COPDの治療
COPDの症状を改善し、進行させないための治療法
COPDの最大の原因は喫煙です。そのため、禁煙すれば治ると思われがちですが、それほど簡単ではありません。COPD患者は、タバコの煙に含まれている有害物質により肺の炎症が引き起こされ、炎症が慢性化しています。この肺の炎症は、禁煙後も持続することがわかっています。すなわち、禁煙したとしても病状は進行していきます。そのため、早期に見つけて適切な治療を受け、病気を進行させないことが最も重要になります。
COPDの治療は、今ある症状を改善するだけでなく、増悪の予防や将来のリスクを減らす(COPDの進行を抑える、死亡率を下げる)ことが目標となります。
COPDの治療目標
現状の改善
症状の改善やQOLの改善
運動能力や身体の活動性の向上や維持
将来のリスクを減らす
増悪の予防
COPDの進行の抑制および健康寿命の延長
治療の中心は、(1)禁煙 (2)薬物療法 (3)呼吸リハビリテーションの3つです。重症のCOPDであると判明した場合には、このほかに「酸素療法」も行われます。
(1)禁煙
喫煙者の場合、まずは禁煙しましょう。禁煙することが増悪を減らし、死亡率を下げ、COPDの重症例であっても予後の改善が期待できます。COPDの重症度に関わらず、禁煙することが非常に重要です。
(2)薬物療法
持続的に気管支を広げて空気を通りやすくする気管支拡張薬により、COPDの治療は大きく改善しました。気管支拡張薬には、抗コリン薬、β2(ベータツー)刺激薬、テオフィリン薬があります。気管支拡張薬は、その効果と副作用のバランスから吸入薬が選択され、吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が中心に用いられます。気管支拡張薬の吸入治療は、COPDの症状を軽減しQOLを改善します。運動能力を改善し、増悪の頻度を減らすことも明らかになっています。さらに、身体活動性を改善し生命予後も改善する可能性があります。重症で増悪を繰り返す場合、血中の好酸球という炎症細胞が多い場合や喘息を合併する場合には、吸入ステロイド薬も使用されます。呼吸機能の程度(気流の閉塞の程度)や息切れなどの症状の強さ、増悪リスクなどを考慮して薬剤が選択されます。
(3)呼吸リハビリテーション
COPDは、身体を動かすと息切れを起こすため、日常生活での活動性が低下しやすくなります。また、活動性が下がることで身体の不調を招き、社会から孤立し抑うつなどを抱えてしまうという悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切るために有益なのが、「呼吸リハビリテーション」です。薬物療法など他の治療に加えて呼吸リハビリテーションを実施すると、上乗せ効果が期待できます。
具体的には、運動療法などを行うことによって、呼吸困難が軽減するなど日常生活の動作が改善されます。自分から意欲的に体を動かし、身体活動を維持することは、最近では、非常に重要な治療の一つと考えられています。
呼吸リハビリテーションによって期待できること
- 息切れなど呼吸困難の軽減
- 全身持久力の改善や身体活動レベルの向上
- 不安・抑うつの改善
- 増悪の予防と回復(入院回数および期間の減少、入院後の回復を促進、予約外受診の減少)
- 薬物治療の効果の向上
監修:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野 教授 井上 博雅先生