慢性疼痛とその原因 - 心因性疼痛・神経障害性疼痛
急に痛くなって短期間で治まる痛みを急性痛と呼ぶのに対して、長期間にわたって起こる痛みを慢性痛といいます。長く続く慢性的な痛みは、非常につらいものですよね。慢性痛はどういうものか、どうして起こるのかを解説します。
- 関連記事
- 急性痛とは何か?その特徴と注意点
慢性的に痛みが続く慢性疼痛とは
慢性痛とは、痛みが長く続いている状態をいいます。病気やケガによる痛みはほとんどが一過性のものですが、痛みがひどかったり長引いたりすると、原因自体がなくなっても、いつまでも痛み続けてしまう場合があります。ただし、がんや急性リウマチなどの病気で、急性の痛みが次々と起こり続けているものは、慢性的な痛みではありますが、慢性痛には含まれません。
慢性痛は、痛みが広範囲ではっきりしないのが特徴です。ビリビリ、ジンジンするといった電気が走るような痛みと表現されます。
突然の痛みはからだの異常を知らせる警報ですが、その役割を担うのは急性痛です。慢性痛は痛み自体が病気であり、治療の対象になります。早めに適切な方法で対処することが大切です。
慢性疼痛の種類と原因
慢性痛にはいくつかのタイプがあり、それぞれ痛みの起こる原因が異なります。代表的なものをご紹介します。
神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)
ケガや病気で神経が傷つき、神経が異常に興奮して起こる痛みです。原因として、脊髄損傷や脳卒中などによる神経の損傷や切断、糖尿病の合併症による神経障害、がん細胞の神経への浸潤などが挙げられます。
中枢性疼痛(ちゅうすうせいとうつう)
脳と脊髄にある中枢神経が傷ついて起こる痛みです。痛みの刺激がないのに痛いと感じたり、麻痺している部分に異常な痛みを感じたりします。脳や脊髄の病気や損傷が原因です。
心因性疼痛(しんいんせいとうつう)
ストレスや不安など精神的・心理的問題で生じる痛みです。慢性の痛みで長い間悩まされていた人は、脳が痛みグセを学習して、原因がなくなっても痛みを感じることがあります。病気や痛みに対する不安や恐怖、職場や家庭でのストレスなども心因性疼痛の要因となります。
慢性疼痛が与える精神的影響
慢性痛を放置していると、心身ともに消耗し、不眠や食欲不振、集中力の低下、イライラなどの症状が現れることがあります。慢性的な痛みによるストレスで、うつ傾向となり、社会生活に支障をきたす可能性もあります。痛みの原因がわからないからと、病院を次から次へと受診してまわる「ドクターショッピング」を繰り返すよりも、信頼できる医師とじっくり相談して、焦らずゆっくりと治しましょう。
慢性痛は「いつものことだから」と軽く考えず、体の不調と向き合って、適切に治療していきましょう。
- 参考)
- 橋口さおり『運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ』マイナビ出版
- 監修:
- 京都大学大学院医学研究科 青山朋樹教授
- みんなに教える
-