基礎知識

痛みの伝達経路と脳が認識するしくみ

痛みには、からだの不調や危険を知らせる警報としての重要な役割があることをご存知ですか? 不快で嫌なものである反面、私たちの生命を守るための防御機能という側面も持っています。人は痛みがあるからこそ、生命をおびやかす危険をいち早く察知し、回避できるのです。では、痛みはどのようにして脳に伝わるのでしょうか。その伝達方法についてお伝えします。

目次
痛みは脳までどのように伝わるのか
脳が痛みを認識するしくみ

痛みは脳までどのように伝わるのか

痛みが伝わるしくみは、電気の流れに似ています。ソーラーパネルで発電した電気が、変電所を経て、ほかの建物に送られている様子をイメージするとわかりやすいでしょう。
皮膚感覚は、痛みの刺激を受け取るソーラーパネルに相当します。皮膚には、痛覚、触覚、圧覚、温覚、冷覚の5つの感覚があります。
皮膚感覚を感知するセンサーは「受容器(レセプター)」と呼ばれています。レセプターは、変電所のような役割を担うところです。体内にはさまざまな種類のレセプターが存在します。そのうち、痛みを受け取るのは、自由神経終末と呼ばれる神経繊維の末端です。体内や外界から、痛みの刺激となる機械刺激(指を切ったり机をぶつけたりした時に感じる刺激)、温度刺激(熱い、冷たいなどの刺激)、科学刺激(科学的な物質などで炎症が起こる刺激)を受け取って、電気的な信号に変換します。
痛みの電気信号は、電線にあたる神経を通って、中継基地である後根神経節(こうこんしんけいせつ)を介して、脊髄に送られます。脊髄に伝わった電気信号は化学物質に変換され、脳へ行く次の電線(神経)に受け渡されます。

脳が痛みを認識するしくみ

全身にあるセンサーで感知した痛みは、最終的に脳に伝わります。それでは、いったい脳のどの部分で痛みを認識するのでしょうか。痛みの情報は、感覚神経の伝達路を通り、視床を経由して、大脳皮質の一部である一次体性感覚野へ届けられます。一次体性感覚野は、痛みの処理に関わる部分です。帯状に広がる一次体性感覚野は、場所によってからだのどの部分の痛みを担当するかが分かれています。
痛みの情報は、視床の外側にある大脳辺縁系と呼ばれるエリアや、人の思考や意思決定に関わる前頭前野にも届けられます。大脳辺縁系は、記憶や感情をつかさどる部分です。大脳皮質が痛みの強さや強度といった感覚的な痛みの情報に関与するのに対して、大脳辺縁系は不安や恐怖など情動的な痛みの情報を受け持ちます。このように、痛みの種類によって、その情報を受け取る部分が異なるのです。

このように、痛みが伝わるしくみは脳と密接に関わっています。もし痛みを感じたら、脳からの警報として捉え、放置せずに適切に治療・対処していきましょう。

参考)
橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
伊藤和憲『図解入門 よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ』秀和システム
監修:
京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
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