低周波治療とは何か?効果・歴史 - 電気治療を知る②
私たちのからだには、外部からの電気的な刺激に対して敏感に反応する性質が備わっています。このような作用をうまく利用して、外部から電気を流し、痛みの緩和を図ろうとするのが、電気治療です。その代表的なものとして、低周波治療がありますがご存知でしょうか? ここでは低周波治療とはどういった治療法で、どのような効果が期待できるのかを解説します。
低周波治療とは?
低周波治療と聞いて、周波数の低い電流であるというのは想像がつくと思いますが、具体的にはどのような周波数を指すのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
家庭用の低周波治療とは、皮膚表面に周波数1,200Hz以下の微弱な電流を流して、その刺激により痛みの緩和や筋肉のコリの解消を図るものです。最近では、自宅で低周波治療ができる家庭用低周波治療器のニーズが高まり、いろいろなタイプの製品が開発・販売されています。
低周波治療の歴史
ヨーロッパが発祥とされる低周波治療は、200年の歴史を持つとされています。しかし、その治療法が一般に広く知られるようになってから、まだ数十年しか経っていません。1965年に心理学者のメルザックと生理学者ウォールが「ゲートコントロール理論」を提唱し、電気刺激が痛みを抑えるしくみを示したのをきっかけにして、経皮的電気神経刺激(TENS)などを用いた低周波治療が開発されました。
低周波治療とは、痛むところや、知覚神経に電気刺激を加える治療法で、わずかな時間で鎮痛効果が現れ、終了後もしばらく効果が続くといわれています。
低周波治療の痛みへの効果
筋肉が緊張して血流が低下すると、痛みを生み出す発痛物質が放出されて痛みが起こります。低周波電流による治療は、マッサージにより痛みのある部分の血行を促進し、筋肉の緊張の緩和を図るものです。筋肉のコリや疲れをケアし、発痛物質を血流とともに流すことで、痛みの軽減につながります。また、電気刺激により、痛みの伝達を抑制する効果も期待できるでしょう。
ゲートコントロール理論とは、侵害刺激を伝えるゲートをコントロールして疼痛(とうつう)を軽減させるというものです。低周波治療により、伝導速度の速い触覚神経を刺激することで伝導速度の遅い痛覚神経の伝達を防ぎ、痛みの伝達を抑制する効果が期待できます。また、低周波治療の周波数に依存して脳脊髄液内への様々な鎮痛物質が誘発されることが報告されているため、広く鎮痛効果が期待できます。
低周波の概要や歴史、期待される効果を紹介しました。低周波治療器でなぜ、どのような痛みが緩和できるのか? しくみや効果効能に興味のわいた方は、ぜひ関連記事もご覧ください。
- 参考)
- 橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
- 庄本康治『エビデンスから身につける 物理療法』羊土社
- 一般社団法人日本ホームヘルス機器協会『【家庭用低周波治療器】とは?』
- 一般財団法人日本電子治療器学会『電流刺激療法とは』
- 監修:
- 京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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