対策・改善

スポーツ障害の急性期の痛みを和らげる電気治療(マイクロカレント、TENS)

スポーツを続けていると、同じ動作の繰り返しにより特定の部位に過度の負担がかかりスポーツ障害を起こすことがあります。その急性期の痛みの緩和に有効とされているのが、マイクロカレントやTENS(経皮的電気刺激療法)に代表される電気治療です。応急処置(RICE処置)後のケアとして、スポーツの現場でも取り入れられています。電気の刺激が痛みを和らげるしくみについてみていきましょう。

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目次
マイクロカレント、TENSが痛みに効くしくみ
スポーツによる痛みのケアに電気治療を使うポイント

マイクロカレント、TENSが痛みに効くしくみ

からだに電気を流すというと「なんとなく怖い」と思う人もいるかもしれませんが、人体にはもともと生体電流と呼ばれる微弱な電流が流れています。痛みを感じるのも筋肉が動くのも、電気信号によって情報がやり取りされているからにほかなりません。電気が生体に及ぼす影響を利用して、痛みなどの治療を行おうとしたものが電気治療です。

マイクロカレントによる治療

私たちのからだは、スポーツなどで組織が損傷すると、傷ついた細胞を修復するために「損傷電流」と呼ばれるμA(マイクロアンペア)程度のごく弱い電流を流します。この損傷電流と同程度の微弱な電流を人工的に作り出したのが、マイクロカレントです。体内の電位の流れを細胞レベルで正常化・活性化することで、損傷からの回復を促し、痛みや腫れを抑制する効果があります。

低周波治療器などで使用される電流の単位はA(アンペア)ですが、μAはその100万分の1で、電気特有のピリピリした刺激はほとんど感じられません。神経や筋肉を興奮させることもないので、RICE処置とともに急性期の治療に用いられています。

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マイクロカレントの効果と使用例

TENS(経皮的電気刺激)による治療

TENSは、痛みがあるときにその部位をさすると痛みが緩和される現象を科学的に解き明かそうとした「ゲートコントロール理論」に基づいて開発された治療法です。ゲートコントロール理論では、痛みの信号が中枢に送られる途中に「ゲート」があり、痛みの刺激があるとゲートを開いて中枢に痛みを伝えるが、そこにさするなどの触覚の刺激が加わるとゲートが閉じ、痛みが緩和されると説明されています。

TENSでは、痛みのある箇所や、痛みの信号を中枢に伝える神経が走る部位の皮膚に電極を貼り、自分で強さを調整して痛みを感じない程度の弱い電流を流し、痛みの緩和を図ります。即時的に鎮痛作用を示し、終了後もその効果がしばらく続くのが特徴です。いわゆる低周波治療器と呼ばれるものは、このTENSに相当します。

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スポーツによる急性期の痛みケアに電気治療を使うポイント

スポーツ活動中に痛みが生じたときは、まず応急処置として痛みのある部位を冷やします。急性期の痛みを緩和し、腫れを抑えるのに冷却は有効な手立てです。しかしその一方で、血管が収縮して、筋繊維の回復が遅くなるというデメリットもあります。そこで、痛みを抑えながら、筋繊維の回復を早める効果が期待できる方法が電気治療です。安全のため、電気治療とアイシングを同時に行わないこと、水分をよく拭き取って使用することを守ってください。

筋肉疲労・筋肉痛

運動による疲労やだるさ、倦怠感、痛みを指します。痛みがひどいときは炎症を起こして熱を持っているので、安静にして冷湿布などで冷やしましょう。熱が引いたら、痛みのある箇所に電気治療を行います。

ランナー膝

医学用語では腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)といいます。陸上競技のランナーに多いことから名付けられました。膝の外側にある腸脛靱帯に痛みを感じます。まずアイシングを施して急な痛みが治まったら、マイクロカレントで治療します。

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野球肩

野球のように肩をよく動かす競技に起こりやすい症状です。初期の段階では肩を動かしたときに痛みを感じますが、悪化すると安静時にも痛みを感じます。安静にして、氷のうなどで冷やします。電気治療はマイクロカレントモードで行います。

野球肘

野球の投球動作によって生じる肘障害の総称です。肘の内側や外側に痛みが出ます。痛みや違和感があったら、直ちにプレーを中止して安静に保ち、氷などを使って局所を冷却しましょう。病院を受診して問題なければ、マイクロカレント療法によって治療を行います。

足底腱膜炎

足の裏に帯状に広がる腱膜(けんまく)の炎症です。朝起きて最初の一歩を踏み出したときに強い痛みを感じます。ランナー膝と同じく、ランナーに多くみられる症状です。アイシングをしたあとに、足の裏全体にパッドを貼って電気治療を行います。

内側上顆炎(ゴルフ肘)

野球やゴルフをする人に多い症状で、ゴルフ肘とも呼ばれています。肘の内側の使いすぎで炎症が起こって痛みが現れます。局所の安静、アイシング、マイクロカレント療法を行うと効果的です。

外側上顆炎(テニス肘)

テニスでラケットを振る動作を繰り返すことで起こります。いわゆるテニス肘のことです。ゴルフ肘と異なり、肘の外側が炎症を起こして、ラケットを振るたびに痛みを感じます。局所を安静に保ち、アイシングとマイクロカレント療法を行います。

シンスプリント

マラソン選手や陸上選手などのランナーに起こりやすい症状です。すねの骨の内側に鈍い痛みが生じます。症状が軽いうちにアイシングに併用して電気治療を行いましょう。

痛みを無視して運動を続けると、回復するまでに時間がかかるため、初期の段階で適切な処置を行うことが大切です。急性期の痛みにマイクロカレント、TENSを活用して早期回復を目指すとよいでしょう。

参考)
医学辞典編集部『日常生活ですぐに使える健康知識 家庭の医学 緊急編(SMART BOOK)』SMART GATE Inc.
西村典子『基礎から学ぶ スポーツセルフコンディショニング』日本文芸社
国際スポーツ医科学研究所『新版 図解 スポーツコンディショニングの基礎理論』西東社
一般財団法人日本電子治療器学会『電流刺激療法とは』
オムロン『オムロン低周波治療器をエキスパートが語るインタビューvol.3』
監修:
京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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