2009.03.10

vol.69 「だるい、疲れる」は、鉄欠乏性貧血の可能性が

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中高年も貧血に注意を

Vol.69 「だるい、疲れる」は、鉄欠乏性貧血の可能性が

貧血は若い女性によくみられる症状です。そのため中高年の、特に男性の場合は「自分は貧血とは無縁」と思い込んでいる人が多いのではないでしょうか。
例えば、なんとなくだるい、疲れやすいといった症状があっても「年のせい」で済ませてしまいがちですが、実は貧血が影響しているかもしれません。

中高年の貧血は、若い女性とは異なる原因で起こることがあり、その背景には重大な病気がかくれている可能性もあるので、注意が必要です。そこで、貧血の中で最も多くを占める鉄欠乏性貧血について、中高年の方も知っておきましょう。

鉄欠乏性貧血とは?

その名のとおり血液中の鉄分が不足して起こる貧血をいいます。貧血の80~90%を占めるのが、この鉄欠乏性貧血です。血液の成分のうち、赤血球にあるヘモグロビンには、酸素を身体の隅々まで運ぶ働きがあります。このヘモグロビンを産出するときに、鉄分を必要とします。

なんらかの原因で体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンをうまく合成できなくなります。すると赤血球中のヘモグロビンが減るだけでなく、赤血球そのものも小さくなってしまうのです(※1)。

その結果、体内への酸素供給量が減り、だるい、疲れやすいといった症状が起こるようになります。また、階段を上ったり、駆け足をしたりすると、酸素を補うために心拍数が増加し、動悸(どうき)や息切れなどの症状も起こりやすくなります。人によっては頭が重く感じたり(頭重感)、胸の痛みを覚えることもあるでしょう。

こうした症状は一気に出るのでなく、少しずつ進みます。なぜなら鉄分の不足による貧血は、非常にゆっくりと進行するからです。身体のだるさが続く、階段を上ったときに動悸がする、息がはげしくなるなどの自覚症状があれば、貧血の検査を一度受けるようにしましょう。

また最近では、ヘモグロビンは正常値であるのにもかかわらず、フェリチン(貯蔵鉄の量を反映するたんぱく質)が不足して起こる「隠れ貧血(潜在的鉄欠乏)」が増えています。これは鉄欠乏性貧血の一歩前の段階で、通常の健康診断では見つかりません。一般的な血液検査では貧血と診断されていなくても、疲れやすかったり、息切れしたりするのなら、念のためフェリチン値も調べてもらうことをおすすめします。

(※1)鉄分の不足からヘモグロビンが減り、赤血球が小さくなる症状を、「小球性低色素性の鉄欠乏性貧血」といいます。

気づきにくい潰瘍による貧血

鉄欠乏性貧血には、次のような原因があります。

(1) 鉄分摂取量の不足

偏食や不規則な食事、外食過多、無理なダイエットなどが原因で、鉄分が不足するケース。

(2) 鉄分の必要量の増加

妊娠中や授乳期に鉄分の必要量が増え、それにみあう供給がないケース。

(3) 出血による鉄分の不足

痔、子宮筋腫や子宮内膜症、消化性潰瘍、がんなどによって出血が起こっているケース(女性の場合には、月経による出血も含む)。

このうち、中高年が注意したいのが(3)のケースです。

痔の場合には、便に血液が付着して、血便と間違えることもあります。子宮筋腫などの場合には、不正出血があって気づくこともあるでしょう。ところが、消化器官(食道、胃、十二指腸、大腸など)での出血は、少量ずつだとなかなか気がつきません。

中高年になると、仕事や人間関係などのストレスから、胃や十二指腸に潰瘍ができている人は少なくありません。こうした消化性潰瘍は、軽いうちなら自然に治ることもありますが、悪化すると出血を起こします。出血を何度もくり返すうちに血液中のヘモグロビンが減少し、慢性的な貧血状態となり、だるさや疲れやすさ、息切れなどの症状がみられるようになるのです。

消化性潰瘍の場合、出血量が多いと便が黒くなることがあります。強いストレスなどが原因で出血量が急に増えると、タール状のねばねばした便が出ることもあり、加えて、立ちくらみやふらつきなどの症状もみられます(※2)。さらに、大量の出血があった場合には、生命にかかわることもあるので、便に異常がみられたり、立ちくらみが続いた段階で早めに検査を受けるようにしましょう。

