電気治療(マイクロカレント、TENS)による肉離れ・打撲・捻挫への対処
肉離れや打撲、捻挫などのケガは、完治までに数日から数週間、程度によっては1ヶ月以上かかることもあります。できるだけ早く治したいと思うのは当然のこと。早期回復を図る手立てとして、電気治療があります。ここでは、肉離れ・打撲・捻挫に効果的な微弱電流療法(マイクロカレント)、経皮的電気刺激療法(TENS)をご紹介します。
肉離れ・打撲・捻挫への基本的な対処
運動中に肉離れや打撲、捻挫などのケガをした場合、どのように対処したらよいのでしょうか。基本的には急性期は冷やし、慢性期は温めることが推奨されています。
急性期とは、肉離れや打撲、捻挫を受傷した直後を指します。受傷直後は炎症反応を起こして腫れや痛みが強いため、患部を冷やして血流を抑える必要があります。安静にし、冷却して発熱を抑え、患部を圧迫し、患部を心臓よりも高い位置にすることで、内出血や炎症を抑える応急処置(RICE処置)が有効です。
人によって異なりますが、約2〜3日で急性期が終わり、慢性期に移行します。慢性期になると炎症は治まりますが、痛めた部位が疲労して筋肉が硬くなり、血流が滞った状態になります。その結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、腫れや痛みにつながります。この時期には、患部を温めて血流を促し、硬くなった筋肉をほぐすことが大切です。
急性期にも慢性期にも使用できるのが、マイクロカレントやTENSを用いた電気刺激療法です。RICE処置後に用いることで、運動神経や知覚神経に電気刺激を与えて、筋肉を収縮・緩和させ、痛みを和らげる効果が期待できます。
微弱電流療法(マイクロカレント)とは
私たちのからだには、ケガをしたときに「損傷電流」という弱い電流を流して、傷ついた組織を修復する働きがあります。マイクロカレントは、損傷電流と同じようなごく弱い電流を使った治療法です。
そのメカニズムはまだ研究途上にありますが、電流の刺激で組織を活性化して自然治癒力を高める働きがあり、肉離れや打撲、捻挫などの回復を早める効果が期待されています。また、血行が促進されて発痛物質が排出されるため、痛みの緩和にも有効です。
マイクロカレントではμA(マイクロアンペア)という極めて弱い電流を使用します。からだへの刺激感はほとんどなく、神経や筋を興奮させないので、受傷直後の痛みにも使用可能です。医療の現場では、RICE処置とマイクロカレントを併用した治療も取り入れられています。
経皮的電気刺激療法(TENS)とは
脳へ痛みを伝える知覚神経に対して電気刺激を与える治療法です。弱い電流を皮膚の表面から流すことによって、痛みの信号を伝達するゲートを閉ざします。低周波治療といえば、一般的にこのTENSを指します。家庭で使用されている低周波治療器のほとんどはTENSをもとに開発されたものです。電気の刺激で筋肉の緊張をほぐして血流を促し、肉離れや打撲、捻挫などによる痛みや腫れを緩和します。
肉離れや打撲、捻挫などのケガは、病気や症状に応じた治療を行うことが求められます。
マイクロカレントやTENSをうまく取り入れて、早期回復を目指しましょう。
- 参考)
- 橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
- 一般社団法人日本ホームヘルス機器協会『【家庭用低周波治療器】とは?』
- 聖マリアンナ医科大学雑誌『スポーツにおける微弱電流刺激療法』
- 一般財団法人日本電子治療器学会『電流刺激療法とは』
- 監修:
- 京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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