「心房細動」は脳梗塞のサイン
不整脈・心房細動
病名・疾患解説
心房細動とは
気候が安定せず、体調の変化も起こりやすい季節。そんなときに気をつけたいのが「心房細動」です。とつぜん動悸や不整脈が生じ、胸苦しさや息切れ、胸痛、めまいなどが起きたら要注意です。
心房細動とは、心臓のリズム(拍動)が乱れ、血液が心臓内に停滞してしまう状態のこと。健康なとき、私たちの心臓は1分間に60~80回の収縮と拡張をくり返し、血液を全身に送り出しています。その規則正しいリズムは、心臓の右心房にある同結節(どうけっせつ)がペースメーカーの役割をし、電気信号を正確に出すことによって生まれます。
ところが何らかの原因で電気信号が乱れると、心房が不規則にふるえてうまく収縮できなくなります。すると心臓のドキドキを強く感じたり(動悸)、脈の乱れ(不整脈)が起こり、それが胸苦しさなどの症状となってあらわれるのです。
ほとんどの場合、症状は少しすると治まります(※1)。そのため心房細動があっても、一時的なものとして軽視しがちです。それどころか、自分の心房細動に気づいていない人も少なくありません。
ところが近年、心房細動は脳梗塞の重要なリスクとして認識されるようになっています。心房細動が起こると、心臓内に血液が停滞するため、血栓ができやすくなります(※2)。その血栓が脳へと移動し、脳梗塞を引き起こすのです。このタイプの脳梗塞は「心原性脳梗塞(脳塞栓症)」と呼ばれ、プロ野球の長嶋茂雄巨人軍元監督やサッカー日本代表チームのイビチャ・オシム元監督がなったことでも知られています。
脳梗塞のサインともいえる、心房細動について知っておきましょう。
心房細動とは、心臓のリズム(拍動)が乱れ、血液が心臓内に停滞してしまう状態のこと。健康なとき、私たちの心臓は1分間に60~80回の収縮と拡張をくり返し、血液を全身に送り出しています。その規則正しいリズムは、心臓の右心房にある同結節(どうけっせつ)がペースメーカーの役割をし、電気信号を正確に出すことによって生まれます。
ところが何らかの原因で電気信号が乱れると、心房が不規則にふるえてうまく収縮できなくなります。すると心臓のドキドキを強く感じたり(動悸)、脈の乱れ(不整脈)が起こり、それが胸苦しさなどの症状となってあらわれるのです。
ほとんどの場合、症状は少しすると治まります(※1)。そのため心房細動があっても、一時的なものとして軽視しがちです。それどころか、自分の心房細動に気づいていない人も少なくありません。
ところが近年、心房細動は脳梗塞の重要なリスクとして認識されるようになっています。心房細動が起こると、心臓内に血液が停滞するため、血栓ができやすくなります(※2)。その血栓が脳へと移動し、脳梗塞を引き起こすのです。このタイプの脳梗塞は「心原性脳梗塞(脳塞栓症)」と呼ばれ、プロ野球の長嶋茂雄巨人軍元監督やサッカー日本代表チームのイビチャ・オシム元監督がなったことでも知られています。
脳梗塞のサインともいえる、心房細動について知っておきましょう。
(※1)心房細動が起こると、脈が異常に早くなったり(頻脈)、反対に極端に弱くなったり(徐脈)することから、心房細動は「不整脈の1つ」ともされています。
(※2)心臓内に血液が停滞すると、さまざまな理由で血液凝固因子が活性化され、その結果、血の塊(凝固血栓)が生じると考えられています。

心房細動を放置しない
心房細動は、一般に高齢者に多いと思われています。たしかに高齢になって発見されることが多いのですが、30~50歳代の働き盛りの方が経験することも珍しくありません。
たとえば、ストレスや睡眠不足が続いたときなどに、軽い心房細動を起こすことがあります。ただ若いうちは、「疲れかな」という程度で済ませてしまう方が大半です。
ところが心房細動を放置していると、次第に回数が増え、くり返す状態になる可能性があります(慢性心房細動)。慢性化すると、患者さん自身は症状に慣れ、「またか」程度にしか感じなくなりますが、じつはそれが問題なのです。回数が増えるぶん、血栓ができる危険性も高くなります。その結果、あるとき急に脳梗塞を起こすというケースが多いのです。
