医師が診断する。 - 2)仮面高血圧
- ・早朝高血圧
診察室血圧が140/90mmHg以下でも、家庭で測定した早朝の血圧が平均して135/85mmHg以上を早朝高血圧という。夜間高血圧からの移行と朝方に急激に上昇するサージタイプがある。軽度のモーニングサージは生理現象。
- ・夜間高血圧
夜間の平均血圧が120/70mmHg以上の場合を夜間高血圧という。夜間は通常血圧が下がるが、夜間高血圧は下がらないため血管の柔軟性が夜間に回復できない。
- ・昼間高血圧
診察室血圧が正常でも、職場や家庭でストレスにさらされている時の平均血圧が135/85mmHg以上を示す。
- ・早朝高血圧
早朝高血圧や夜間高血圧は、脳・心臓・腎臓など全ての脳心血管病リスクが高く、診察室高血圧よりも臓器障害が進行しており、脳卒中リスクや後期高齢者の介護リスクが高いという報告があります。※1)
血圧計の種類と正しい測り方
家庭血圧は、医療現場で重要性が認められ治療にも使われるようになっています。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」の中でも家庭での測定方法をあげ推奨しています。日本高血圧学会が薦める測定法を以下に示しました。
- 測定する位置
上腕部(上腕カフ血圧計による)。
心臓の高さに近い上腕部での測定値が、最も安定しています。 - 測定時の条件
朝:起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、座った姿勢で1~2分間安静にした後
晩:就床前(飲酒や入浴の後)、座った姿勢で1~2分間安静にした後歩いたり、飲食したりすると血圧は上昇します。血圧測定時には椅子などに腰掛け、体の力を抜いて1~2分間安静にしてから測定します。
医師の指示によっては、夕食前などの測定もあります。また、自分で血圧が上がったかなと感じたとき、測定値と原因(推定)を記録しておくのも役立ちます。 - 測定回数
朝晩各1回以上。
医師の指示によっては複数回測定し、平均値を記録することもあります。 - その他
血圧測定はできるだけ長期間にわたり継続しておこない、毎日の測定値はすべて記録しておきます。
使用する血圧計は、わが国の製造会社のカフ・オシロメトリック法による上腕家庭血圧測定装置であれば問題はありません。
血圧測定の落とし穴
正しく測定を行ったつもりでも、隠れた高血圧を見逃してしまうことがあります。いくつか注意事項はありますが、特に家庭内血圧で見逃しやすいポイントは血圧の左右差です。一般的に右利きの人は左上腕部にカフを巻きますが、左鎖骨下に動脈硬化や血管のつまりがある人は実際よりも低い測定値が出てしまうことがあります。このような血行障害は「末梢動脈疾患」といい、脳梗塞や心疾患を引き起こす危険があります。※2)
いつも同じ腕ではなく、左右の腕を血圧を測ってみることも大切です。もし、左右の腕の血圧に差がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
(※1)日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019」
(※2)主婦と生活社「NHKためしてガッテン 脱・高血圧の『超』特効ワザ」
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