対策・治療

スポーツ障害による慢性的な痛みを改善する3つの対策 - ストレッチ・食事・睡眠

スポーツによる慢性的な痛み、いわゆるスポーツ障害に悩まされていませんか。スポーツに限らず、普段何気なく続けている生活習慣も、痛みを助長させる原因になっているかもしれません。日頃の生活を見直して、痛みに負けないからだを作りましょう。ここでは、スポーツ障害による痛みの緩和や回復を早めるためのストレッチ、食事、睡眠についてご紹介します。

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目次
スポーツ障害が引き起こされる原因
スポーツ障害の代表的な症状
慢性的な痛みを改善する3つの対策

スポーツ障害が引き起こされる原因

野球やテニス、陸上競技などのスポーツにより、筋肉や腱(けん)、靭帯(じんたい)に過度な負担が加わって、慢性の痛みを生じる疾患をスポーツ障害といいます。オーバーユース症候群とも呼ばれ、からだの一部分を使いすぎることで起こります。スポーツ障害の代表的なものとして、ランナー膝や野球肩、野球肘、ゴルフ肘、シンスプリントなどがあります。

はじめのうちはスポーツ中に軽度の痛みや違和感がある程度ですが、疲労のたまったからだの組織を十分にケアしないまま練習を続けていると、次第に慢性化し、痛みのためにプレーに集中できなくなります。さらにひどくなると日常生活にも支障をきたすようになるので注意が必要です。

スポーツ障害が起こる原因はさまざまですが、からだの使い過ぎによる柔軟性の欠如、もしくは過度の柔軟性、栄養や休養の不足とそれに伴う免疫力の低下、間違ったフォームなどが考えられます。早期の回復を目指すには、十分な睡眠や休養、栄養をとり、適度な柔軟性を確保することが大切です。

スポーツ障害の代表的な症状

ここでは、先ほど挙げたスポーツ障害による慢性的な痛みの代表的な症状を紹介します。

野球

投球は肘に大きな負担をかけるため、肩や肘の関節に痛みが出ることや、野球肩や野球肘を発症することがあります。

野球肩

野球のように肩をよく動かす競技で多くみられる症状です。投球時など肩を使ったときに痛みが生じます。

野球肘

主に野球の投球動作が原因で生じる肘の痛みの総称です。痛みが発生した部位により「内側型」と「外側型」に分類されます。前者のほうが発生頻度が高く、特に少年野球選手に多くみられます。

ジョギング、ランニング

体重によって膝の周りや足裏に過度の負担がかかり、ランナー膝や、足底腱膜炎(そくていけんまくえん)、シンスプリントなどを発症することがあります。

ランナー膝

正式名称を腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)といいます。ランニングによる膝外側のうずくような痛みが特徴です。

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足底腱膜炎

足裏に帯状に広がる腱膜に炎症を起こす疾患です。ランニングや歩行などで足裏にストレスをかけ続けることで、痛みが生じます。

シンスプリント

マラソン選手や陸上選手などのランナーに起こりやすい症状です。すねの骨の内側に鈍い痛みが生じます。症状が進んでしまうと、長期の休養が必要になります。

テニス

ボールを打つときに手首をねじる動きを繰り返すため、肘や手首に強い負担がかかります。肘の外側から手首にかけて炎症が起こり、テニス肘を生じてしまいます。

テニス肘

バックストロークで酷使される手首を伸ばすための筋肉が上腕骨に付着する部分に炎症が起こり、肘の外側から手首にかけて痛みが出ます。

慢性的な痛みを改善する3つの対策

スポーツ障害による慢性的な痛みを改善する方法として、次の3つが挙げられます。

ストレッチ

ケガや炎症が起こって筋肉や皮膚の組織が壊れたり、組織の血流が阻害されて酸欠状態に陥ったりすると、ブラジキニンやセロトニンなどの痛みを生み出す発痛物質が放出されます。これらによって痛みが誘発されると、筋肉の緊張が高まってさらに血流が低下することに。その結果、新たな発痛物質が蓄積して、痛みが痛みを呼ぶ悪循環に陥ってしまうことがあります。

この負の連鎖を断ち切るのに重要なのが、血行を促進し、発痛物質の放出を促すこと。そこで推奨される方法が、ストレッチです。筋肉の緊張をほぐして血流を改善し、痛みのもととなる物質を取り除く効果があります。運動前のストレッチには、柔軟性の改善や筋肉の緊張緩和、血流促進、ケガ予防などの効果があります。一方、運動後のストレッチには、疲労物質の代謝を促す効果や、緊張した筋肉をリラックスさせる働きがあります。

ここでは効果的なストレッチをいくつかご紹介します。

パリスティックストレッチ

反動やはずみをつけて筋肉を伸び縮みさせるストレッチです。関節の可動域を広げ、筋肉の伸縮性をよくします。スポーツのウォーミングアップに効果的です。

  1. 片足で立ち、反対のひざを後ろに蹴り上げます
  2. 左右10回ずつ行います

ダイナミック(動的)ストレッチ

その名のとおり、腕や足をダイナミックに動かすことで、筋や腱を伸長させるストレッチです。筋肉の柔軟性を高める効果があります。スポーツ前の準備運動として行いましょう。

  1. リラックスした状態で立ちます
  2. 顔を下に向け、両腕をからだの前でクロスさせます
  3. 顔を上げながら、両腕を左右に広げていきます
  4. 呼吸をしながらリズミカルに20回繰り返します

スタティック(静的)ストレッチ

静止した状態で反動をつけずに行うストレッチです。比較的簡単で、初心者でも簡単に始めることができます。運動後のクールダウンに行います。

  1. 反動をつけずに筋肉や腱をゆっくり伸ばします
  2. 可動域限界まで伸ばしたら、30秒キープします

栄養

スポーツ障害の予防と回復のためには、毎日の食事が大切です。からだを作る基本となる三大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)をしっかりとるとともに、疲労回復を高めて筋肉や腱のダメージを抑えるビタミンやミネラルが不足しないようバランスのよい食事を心がけましょう。

アスリートが必要な栄養素をまんべんなく摂取する方法として、厚生労働省や農林水産省が推奨しているのが「栄養フルコース型」の食事です。栄養フルコース型の食事とは、① 主食、②主菜、③副菜、④乳製品、⑤果物の5つを1食で「フル」にとるメニューを指します。いきなり5つをそろえるのは難しいかもしれませんが、できる範囲で取り組んでみてください。

睡眠

睡眠時には脳の視床下部で成長ホルモンと呼ばれる物質が生成されます。成長ホルモンは筋肉や骨、体組織の成長を促すだけでなく、疲労回復や筋肉の修復にも使われているホルモンです。諸説ありますが、午後10時から午前2時の「ゴールデンタイム」は成長ホルモンが多く分泌される時間帯とされています。遅くとも午後12時までには寝て、成長ホルモンが出やすい状態にしましょう。

スポーツ障害による慢性的な痛みがあるときは、ストレッチやバランスのとれた食事、睡眠を意識して、痛みに負けないからだ作りを目指しましょう。

参考)
医学辞典編集部『日常生活ですぐに使える健康知識 家庭の医学 緊急編(SMART BOOK)』SMART GATE Inc.
西村典子『基礎から学ぶ スポーツセルフコンディショニング』日本文芸社
国際スポーツ医科学研究所『新版 図解 スポーツコンディショニングの基礎理論』西東社
監修:
京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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