対策・治療

スポーツ障害の急性期の痛みに効く応急処置「RICE(ライス)処置」の基礎知識

スポーツをしていると、打撲や捻挫などのスポーツ外傷以外に、負荷がかかり続けた部位に痛みが生じるスポーツ障害が起こることがあります。オーバーユース症候群とも呼ばれますが、早期の段階で適切な応急処置をしておくと、ダメージを最小限に抑えて回復を早めることができます。しかし、緊急時にすばやく対応には知識が必要。いざというときのために、応急処置の基本である「RICE処置」を知っておきましょう。

目次
応急処置の基本「RICE処置」とは?
スポーツ障害・症状別の応急処置法

応急処置の基本「RICE処置」とは?

スポーツ中に痛みが生じたときに、医療機関へ行く前に行う処置を応急処置といいます。この応急処置方法の基本となるのがRICE処置です。

スポーツによるケガや障害が発生してから48時間〜72時間(2〜3日間)は「急性期」と呼ばれ、炎症を抑えることが優先されます。急性期に適切なRICE処置を行うと、受傷後の痛みや腫れ、内出血が抑えられ、回復を早めるのに役立ちます。

RICEは英語の頭文字を並べたもので、Rest(安静)・Icing(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)を意味します。

1. Rest(安静)

スポーツ障害が起こったら、まず患部を固定して安静な状態に保つことが大切です。無理に動かそうとすると、痛みが増したり、炎症が広がったりする可能性があるので注意してください。痛みが出ない姿勢で休ませることが大切です。手近にあるテープや厚紙、板切れなどを使って患部を固定します。腕などを負傷した場合は、三角巾の代わりにタオルや丈夫な布で代用することもできます。

2. Icing(冷却)

患部を氷や氷水を使って冷やします。冷やすことで血管が収縮するため、痛みが鈍化するとともに、腫れや内出血が抑えられます。凍傷を起こすのを防ぐために、氷をビニール袋に入れて、タオルの上から当てるのがおすすめです。20〜30分かけて深部まで冷やしましょう。

しばらく氷を当てていると、ヒリヒリする感じがしたあと、しびれて感覚がなくなっていきます。無感覚な状態になって5分から10分ほど経ったら、一度患部から氷を外し、1〜2時間ほどあけてから再びアイシングをします。このサイクルを何度か繰り返しましょう。

3. Compression(圧迫)

圧迫は患部の腫れや内出血を最小限に抑えるのに有効な手立てです。腫れがひどくなってからでは回復までに時間を要するので、予防的に行うのがよいでしょう。ただし、きつく圧迫しすぎると、血管や神経に障害をきたして、青く変色したり、しびれたりするので注意が必要です。きついと感じたら、すぐに緩めるようにしてください。

4. Elevation(挙上)

受傷した部位を自分の心臓よりもできるだけ高い位置に持ち上げます。患部に余分な血液やリンパ液がたまるのを防いで、内出血や腫れ、痛みを和らげる効果があります。患部の下に椅子や台、クッション、たたんだタオルなどを入れておくといいでしょう。

スポーツ障害・症状別の応急処置法

RICE処置は、スポーツ活動中に起こる捻挫や肉離れなどの急性外傷に対する応急処置として推奨されていますが、スポーツ障害による慢性的な痛みの軽減にも役立ちます。

筋肉疲労・筋肉痛

筋肉疲労・筋肉痛とは、運動をした数時間後から数日後に生じる筋肉のだるさや疲れ、痛みのことをいいます。痛みが強い場合は筋肉が炎症を起こしている状態です。症状が落ち着くまで、一時的に冷やしましょう。

ランナー膝

腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)とも呼ばれ、ランナー特有の障害です。膝の外側にある腸脛靱帯が、大腿骨の外側にある大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)とこすれて炎症が起き、膝の外側に痛みを感じます。痛みが出たら安静にして、アイシングで様子をみましょう。患部はバンテージで固定します。

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ランナー膝(腸脛靭帯炎)などランニングで起きやすい膝の痛みの原因

野球肩

繰り返す投球動作によって生じる肩の痛みです。悪化すると投球時以外にも痛みを生じるようになります。応急処置として、肩関節全体を氷のうなどで冷やすのが有効です。テーピングやサポーターで固定して、炎症が治まるのを待ちましょう。

野球肘

野球の投球動作によって生じる肘障害の総称です。肘の内側や外側に痛みが出ます。痛みや違和感を感じたら、直ちにプレーを中止して安静に保ちます。続いて氷などを使って局所を冷却しましょう。

足底腱膜炎

かかとの骨から指の付け根に帯状に張っている足底腱膜(そくていけんまく)が炎症を起こして、足の裏に痛みが生じます。痛みを抑えるには安静を保つことが必要です。足を休ませて、アイシングをしましょう。テーピングやインソール(足底板)を使用すると、足底腱膜にかかるストレスが緩和されます。

内側上顆炎(ゴルフ肘)

手首や腕の使い過ぎで生じる疾患で、いわゆるゴルフ肘のことです。肘の内側に炎症が起こって痛みが現れます。局所を安静に保ち、氷のうなどで冷やします。

外側上顆炎(テニス肘)

手首や腕の使い過ぎで生じる疾患で、テニス肘とも呼ばれています。ゴルフ肘と異なり、肘の外側に痛みが生じるのが特徴です。局所を安静に保ち、アイシングを行います。

シンスプリント

すねの骨の内側が痛くなるスポーツ障害です。ランナー膝と同様に、陸上競技を行う人に多くみられます。アイシングや冷湿布、テープや包帯による固定を励行し、痛みが治まるまで安静に保ちます。

スポーツの現場ではいつ、どこでケガや故障が起こるかわかりません。応急処置が必要な事態に備えて、知識を身につけておきましょう。

参考)
医学辞典編集部『日常生活ですぐに使える健康知識 家庭の医学 緊急編(SMART BOOK)』SMART GATE Inc.
西村典子『基礎から学ぶ スポーツセルフコンディショニング』日本文芸社
監修:
京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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