住環境の改善で、血圧を下げることができるのでしょうか?
高血圧
予防・対策・生活改善
- 住環境の改善で、血圧を下げることができるのでしょうか?
-
断熱性や気密性を高めるといった工夫により、改善をはかることが可能です。心筋梗塞や脳梗塞といった疾患の発生は、季節によって変動することが知られており、特に冬場に増える傾向にあります。血圧のみを測った疫学研究でも、冬期に血圧上昇が認められます。冬は寒さによって血管が収縮し、血圧が上がりやすくなるためです。従って、断熱などによる改修で室内の温度が上がれば、血圧にもよい影響があると考えられます。
実際に、東京都健康長寿医療センター研究所などのチームによる研究では、1970年代に建てられた集合住宅において、窓ガラスの複層ガラスへの変更や壁に断熱材を入れるなどの改修で断熱性や気密性を高めることで、冬場の床の温度が3度ほど高くなり、研究参加者(平均68.8歳)の血圧が下がったと報告されています。
また、室温が家庭血圧に与える影響については、オムロン ヘルスケア株式会社、慶應義塾大学理工学部、自治医科大学循環器内科学部門、OMソーラー株式会社による共同研究で、とくに「足元付近の室温」に関する検討が行われています。その結果、床からの高さ1.1mの室温が10度下がると血圧は5mmHg上昇し、高さ0.1mの室温が10度下がると血圧は9mmHg上昇することが認められました。つまり、室温全体を高めることよりも、足元を冷やさない工夫をすることで、より効果的に血圧の上昇を押さえることができると考えられます。また、同研究では断熱性能が低い住宅の居住者は、平均血圧が高いことも認められています。
血圧値が高い方で、居住環境を見直す余地がある場合は、その補修も有効な手段ではないでしょうか。
先生のプロフィール

島本 和明 先生
日本医療大学総長
- 略歴
- 昭和46年 札幌医科大学卒業
昭和47年 札幌医科大学第二内科入局
昭和48年 東京大学医学部第三内科研究生
昭和53年 米国サウスカロライナ医科大学 留学
昭和55年 札幌医科大学第二内科講師
昭和59年 札幌医科大学第二内科助教授
平成8年 札幌医科大学第二内科教授
平成16年 札幌医科大学附属病院長
平成22年 札幌医科大学理事長・学長
平成28年 日本医療大学総長 - ご専門
- 内科学全般、循環器、高血圧、腎臓、内分泌、糖尿病
関連コラム
-
高血圧病名・疾患解説
高血圧とほかの病気との関係
日本人の死因のワースト4のうち、心疾患と脳血管疾患に関しては、高血圧が大きなリスク要因となっています... -
高血圧予防・対策・生活改善
Q.高血圧などによって大動脈瘤破裂が起きることがあると聞きましたが、検査の必要はありますか?
A.大動脈の破裂は、早期発見によって防ぐことも可能です。自覚症状がないまま進むことが多いので、可能な限り... -
高血圧予防・対策・生活改善
Q.高血圧患者は特に冬場など、入浴中に突然死することが多いと聞きました。本当でしょうか?
A.寒暖差が激しい場合、血圧が急激に変化する「ヒートショック」によって死亡する場合もあります。