「足がつる」を慢性化させない

脳卒中・脳梗塞 自覚症状・予兆

中高年は足がつりやすい

足がつるといった経験は、誰もが一度はあるのではないでしょうか。特に多いのは、ふくらはぎがつるケースで、昔はふくらはぎを「こむら(腓)」といったことから、こむら返りともいわれています(※1)。

私たちはふだん、歩いたり運動したりするとき、足の筋肉を自分の意志で動かしています。ところがなんらかの原因で、自分の意志とは関係なく、足の筋肉がとつぜん痙攣(けいれん)を起こすことがあります。それが「足がつる」という症状です。筋肉が収縮したままで硬直して元に戻りにくくなり、多くの場合、痛みをともないます。つる場所は、ふくらはぎに限らず、足の側面や指、腱の付近などにもみられます。

足がつる原因は人さまざまですが、若い世代の場合はサッカーやテニスなど足を激しく使う運動中に起こりやすく、筋肉疲労が原因の一つと考えられています。ところが中高年になると、ジョギングやハイキングなどの軽い運動がきっかけで足がつる、睡眠中にいきなり足がつるといったケースが増えてきます。

当初は一過性で、自然に治まることもありますが、次第に足がつる回数が増えて、何度もくり返すことがあります。夜間に痛みで目を覚まし、それが原因で睡眠障害を起こすことも少なくありません。また、激しい痛みにおそわれて、翌日まで痛みや違和感が残ったり、さらには肉離れを起こしたりするケースもみられます。

中高年になると、なぜ足がつる症状が慢性化したり、重症化したりしやすいのでしょうか。それは、加齢にともなう筋肉量の減少に加え、脱水症状、動脈硬化による血行不良と冷え、病気による神経障害、薬の副作用など、さまざまな要因が重なりやすいためです。ときには足がつる症状から、重大な病気がみつかることもあります。

それだけに、よく足がつる場合は要注意。予防策を知っておき、日常生活に支障をきたさないように心がけましょう。

(※1)医学的には「筋クランプ(筋痙攣)」の一つとされ、足のほか手や腹筋などにも起こります。

vol.125 「足がつる」を慢性化させない

なぜ足がつるのか

そもそも、どうして足がつるのでしょうか。そのメカニズムはまだよくわかっていませんが、病気などの直接的な原因がない場合、有力な要因の一つとされているのが「電解質異常」です。電解質とは、主にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなど血液中にあるミネラルイオンのこと。これらのミネラルは、筋肉や神経の動きを調整する働きがあるので、なんらかの原因でミネラルバランスが乱れると、筋肉の異常興奮(痙攣)が起こるのではないかと推測されています。

筋肉の動きにはさまざまなミネラルが関係していますが、1つの例をあげると、カルシウムの働きがあります。筋肉の収縮は、細胞内のカルシウムイオン濃度が上がることで起こります。同時に、体内にはカルシウムイオン濃度を調整する機能も働いています。加齢や疲労、栄養不足などにより濃度調整機能が低下すると、筋肉の伸び縮みがうまく制御できなくなり、痙攣を起こしやすくなります(※2)。

カルシウムに限らず、私たちが日常生活で必要とするミネラルは、いずれもごく少量です。しかし、それだけにちょっとしたことでミネラルバランスの乱れが生じます。たとえば、発汗や脱水症状などです。

発汗というと、夏季だけを連想しがちですが、現代の住宅やオフィスは暖房設備が整っているので、冬の室内でも汗をかきます。睡眠中にも、コップ1杯~2杯程度の汗をかくといわれています。また、高齢者に多いのが、治療などで利尿薬を使っていたり、消化不良で下痢が続いたりすることで起こる軽い脱水状態です。中高年の場合、汗や尿と一緒にミネラルも排出されやすいので、気づかないうちにミネラルバランスを乱していることも多いのです(※3)。

それでは、運動による影響はどうなのでしょうか。運動時に筋肉を使うと、カルシウムやナトリウムなどのミネラルが急速に消費されます。そのまま運動を続けると、やがて筋肉疲労を起こし、足がつる可能性も高くなります。特に中高年になって運動を始めた(もしくは再開した)場合、自分では軽めの運動と思っていても、発汗や疲労などの影響で予想以上のミネラルが消費されている可能性があります。運動をする方でよく足がつる場合には、ミネラルバランスだけが原因とはいえませんが、スポーツドリンクなどできちんとミネラルを補給することも予防法の1つなので試してみましょう。

(※2)筋肉(骨格筋)や腱には、伸縮を感知するセンサー(筋紡錘、腱紡錘)があります。これらは本来、脳と連携して筋肉の伸縮を制御していますが、疲労やミネラルバランスの乱れなどで誤作動を起こすことも一因と考えられています。

(※3)高血圧や腎臓病などの治療で利尿薬を使っている場合、足がつるからといって自己判断で薬をやめず、かならず医師に相談してください。

睡眠中に足がつる原因は?

