片頭痛患者800万人の強い味方「トリプタン」

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慢性頭痛には大きく分けて緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の3つのタイプがあります。そのうち片頭痛で悩んでいる人は全国で約800万人といわれています。

片頭痛と長く付き合っていると、人それぞれ“予兆”といえるサインが分かってくるようになります。それは「情緒不安定になり、イライラする」「あくびの回数が増える」「食欲が旺盛になる」「何となく体調が悪いと感じる」など千差万別です。重症になると「めまい」「言語障害」「錯乱」などを起こすケースもあります。なかには典型的な頭痛信号「閃輝暗点(せんきあんてん)」を感じる人も多くみられます。これは光が水面に乱反射してキラキラする状態が視野の中で広がったと思うと、一転して、今まで見えていたものが見えにくくなるという状態です。このような片頭痛信号のある人は、片頭痛で悩む人の約20%を占めています。これらの人は、前兆をキャッチしたら素早く常備している鎮痛薬を服用し、暗く静かな場所で横になっていると痛みが和らぎます。
一方、前兆のない人は、痛み始めたら頭痛薬を服用しましょう。軽い頭痛にはアセトアミノフェンだけが入った単剤を。それ以外にはアスピリンやイブプロフェンを用いましょう。ただし、市販薬の服用が月に10回を超え、それが3カ月も続くと『慢性連日性頭痛』という痛みを抑えるのが難しい頭痛を誘発してしまうケースもあります。

それを防ぐためにも頭痛治療に詳しい医師の治療をぜひ受けましょう。

片頭痛の発作は起きてしまうと、その痛みを鎮めるのはこれまで難しいといわれてきました。ところが、2000年4月を境に“頭痛治療”は一大変化を遂げたのです。頭痛の特効薬といわれる皮下注射薬スマトリプタンが登場したからです。
スマトリプタンは片頭痛の原因とされる脳の神経伝達物質セロトニンに作用します。セロトニンの分泌が脳の血管を収縮させ、その血管の収縮でセロトニンが血管外へ排出されると血管が拡張し、ズキンズキンと脈打つような激しい頭痛を引き起こすのです。スマトリプタンは拡張していた頭部の血管を収縮させるとともに炎症も抑えます。その上、吐き気やおう吐も鎮めるのです。
このスマトリプタンを使用することで片頭痛患者のうち70%の人に効果がみられました。
その後、3種類のトリプタンの経口薬が発売され、02年にはトリプタンの口腔内速溶錠(水なしで溶ける薬)、03年にはトリプタンの点鼻薬が発売、その効果は90%以上の人にみられるようになり、片頭痛患者にとってまさに朗報となりました。
片頭痛は専門医ときちんと相談しながら対応していくと、その痛みを上手に抑えられる時代を迎えているのです。
vol.9 片頭痛患者800万人の強い味方「トリプタン」

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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