現在、脳梗塞のうち、心房細動が関係するタイプ(心原性脳梗塞)は約30%を占めるほどに増えています(※3)。それだけに症状が軽くても、心房細動と思われる症状(動悸、不整脈、胸苦しさ、息切れなど)を何度か経験した場合は、早めに検査(心電図、心エコーなど)を受けることが大切です。
また、心房細動には、発作性といって、いきなり脳梗塞につながるタイプがあります。その場合でも、自覚症状がないまま過去に心房細動を起こしていた可能性があります。一般に、高血圧や糖尿病、心疾患のある方は心房細動を起こしやすいとされているので、定期的に検査を受けることが大切です。
たとえば、ストレスや睡眠不足が続いたときなどに、軽い心房細動を起こすことがあります。ただ若いうちは、「疲れかな」という程度で済ませてしまう方が大半です。
ところが心房細動を放置していると、次第に回数が増え、くり返す状態になる可能性があります(慢性心房細動)。慢性化すると、患者さん自身は症状に慣れ、「またか」程度にしか感じなくなりますが、じつはそれが問題なのです。回数が増えるぶん、血栓ができる危険性も高くなります。その結果、あるとき急に脳梗塞を起こすというケースが多いのです。
現在、脳梗塞のうち、心房細動が関係するタイプ(心原性脳梗塞)は約30%を占めるほどに増えています(※3)。それだけに症状が軽くても、心房細動と思われる症状(動悸、不整脈、胸苦しさ、息切れなど)を何度か経験した場合は、早めに検査(心電図、心エコーなど)を受けることが大切です。
また、心房細動には、発作性といって、いきなり脳梗塞につながるタイプがあります。その場合でも、自覚症状がないまま過去に心房細動を起こしていた可能性があります。一般に、高血圧や糖尿病、心疾患のある方は心房細動を起こしやすいとされているので、定期的に検査を受けることが大切です。
(※3)脳梗塞の主なタイプには、心原性脳梗塞のほか、脳血管の動脈硬化によるラクナ梗塞(末梢血管に多い)とアテローム血栓脳梗塞(頸動脈などに多い)があり、それぞれ約30%を占めています。
急な麻痺や言語障害にも注意
心房細動は脳梗塞の重要なサインですが、もう1つ忘れることができないサインがあります。それは「一過性脳虚血発作」です。
あるときとつぜん、片手に力が入らなくなって箸やスプーンを取り落とした…そんな経験はありませんか。高齢になると手先の感覚がにぶくなり、箸などを落とすことがありますが、それとは違って片手が一時的に麻痺し、箸やスプーンをつかむことができなくなります。
そのほか、ろれつが回らなくなり言葉が意味不明になる、片足に麻痺が起こり歩けなくなる、片目がみえにくくなるなど、人によってさまざまな症状がみられます。いずれの症状も急に起こり、しばらくすると元の状態に戻ります。
こうした一過性脳虚血発作の症状は、脳の動脈が血栓で一時的に詰まるために起こるもので、本格的な脳梗塞の前兆といえます。心房細動による脳梗塞の場合も、前触れとして一過性脳虚血発作を経験することが少なくありません。
症状が治まるとほっとして、つい軽く考えがちですが、一過性脳虚血発作を放置すると、その後3~4割が脳梗塞を起こすことが分かっています。とくに60歳以上で高血圧や糖尿病のある方、一過性脳虚血発作で片側の麻痺や言語障害の症状が1時間以上続いた方などは、発症リスクが高いので、早急に精密検査を受けましょう(※4)
あるときとつぜん、片手に力が入らなくなって箸やスプーンを取り落とした…そんな経験はありませんか。高齢になると手先の感覚がにぶくなり、箸などを落とすことがありますが、それとは違って片手が一時的に麻痺し、箸やスプーンをつかむことができなくなります。
そのほか、ろれつが回らなくなり言葉が意味不明になる、片足に麻痺が起こり歩けなくなる、片目がみえにくくなるなど、人によってさまざまな症状がみられます。いずれの症状も急に起こり、しばらくすると元の状態に戻ります。
こうした一過性脳虚血発作の症状は、脳の動脈が血栓で一時的に詰まるために起こるもので、本格的な脳梗塞の前兆といえます。心房細動による脳梗塞の場合も、前触れとして一過性脳虚血発作を経験することが少なくありません。
