対策・治療

変形性膝関節症の治し方 - 運動および薬、手術による治療法

変形性膝関節症は、膝の関節にある軟骨が少しずつすり減って、骨が変形してしまう中高年に多い病気です。膝を動かすと痛みが生じたり、曲げ伸ばしが難しくなったりして、最終的には歩くのも困難になります。変形性膝関節症は少しずつ進行するので、早めに治療を始めましょう。
変形性膝関節症の治療法には大きく分けて、手術をせずに運動や薬で症状を緩和させる保存療法と手術療法の2種類があります。まず取り組みたいのが、保存療法にあたる運動療法とつらい痛みへの対症療法の基本となる薬物療法です。保存療法を2〜3ヵ月続けても効果がなく、さらに膝の痛みや変形が悪化している場合は、手術療法が行われます。ここでは、運動療法・薬物療法・手術療法についてご紹介します。

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目次
自力でできる運動療法とは?
変形性膝関節症を自分で治す2つのトレーニング方法
変形性膝関節症の薬物療法で使用する薬の種類
変形性膝関節症の薬物療法に対する注意点
変形性膝関節症の手術療法
どのような手術を選択すべきか

自力でできる運動療法とは?

運動療法とは、運動によって疾患や機能障害の改善、回復を図る方法です。糖尿病の運動療法や脳卒中後のリハビリテーションなどが知られています。
運動療法に期待できる効果として、次のようなものが挙げられます。

  • ・痛みによって緊張した筋肉をほぐす
  • ・痛みや緊張で拘縮した関節の可動域を拡大する
  • ・血行を促進させる
  • ・痛みをきっかけに低下した筋力を向上させる
  • ・運動機能を回復させる

変形性膝関節症を自分で治す2つのトレーニング方法

変形性膝関節症が進行すると、痛みで足を動かさなくなるので、膝の周りの筋力が落ちて、関節の安定性が悪くなります。すると、ますます膝に負担がかかって痛みが強くなるという悪循環に陥りがちです。この負のスパイラルを断ち切るためには、膝の周りの筋肉を鍛えて、膝の負担を軽減する必要があります。
運動療法は、変形性膝関節症をはじめとする膝痛の改善に効果的です。ウォーキングなどの有酸素運動や簡単な筋トレ、ストレッチなどを取り入れて、運動習慣を身につけましょう。ただし、運動療法のやりすぎはよくありません。激しい運動は、症状を悪化させる場合があります。無理のないよう、医師や理学療法士と相談しながら行いましょう。ここでは、自宅で簡単にできる運動療法をご紹介します。

膝の動きを支える太もものトレーニング

  1. 背もたれのある椅子に深く腰掛けます
  2. 片足をゆっくり水平まで持ち上げます
  3. 5秒間キープします
  4. ゆっくりと元に戻します

膝の動きをよくするトレーニング

  1. 足を伸ばして座り、かかとの下にタオルを置きます
  2. かかとをゆっくりとお尻に近づけて、できるだけ膝を曲げます
  3. かかとをゆっくりお尻から遠ざけて、できるだけ膝を伸ばします

変形性膝関節症の薬物療法で使用する薬の種類

膝が腫れているときや変形の少ない初期の段階では、薬物を用いて炎症と痛みを抑える薬物療法も行われます。変形性膝関節症の薬には、外用薬、内服薬、座薬、注射薬があります。それぞれの特徴についてご紹介します。

外用薬 - 抗炎症剤

外用薬には塗り薬として用いるクリームや軟膏(なんこう)、ゲル、それから貼り薬として用いる湿布があります。これらの成分には非ステロイド系抗炎症剤が含まれており、これらは経皮的に吸収され、炎症を起こしている局所で腫れや痛みを抑える作用があります。また貼り薬として冷湿布と温湿布があり、どちらも痛みや炎症を抑える効果は持っていますが、冷湿布は打ち身や捻挫、急な関節の腫れなどの急性期に用いられ、温湿布は慢性的に持続する痛みに用いられます。

内服薬 - 消炎鎮痛剤

膝の痛みが激しい場合は、比較的短時間で効果が出やすい内服薬を使用します。ただし、長期間使用すると副作用の心配があるため、痛みが軽くなってきたら塗り薬や湿布に切り替えるのが一般的です。内服薬には非ステロイド系の消炎鎮痛剤のジクロフェナク、ロキソプロフェン、インドメタシンなどがあります。

