vol.52 「飛蚊症(ひぶんしょう)は心配ない」って、ホント?

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飛蚊症ってどんな症状

中高年に起こりやすい目の障害のなかで、最も多くみられるのが「飛蚊症(ひぶんしょう)」です。
青空や白い壁などを見ているとき、目の前を小さな虫か糸くずのような影が動くように感じたことはありませんか。蚊が飛んでいるようにも見えることから、飛蚊症と呼ばれています。
飛蚊症については、「単なる老化現象だから心配いらない」と思っている人が少なくありません。その一方で、「網膜はく離などを起こしているのではないか」と、とても心配する人もいます。
実は飛蚊症には、まったく心配ないものと、重大な病気の前兆などの場合、症状は似ているが別の病気の場合など、いろいろなケースがあります。多くの人に起こる症状なので、油断しないためにも、また心配しすぎないためにも、飛蚊症についてきちんと知っておくことが大切です。

飛蚊症の主な原因

●加齢に伴い起こる症状
後部硝子体はく離
離水
●その他の原因で起こる症状
硝子体出血
ぶどう膜炎
その他

vol.52 「飛蚊症(ひぶんしょう)は心配ない」って、ホント?

飛蚊症はなぜ起こる

飛蚊症は、どのようにして起こるのでしょうか。
私たちの目(眼球)のなかには、硝子体(しょうしたい)というゼリー状の物質が詰まっています。硝子体は、若いころにはどろりとした濃い状態ですが、中年になるとサラサラした液体状の部分が増えてきます(離水)。それにつれて、硝子体全体が少しずつ収縮するようになります。
硝子体が収縮すると、一部が目の奥にある網膜からはがれます(後部硝子体はく離)。はがれた硝子体の影が網膜に映って、小さな虫や糸くず、あるいは雲のような黒っぽい模様として見えます。それが飛蚊症の正体で、後部硝子体はく離は、飛蚊症の原因で最も多いものです。
硝子体が網膜からはがれるときに、目のなかに閃光(光の筋)を感じることもあります。それは硝子体が網膜を引っ張ったときに生じるもので、光視症と呼ばれています。
後部硝子体はく離によって起こる飛蚊症は、だれにでもみられる老化現象のひとつといえます。とくに強い近視の人には、早くから飛蚊症が起こりやすい傾向がみられます。
飛蚊症そのものは、一度起こると、元には戻りません。当初は目の前に黒いものがちらつくので、うっとうしく感じるかもしれません。でも、はく離した硝子体は次第に移動し、しばらくするとほとんどの人は気にならなくなります(※1)。

(※1)飛蚊症がどうしても気になる場合は、薬や手術による治療法もありますが、効果にはかなり個人差があります。副作用などについても、医師の話を十分に聞くようにしましょう。

注意したい網膜裂孔

飛蚊症があっても、それだけで目の状態が急速に悪化することはなく、その意味ではほとんどが心配ない、ということができます。
ただし、注意したい点もあります。硝子体のはく離は均一には起こらないため、網膜の一部が不均等に引っ張られた結果、小さな穴や裂け目ができることがあるのです。「網膜裂孔(れっこう)」という症状です。
(社)日本眼科医会によれば、後部硝子体はく離を起こした人の6~19%に、網膜裂孔がみられます。網膜裂孔の程度は人によって異なりますが、そのまま放置していて硝子体が網膜の裂け目から入り込むと、網膜はく離へと進む可能性があります。
網膜はく離が起こると、視細胞の機能が急速に悪化し、視力がいちじるしく低下します。最近は手術方法が進歩し、失明の危険性はかなり低くなりましたが、それでも網膜はく離が起こる場所によっては視力の回復が難しいこともあります。
視野の一部が欠けて見えたり、ゆがんで見えたりしたときには、すでに網膜はく離を起こしている可能性が高いので、すぐに受診しましょう。 実際に網膜はく離を起こした人の大半が、初期段階で飛蚊症を経験しています。それだけにもし飛蚊症が起こったら、それをきっかけに目の検査を受け、網膜裂孔などの症状がないかどうかをきちんと調べておくことが大切です(※2)。

(※2)網膜裂孔があっても、すぐに網膜はく離につながるわけではありません。また網膜裂孔の段階なら、光凝固療法など比較的簡単な治療法で治すことができます。網膜裂孔が起こったとき、暗い場所でも光が飛んでいるように感じる光視症を起こす人もいます。

間違えやすいほかの病気

症状は似ていても、別の病気が原因のこともあります。

1. 硝子体出血

硝子体出血は、網膜の血管などが破れ、硝子体のなかに出血したものです。大量に出血した場合は、視力が急速に低下するのでわかりやすいのですが、少量出血の場合には飛蚊症と同じような症状に感じられます。
軽度の硝子体出血では、時間の経過とともに黒っぽい影(出血)は周囲に吸収されて薄らいでいくので、治ったように勘違いすることが少なくありません。でも原因となる網膜の血管の状態は変わらないので、再発の可能性があります。その背景には、網膜はく離などが隠れていることもあるので、早めに受診しましょう。
血糖値や血圧が高めの人は、硝子体出血を起こしやすいので、とくに注意が必要です。

2. ぶどう膜炎

網膜の後ろにある脈絡膜や、目のレンズにあたる水晶体の近くにある虹彩や毛様体などを、総称してぶどう膜といいます。
この部分が細菌感染などによって炎症を起こすと、視力の低下や目の痛み、かすみなどのほか、硝子体ににごりが生じて、飛蚊症と同じような症状が起こることがあります(※3)。
ぶどう膜炎は、免疫力が低下したときに起こりやすく、疲労やストレスなどがたまっているときには注意が必要です。また、免疫異常などの病気が原因となることもあるので、早めに受診することが大切です。放置していると硝子体のにごりが進み、飛蚊症の状態も悪化していきます。

3. その他

件数は少ないのですが、頭痛や眼痛などを伴う血管新生緑内障や、目のけがや白内障の手術後などに起こる感染症によって、飛蚊症と同様の症状が生じることもあります。いずれの場合も、すぐに受診する必要があります。

(※3)ぶどう膜炎による硝子体のにごりは、炎症性の物質や白血球が硝子体のなかに入り込むことで生じます。

<飛蚊症で気を付けたいこと>

1. 目の検査を受ける
飛蚊症は、ある日突然に起こります。目の前を小さな虫や糸くずのような黒っぽい影が動くように感じたら、まず目の検査を受け、病気の可能性がないかどうか確認しましょう。また、年に一度は目の検査を受け、悪化していないか確認することも忘れずに。

2. 黒い影の動きをチェックする
これはひとつの目安ですが、加齢に伴う単純な飛蚊症の場合、小さな虫や糸くずのような黒っぽい影は、目を動かすと一緒に動きます。もし黒い影が動かないように感じたら、早めに受診を。

3. 飛蚊症が進行する場合も注意を
一般に飛蚊症は、当初は気になっても次第に慣れて、感じにくくなります。反対に、飛蚊症による黒っぽい影などがどんどん増えるような場合には、受診する必要があります。

4. ほかの症状にも気を付けよう
飛蚊症だけでなく、視力の低下、目の痛み、視野が欠けるなど、ほかの症状がみられる場合も要注意です。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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