症状が治まるとほっとして、つい軽く考えがちですが、一過性脳虚血発作を放置すると、その後3~4割が脳梗塞を起こすことが分かっています。とくに60歳以上で高血圧や糖尿病のある方、一過性脳虚血発作で片側の麻痺や言語障害の症状が1時間以上続いた方などは、発症リスクが高いので、早急に精密検査を受けましょう(※4)
(※4)一過性脳虚血発作は、従来は病院でも「少し様子を見る」という診断が多くみられました。しかし、頸動脈の超音波ドプラー検査やMRIの拡散強調画像などで危険度が分かるようになり、医師の判断によりますが、現在は生活指導をふくめて早めに治療を受けるほうが良いとされています。
運動と心房細動
心房細動はだれにでも起こりえますが、とくに運動をしている場合には十分な注意が必要です。
たとえば海外の研究などから、激しい運動をしている人、また、若い頃に激しい運動をしていた人は、心房細動を起こしやすいことが報告されています(※5)。そのため自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら循環器系の検査を受けるほうが安心です。
では、軽度の運動はどうなのでしょうか。心房細動の原因には、高血圧や糖尿病のほかに、動脈硬化や心疾患 (拡張型心筋症、心肥大など)が隠れていることがあります。すでに動脈硬化がかなり進んでいたり、心疾患がある場合には、運動によってはリスクが高くなりかねません。実際に、心房細動や一過性脳虚血発作を起こした人には、動脈硬化が進んでいるケースが多くみられます。
したがって軽い運動であっても、心房細動と思われる症状(動悸、不整脈、胸苦しさ、息切れなど)を経験した場合は、早めに検査を受け、原因を確認することが大切です。前述したように、心房細動は慢性化すると体が慣れてしまい、感じにくくなるため、ある日とつぜん脳梗塞を起こしかねません。運動は発症のきっかけともなりやすいので、自己判断せずに、かならず医師に相談するようにしましょう。
一方、日常生活においては、ストレスや疲労の蓄積、睡眠不足、そして喫煙や多飲(アルコールの飲み過ぎ)も、心房細動の引き金となります。仕事や家事が忙しいときなどは、これらの要因が重なるために心臓に大きな負担がかかり、心拍の調節機能にも悪影響を及ぼします。
そんなとき心房細動の症状がみられたら、たとえすぐに治っても軽く考えずに、「心臓からのサインだ」と思い、生活全般を見直しましょう。
たとえば海外の研究などから、激しい運動をしている人、また、若い頃に激しい運動をしていた人は、心房細動を起こしやすいことが報告されています(※5)。そのため自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら循環器系の検査を受けるほうが安心です。
では、軽度の運動はどうなのでしょうか。心房細動の原因には、高血圧や糖尿病のほかに、動脈硬化や心疾患 (拡張型心筋症、心肥大など)が隠れていることがあります。すでに動脈硬化がかなり進んでいたり、心疾患がある場合には、運動によってはリスクが高くなりかねません。実際に、心房細動や一過性脳虚血発作を起こした人には、動脈硬化が進んでいるケースが多くみられます。
したがって軽い運動であっても、心房細動と思われる症状(動悸、不整脈、胸苦しさ、息切れなど)を経験した場合は、早めに検査を受け、原因を確認することが大切です。前述したように、心房細動は慢性化すると体が慣れてしまい、感じにくくなるため、ある日とつぜん脳梗塞を起こしかねません。運動は発症のきっかけともなりやすいので、自己判断せずに、かならず医師に相談するようにしましょう。
一方、日常生活においては、ストレスや疲労の蓄積、睡眠不足、そして喫煙や多飲(アルコールの飲み過ぎ)も、心房細動の引き金となります。仕事や家事が忙しいときなどは、これらの要因が重なるために心臓に大きな負担がかかり、心拍の調節機能にも悪影響を及ぼします。
そんなとき心房細動の症状がみられたら、たとえすぐに治っても軽く考えずに、「心臓からのサインだ」と思い、生活全般を見直しましょう。
(※5)激しい運動とは、たとえばサッカー、ラグビー、野球、バスケットボール、自転車競技などです。
※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。