座薬 - 消炎鎮痛剤

特に痛みが激しい人や、胃腸が弱くて内服薬が使えない人には、座薬(肛門から挿入する薬)が用いられます。薬を直接粘膜から吸収させるので、即効性が期待できます。インドメタシンやジクロフェナクなどの座薬があります。

関節内注射 - ヒアルロン酸

膝の関節内にヒアルロン酸を注射する方法です。ヒアルロン酸はもともと膝の関節液に多く含まれており、関節の滑りを滑らかにしたり、関節の衝撃を和らげたりする役割がありますが、変形性膝関節症になると、このヒアルロン酸が少なくなるといわれています。ヒアルロン酸注射を1週間ごとに5回ほど続けると効果が出てくるでしょう。

変形性膝関節症の薬物療法に対する注意点

変形性膝関節症で処方される薬は、炎症を抑えて痛みを軽くするのが目的で、病気そのものを治すためのものではありません。膝関節にかかる負担を減らすために、毎日の生活習慣を見直して、体重管理と運動習慣の定着に取り組むことが大切です。また、症状が改善したからといって、自己判断で勝手に薬をやめるのは禁物です。医師の指示に従って、正しく服用しましょう。

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変形性膝関節症の手術療法

保存療法を2〜3ヵ月続けても効果がなく、さらに膝の痛みや変形が悪化している場合は、手術療法を行います。ここでは、代表的な手術療法をご紹介します。
代表的な変形性膝関節症の手術療法には、①関節鏡視下手術、②高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)、③人工膝関節置換術の3つの方法があります。それぞれの特徴についてみていきましょう。

①関節鏡視下手術:軽度〜中程度

膝の皮膚の一部を切開して関節鏡を挿入し、軟骨の破片を取り出したり、軟骨の表面をなめらかにしたりするなどの処置を施します。関節鏡を挿入するために皮膚を6㎜ほど2ヵ所切開するだけなので、患者の負担が少ないのがメリットです。入院期間は3日から1週間ほどで、手術の翌日から装具をつけて歩けます。

②高位脛骨骨切り術:軽度〜中程度

膝関節の下にある脛骨の一部をくさび形やアーチ型に切り取って、膝への荷重のかかり方を矯正し、関節にかかる力が均等になるように調整します。特に、脛骨に歪みがある場合に有効な方法です。骨がつくまでに2ヵ月ほどかかるため、その間にリハビリを行う必要があります。回復までに半年ほど要するので、筋力が衰えやすい高齢者にはあまり向いていません。

③人工膝関節置換術:重度

病気がかなり進行して、膝の関節軟骨だけでなく、骨まで破壊されている場合に行う治療です。変形した膝軟骨の表面を薄く削って、人工関節に置き換えます。人工関節は、ステンレスやチタン合金、プラスチック、セラミックなどの材質でできています。手術後は1〜3週間で歩行が可能で、入院期間も1ヵ月ほどで済むため、高齢者にも適しています。術後の違和感も少なく、ショッピングや旅行などを以前のように楽しめるようになるでしょう。人工関節の耐用年数は15〜20年といわれており、寿命がきたら再手術が必要となる場合があります。

どのような手術を選択すべきか

どの手術法も一長一短があるため、どの手術法がベストなのか、一概には言えません。ただ、重症度に応じて、ある程度の目安がつきます。軽度〜中程度の場合は、関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術が選択されるケースが多いようです。重度の場合は、人工膝関節置換術が適しているでしょう。
これはあくまでも目安であり、本人の意思や年齢、生活環境などにより、手術方法は変わってきます。医師の説明を受け、よく理解したうえで、治療法を選ぶようにしましょう。

運動療法と薬物療法という2つの保存療法と、手術療法を紹介しましたが、病気の進行状況によって、治療の選択肢が左右されます。進行するほど治療の選択肢が限られていく可能性があるので、できるだけ早く検査を受けて、治療を始めましょう。

参考)
ホーム・メディカ『家庭の医学館』小学館
橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
三井 弘『ひざ・腰・肩の痛みの最新治療―変形性膝関節症・坐骨神経痛・骨粗鬆症・椎間板ヘルニアなど(よくわかる最新医学)』主婦の友社
日本整形外科学会『変形性ひざ関節症の運動療法(PDF)』
監修:
京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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