COPDの合併症、全身への影響

COPDが軽度であっても合併症のリスクあり

初期のCOPDでは無症状または症状を自覚していない人が多いほか、COPDと診断された方であっても症状が軽い場合には現状を深刻に捉えていないケースも多くみられます。しかし、「自分はまだ軽度だから大丈夫」と安心するのは危険です。気づかないうちに病状が進行してしまうだけでなく、初期のCOPDであってもさまざまな合併症のリスクが伴いますので注意が必要です。

肺の合併症や全身の併存症に注意

COPDは、肺の病気であると同時に、全身に影響を及ぼす病気でもあります。肺に関係する合併症としては、喘息、肺がん、気腫合併肺線維症、肺高血圧症、肺炎、気胸などがあります。全身への影響(併存症)としては、全身性炎症、フレイル、サルコペニア、栄養障害、心血管疾患、骨粗鬆症、不安・抑うつ、糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、貧血などが挙げられます。この併存症の有無は、COPDの増悪の頻度やQOLの低下、生命予後にも影響を及ぼします。

COPDでは肺がんの合併リスクが高い

COPDでは肺がんを合併するリスクが高く、肺がんはCOPD患者の主な死因の一つとなっています。COPDにおける肺がんの合併率は6%程度で、肺がんの年発症率は1.85〜2.3%/年と報告されています。COPDに合併した肺がんは、治療が困難になることがあるため、早期発見・早期治療が重要です。

CHECK! COPDの全身への影響―COPD患者さんは他の病気をどのくらい併存している?

  • 骨粗鬆症:欧米ではCOPD患者の約35%で併存、日本での併存率は報告によって幅があり、18〜79%程度。
  • 心血管疾患:慢性心不全患者の約3割がCOPDを合併、逆に、症状の安定しているCOPD患者であってもその約3割に心不全が併存。
  • 抑うつ:COPD患者では高い率で不安や抑うつなどの精神症状が出現。抑うつの併存率は、欧米で80%、日本では38%程度。
  • 糖尿病:COPDは糖尿病発症のリスクを高め、その発症リスクはCOPDでない人に比べて1.5倍との報告あり。

(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版 2022. メディカルレビュー社, p35-42より)

監修:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野 教授 井上 博雅先生