睡眠中に足がつり、痛みで目を覚ましたという経験はありませんか。中高年の方には、睡眠中にこのような症状がよくみられます。痛みは数分で治まることもありますが、それでも目がさめてしまうので、くり返すようになると睡眠障害につながります。足のつりは、運動をしている方にも、運動をしていない方にも起こる現象です。そのため背景には、加齢にともなう足の筋肉量の減少や、動脈硬化による血行不良などがあると考えられています。

足の筋肉は伸縮することで、ポンプのように血液を循環させる働きをしています。しかし、定期的な運動をしていないと、筋肉量は20歳代を100とした場合、30歳代、40歳代…と進むにつれ、約10%ずつ低下して、60歳代以上では約60%程度まで落ち込むことに。足の筋肉量が減少すると、下半身の血液の流れが低下し、ミネラルやビタミンなどの栄養分の補給もうまくいかなくなります。その結果、運動をしていなくても、日常活動(仕事、家事、外出など)による筋肉疲労が蓄積しやすくなるのです。

また、中高年になると、加齢や高血圧、高血糖などが原因で動脈硬化を起こしているケースも少なくありません。足の血管に動脈硬化がみられると、血流量が低下し、悪化すると閉塞性動脈硬化症を起こすこともあります。この病気も足がつる原因の一つです(ミニコラム参照)。

こうしたマイナス条件(筋肉量の減少、筋肉疲労の蓄積、動脈硬化など)をベースに、さらに睡眠時には発汗によるミネラルの消費、冷えによる血流の低下などが重なり、足がつるリスクが高くなります。

急に足がつったとき、一般的にはふくらはぎなどのつった箇所の筋肉をゆっくり伸ばすことで、痛みが少しずつ解消されます。足の指をつかんで、ゆっくりと身体のほうへ引き寄せましょう。症状が治まってきたら、ふくらはぎの筋肉を下から上へやさしくマッサージしてください。睡眠中に足がつると、眠気もあってあわてて筋肉を伸ばそうとしがちですが、無理な力がかかって筋繊維の断裂が生じ、翌日まで違和感が残ることがあります。ひどい場合には肉離れを起こすので、落ち着いて対処することが大切です。

自分に合った予防策を

足がつる症状を慢性化させないためには、予防策が大切です。人によって症状が起こる条件が異なるので、自分に合った方法を試してみましょう。

1)フットケアをする
運動をしている方はもちろんですが、運動をしていなくても日常活動による筋肉疲労の蓄積を解消するため、1日の終わり(就寝前)にフットケアをしましょう。床に座って片膝を立て、(立てたほうの足の)ふくらはぎに手のひらを添えて、下(アキレス腱付近)から上(膝裏付近)へと軽くもみます。強くもむと筋繊維を傷めやすいので、手を滑らせるようにしてやさしくタッチしてください。電動のマッサージャーを使うと、両足を一緒に均等にもむことができるので便利です。最近は、ふくらはぎ専用のマッサージャーも登場しています。

2)適度な運動をする
日常生活に適度な運動を取り入れると、足の筋肉量を維持するだけでなく、血流をよくして疲労回復にも役立ちます。ウォーキングやスクワット(屈伸)などがお勧めです。1日あたりの理想の歩数は1万歩といわれています。スクワットは下半身の筋肉を鍛える代表的なトレーニングです。両足を肩幅程度に開いて立ち、両手を前に伸ばし、ゆっくり膝の曲げ伸ばし(屈伸)をします。身体が前傾すると腰に負担がかかるので、両手の水平を保つようにしましょう。10~15回を1セットとして、1日2、3回程度を目標に続けてみてください。ただし、疲れが残ると逆効果なので、一度にやりすぎないこと。運動の前後にはしっかりストレッチをしましょう。

3)食事などを見直す
ミネラルが不足しないように、バランスの良い食事を心がけることが大切です。特に筋肉の動きに関係が深いカルシウムは乳製品や小魚類に、またマグネシウムは大豆食品(豆腐、納豆など)に多く含まれています。

頻繁に足がつる場合は、サプリメントや漢方薬を試してみるのもいいかもしれません。漢方薬では、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が筋肉の痙攣性の痛みに効果があります。ただし、人によってむくみが生じることがあるので、高血圧や腎臓病などの治療を受けている方はかならず医師に相談してください。

※疾病別においしいメニューを紹介。ヘルシーメニューはこちら。「ヘルシーメニュー」

ミニコラム

病気が原因で、足がつる症状がみられることがあります。たとえば、糖尿病脊柱管狭窄症閉塞性動脈硬化症、椎間板ヘルニア、腎疾患、脳梗塞などが知られています。特に糖尿病の場合、よく足がつることがあります。血糖値が高い状態が続いた結果、電解質バランスが乱れることが原因と考えられていますが、まだ明確な因果関係はわかっていません。これらの病気の場合には、足がつるだけでなく、それぞれ特徴的な症状が重なってみられます。例えば、ノドの渇き・手足のしびれなど(糖尿病)、休みながらでないと歩けないなどの歩行障害(脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症)、腰痛(椎間板ヘルニア)、むくみ(腎疾患)、片方の手足の麻痺・言葉のもつれなど(脳梗塞)。ほとんどの病気は検査で発見が可能なので、気になる症状がみられたら早めに医療機関を受診しましょう。

(参考)
『こむらがえりはなぜ起こる|不調改善ヘルスケア』サワイ健康推進課
https://kenko.sawai.co.jp/healthcare/201903.html
『【こむら返り】足がつる場合の原因・予防・対処法』アンファー からだエイジング
https://www.angfa.jp/karada-aging/practice/komuragaeri/

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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