原因不明が多い腰痛の中で痛みの原因が特定できる「特異性腰痛」とは
「特異性腰痛」と「非特異性腰痛」
日本の成人の90%が、なんらかの機会に経験しているという腰痛。実は、腰痛とは病気の名前ではなく、腰からくる痛みや張りなどの不快に感じる症状の総称です。このうち、画像診断や血液検査などで痛みの原因が特定できるものを「特異性腰痛」、原因がはっきりしないものを「非特異性腰痛」といいます。特異性腰痛とはどのようなものなのか、またどのような原因が考えられるのかをみていきましょう。
腰痛の85%は原因不明の「非特異性腰痛」
直立二足歩行をする人間は、からだを垂直に保ち、重い上半身を下半身で支える必要があります。そのため、どうしても腰に大きな負担がかかってしまいます。つまり、腰痛は直立二足歩行を行う人間の宿命のようなもの。とはいえ、すべての人が腰痛に苦しんでいるのかといえば、決してそうではありません。腰痛になりやすいかどうかは、生活環境や生活習慣、ストレスなどが大きく関与しています。
特異性腰痛とは、画像検査による診断や診察で原因が特定できる腰痛です。腰痛の原因はさまざまで、原因を特定できるのはわずか15%程度といわれています。残りの約85%は、検査をしても痛みの原因となる異常が見つからない非特異性腰痛です。突然腰に激痛が走るいわゆる「ぎっくり腰」も原因の特定が難しく、非特異性腰痛に該当します。
特異性腰痛の原因となる病気
特異性腰痛の原因となる病気には、以下のようなものがあります。
腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア
背骨と背骨の間にある椎間板が潰されて、内部にあるゼラチン状の髄核(ずいかく)が後方に押し出され、神経を圧迫するために痛みが起こる病気です。高齢者よりも、20代から40代の働き盛りの男性に多くみられます。
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腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
脊椎は、椎骨と呼ばれる骨が連結してできています。加齢などに伴って、椎骨にある脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなると、中を通っている神経が圧迫されて、腰痛やお尻や足のしびれなどが起こります。一般的に、40歳以上の人に多い症状です。
骨粗しょう症
加齢によりカルシウムが流出して骨密度が減り、骨折しやすくなる病気です。腰椎が圧迫骨折を起こすと、腰や背中が痛くなります。骨粗しょう症は、中年以降の女性に多いのが特徴です。原因のひとつとして、骨がカルシウムを吸着するときに必要なエストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌量が、閉経とともに急激に減少することが挙げられます。
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脊椎分離症・脊椎すべり症
脊椎の関節にある骨が切れて、分離した状態です。一方、脊椎分離症とは、脊椎の一部が前後にずれている状態をいいます。分離症を伴う分離すべり症と、分離を伴わない変性分離症の2タイプがあります。
腰痛にはさまざまな原因があり、上記のように思わぬ病気がひそんでいる可能性もあります。疲れが溜まっているだけかもと見過ごさず、医療機関を受診してみるのも大切です。
- 参考)
- 橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
- 三井 弘『ひざ・腰・肩の痛みの最新治療―変形性膝関節症・坐骨神経痛・骨粗鬆症・椎間板ヘルニアなど(よくわかる最新医学)』主婦の友社
- 厚生労働省『腰痛対策(PDF)』
- 監修:
- 京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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