vol.133 糖尿病で薬物治療を受けていますが、別の病気で手術を受けることになりました。なにか注意することはありますか?

生活習慣病Q&A
糖尿病で薬物治療を受けていますが、別の病気で手術を受けることになりました。なにか注意することはありますか?
手術に向けて、血糖コントロールを良好にしておくことが大切です。良好な血糖管理をすることで、術中や術後に合併症を起こすリスクが低下します。
健康な人であっても、外科手術を受けることで交感神経が活発化し、さまざまなホルモンの放出によってインスリン抵抗性が高まり、高血糖状態となることが知られています。また、糖尿病を持つ人では高血糖により免疫力が落ちているため、手術の後に感染症を併発したり、傷が化膿したりするリスクが高くなっています。

そのため、糖尿病の患者さんでは術前・術中・術後の良好な血糖コントロールが必要となります。術中や術後の血糖管理は担当の医師が行いますが、術前に良好な血糖コントロールを行っておくことで、感染症などのリスクを低くすることができます。 たとえば、糖尿病を持つ人が白内障の手術を行う場合は、良好な血糖コントロールができている時に行います。これは入院してから急に厳格な血糖管理を行うと、糖尿病網膜症が悪化する可能性があるからです。そのため、血糖値が高い場合には手術を延期し、糖尿病教育入院などをして、内科的な治療を先に行います。最近では、白内障の手術は飛躍的に進歩し、手術による侵襲(手術に伴う痛みや出血など)が少なくなり、以前ほど厳格な血糖コントロールが必要とされてはいません。どの程度まで血糖コントロールをしておけばよいのか、かかりつけの先生や手術を担当される先生に尋ねてみましょう。

いずれにせよ、手術が必要だと言われたことをきっかけに、自身の糖尿病のコントロールを一度、見直してはいかがでしょうか。また、全身麻酔が必要な手術には禁煙が必須です。自分でやめる自信がない人は、禁煙外来を利用しましょう。

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

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