消化性潰瘍は、ストレスを放置していると悪化しやすく、出血の原因ともなります。仕事が忙しいときなどは、できるだけストレスをためないように、意識的に気分転換を図ることや、睡眠をしっかりとることが大切です。ただし、ストレスを解消するためにお酒を飲むのはおすすめできません。アルコールは潰瘍を悪化させやすいので、節酒を心がけてください。

そのほかにも、カッとなって怒ったり、興奮したりしたあとにも、大出血を起こすことがあります。胃の調子が悪いときはついイライラしがちですが、反対にいつもより精神的なケア(怒らない、イライラしないなど)が必要です。

また、鉄欠乏性貧血が消化器のがん(胃がんや大腸がんなど)と関係していることもあります。貧血症状がおさまらないときは、便の潜血検査や内視鏡などによる検査をきちんと受けておくほうが安心です。

(※2)消化性潰瘍はキリキリとさしこむような痛みを伴うこともありますが、出血があってもまったく痛みを感じないことも少なくありません。痛みの有無にかかわらず、便に異常があったり、立ちくらみが続いたりする場合は検査を受けましょう。

鉄分を補給して貧血の改善を

貧血にはいくつかの種類があり、最も多いのは鉄欠乏性貧血ではありますが、まったく違うタイプの貧血ということもあり得るので、自己判断せずにまず受診しましょう。また、潰瘍などの病気の可能性がある場合は、必ず先に治療を受けてください。

一時的な軽い貧血の対策としては、まずは食事を見直しましょう。
食べ物に含まれる鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄とがあります。ヘム鉄は、肉類のレバーやマグロの赤身などに多く、非ヘム鉄はタマゴや乳製品のほか、大豆やヒジキなどの海藻類にも多く含まれています。これらをバランスよくとるようにします。

非ヘム鉄は吸収率があまりよくありませんが、ビタミンCと一緒にとると吸収率が高まるので、野菜や果物を食べるようにしましょう(※3)。
ただし、食べ物に含まれる鉄分は少量のため、すでに、貧血状態が進んでいる場合には、鉄剤を利用するほうが効果的です。市販のサプリメントを利用する方法もありますが、鉄分を過剰にとり続けると、胃腸障害や便秘・下痢などを起こしかねません。貧血を安易に考えず、一度、医療機関を受診し、血液検査などで貧血の状態を調べた上で、医師から鉄剤などを処方してもらいましょう(※4)。

体内への鉄分の貯蔵は時間がかかります。貧血症状がおさまってからも、体内に鉄分が貯蔵されるまではしばらく(1ヵ月~数カ月)鉄分補給を続ける必要があります。その間は、血液検査でヘモグロビン値やフェリチン値などをチェックし、改善状態を確認します(※5)。こうした点でも、医師の指導を受けながら治療するほうが安心できるでしょう。

(※3)非ヘム鉄は吸収率が低く、ヘム鉄の5~6 分の1程度です。また、緑茶や紅茶などに含まれるタンニンの影響を受けると、吸収率が低下します。そのため、従来お茶などを飲まないほうがいいといわれましたが、最近は、薬をお茶で飲んだりしない限り、あまり気にする必要はないとされています。

(※4)病院では、赤血球やヘモグロビンの検査(血液検査)によって、貧血の診断が行われます。ヘモグロビン値を例にすると、成人男性の場合は 13g/dl、成人女性の場合は11g/dl以上が健康の目安となります。ただし、年齢やほかの病気の影響なども考慮されるので、具体的なことは医師の診断を受けてください。

(※5)貧血状態が改善されたかどうかは、血液中の鉄分量だけでなく、内臓などに貯蔵される鉄分(貯蔵鉄)の量も指標となります。血液中に含まれる鉄貯蔵蛋白のフェリチンの量などから、貯蔵鉄の量を知ることができます。

参照URL
『鉄代謝と鉄欠乏性貧血 ―最近の知見―』日本内科学会雑誌 104 巻 7 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1383/_pdf

更新日:2021.01.08

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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