低血圧には診断基準がない

低血圧の症状にはそのほか、めまい、頭痛、肩こり、耳鳴り、不眠、胃もたれ、吐き気、発汗、動悸(どうき)、不整脈など、さまざまあります。
どの症状も本人にはつらいものですが、低血圧はどういうわけか、病気としてあまり重視されていない面があります。すぐに生命にかかわるものではない、と思われていて、そのぶん対策も遅れています。
例えば、高血圧と比べると、低血圧には国際的な診断基準がありません。日本の病院では、最高血圧(収縮期血圧)が100mmHg以下を目安としているところもありますが、確定的なものではありません(※1)。
そのため受診する機会も少なく、人によって症状にも違いがあるので、低血圧についてはあまりよく知られていないのが現状だといえます。
もし、上のような症状が継続してみられる場合は、定期的に血圧を測定してみましょう。最高血圧がいつも110mmHg以下だとしたら、低血圧が原因で症状が起こっている可能性もあります。検査を受け、病気との関連や、自分の低血圧のタイプを知っておくことが大切です。
(※1)病院(医師)によっては「110~100mmHg以下」、あるいは「110~85mmHg」を目安にしているところもあります。
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低血圧は若い女性に特有のものと思われがちですが、実際には男性にも少なくありません。全体的には女性に多いものの、中高年になるにつれ男女差は小さくなります。高齢者の場合、血圧が低下すると失神や転倒などの危険性があるので、特に注意が必要です。
あなたの低血圧のタイプは?
(1) 本態性低血圧
低血圧の中で最も多いのが、原因がよく分からない「本態性低血圧」です。多くは体質的なものですが、両親や兄弟(姉妹)に低血圧の人がいる場合には、遺伝による可能性もあります。病院では、ほかに病気の可能性がない場合に、本態性低血圧と診断されます。
(2) 起立性低血圧
ベッドから起き上がったときや、いすから立ち上がったときなどに、急にフラッとするのが「起立性低血圧」です。一般に、横になった状態から立ち上がったときに、最大血圧が20mmHg以上下がる場合に、起立性低血圧とされます。
原因として、低血圧によって脳の血液量が減少しやすいケースのほか、血圧を調節する自律神経の障害によっても起こります。そのためこのタイプは、日ごろ低血圧でない人にもみられます。
(3) 二次性低血圧(症候性低血圧)
病気や薬が原因で低血圧になるタイプです。よく知られているのは、糖尿病で血糖値コントロールがうまくいっていないときに起こりやすい起立性低血圧です。
そのほか循環器系疾患(心臓の弁や血管などに異常がある場合など)、内分泌系疾患(アジソン病など)(※2)、パーキンソン病、がん、甲状腺異常などの病気でも、低血圧を引き起こすことがあります。
また高齢者に多いものでは、薬による副作用(降圧薬など)や、食後低血圧といって食事の後にめまいやだるさを感じるタイプもあります。日ごろ高血圧気味の高齢者でも、こうした一時的な低血圧がみられることがあります。
(※2)アジソン病は副腎皮質ホルモンの分泌低下により、気力や筋力、食欲などの減退、低血圧などの症状がみられる病気。
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低血圧と貧血は、めまいや立ちくらみなど一部の症状が似ていますが、実はまったく違うものです。貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンの減少によって起こるもので、最も多い原因は鉄分の不足です。ただし、慢性関節リウマチなどほかの病気が原因のこともあります。めまいを繰り返す場合や、手足のしびれ、節々のこわばり、黄疸などが見られる場合は早めに受診しましょう。
食事を見直そう
特にタンパク質(肉類、魚類、納豆などの大豆食品)をしっかり取ること。また、不足しがちなミネラルを補うために、野菜や海草類を積極的に取ることも大切です。
高血圧の場合には塩分が制限されますが、低血圧では反対に塩分をきちんと取ることも必要です(大量に取る必要はありません)。一般に低血圧の人は疲れやすいので、塩分とクエン酸(疲労回復に効果的)の多い梅干を、食事と一緒に取るのもいい方法です。
水分を多めに摂取することも大切です。水分を取ることは、血液量を増やすことにもつながります。1日1L~2Lを目安にしましょう。ただし、脚などにむくみが出る場合は、量を減らしてください(脚のむくみは、次の運動を参照してください)。
血液を心臓に戻す運動を
脚の場合、血液の循環に大きな役割を果たしているのは、ふくらはぎの筋肉です。
ふくらはぎの筋肉を鍛えるには、ウォーキングや階段昇降が効果的です。ウォーキングは、頭痛や肩こりのときには気分転換にもなります。ただし、早歩きをすると動悸や息切れを起こしやすい人もいます。その場合には無理をせず、散歩のつもりでゆっくり歩きましょう。
なかなか時間がとれない人なら、自宅での階段昇降もいい方法です。階段といっても、急な階段を上り下りするのは危険なので、玄関の段差など1段だけを利用します。
転倒しないように壁などに手を添えて、1段を上り、後ろ向きに下ります。年齢にもよりますが、50~100回を目安にゆっくり取り組みます(時々上るときの脚を左右入れ替えます)。
この運動自体が血液循環をよくしますが、ふくらはぎに筋肉が付くことで自然に脚の血液循環が改善され、むくみの解消にもつながります。
適当な段差がない場合や、高齢で脚が上がりにくい人は、たまった雑誌や新聞紙を10センチくらいの高さに束ね、ガムテープやヒモでしっかり固定したものを利用します(高齢者の場合は高さを低めにしてください。また雑誌などが崩れると滑るので、しっかり束ねて固定します)。これならリビングでテレビを見ながらでも運動ができます。
ただし、めまいや動悸、息切れがある場合には、必ず医師に相談してから運動をはじめましょう。
手先の血液循環をよくするには、手をにぎったり、開いたりという動作をくり返し行うことが効果的です。末梢(まっしょう)神経の働きの改善にもつながるので、30~50回程度を目安にやってみましょう。
ただし、この場合も、手に強いしびれなどがある場合には、まず医師に相談してください。
※自宅で、手軽にできるエクササイズ情報はこちら。「かんたん・健康エクササイズ<動画>」
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低血圧の場合、人ごみや暑い場所にいると、疲れや頭痛などの症状が悪化しがちです。できるだけ人ごみをさける、つきあいはほどほどにする、暑い日の外出はしない、外出する場合は早めに休憩をとる…などの方法で、予防しましょう。
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